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サロン経営は新規集客にお金をかけてはいけない「自分のお店を持ちたい!」個人オーナーのサロン経営は予約の取りやすさとリピーターのつくり方が大事

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競争が激化しているサロン経営。個人でサロン経営するにはリピーターの獲得が大切です。そこで大切なリピーターの作り方や、失敗しないためのポイントも紹介します。

商売を始めたい人には「自分の店を持ちたい!」「サロン経営のノウハウを知りたい!」と考えている人もいるのではないでしょうか。今人気のエステ、リラクゼーションサロン経営について、業界の動向とサロン経営で大切なリピーターのつくり方を解説します。

エステサロン業界の市場規模は2000年をピークに近年は横ばい状態が続いています(株式会社矢野経済研究所の調査)。サロンの数が飽和状態となり価格競争が激化し、生き残りは簡単ではありません。

そんな中でも順調に売り上げを伸ばす、東京都目黒区でリラクゼーションサロン「Relax Rose(リラックスローズ)」を経営している水本美歩さんに、選ばれるサロンづくりのポイントを聞きました。


短いスパンで激変する近年の業界地図

サロン経営の話に入る前に、まずは業界の現状について解説します。業界全体の傾向を掴むことは、経営方針やサービスの方向性を決めるのに役立ちます。トレンドの移り変わりが早い業界でもあるので、トレンドを掴んで集客に活かし、経営を優位に進めていきましょう。

エステ業界は「脱毛」市場が最も大きい

株式会社リクルートが運営する「ホットペッパービューティーアカデミー」のサイトによると、エステサロン業界では「脱毛」市場が最も大きな市場です。とくに男性マーケットが伸びており、2016年と比較すると2022年は2倍以上に伸びています。脱毛市場は昔にくらべて技術の進歩によって施術費用もリーズナブルとなり、通いやすくなりました。また脱毛に対するニーズの高まりや、施術には特別な資格が不要なことからも、新規参入が増えて市場を押し上げました。

リラクゼーションは男性のリピートが高い

先述の「ホットペーパービューティアカデミー」によると、整体やもみほぐし、スパなどのリラクゼーション業界は男性の来店頻度が女性を上回りました。日本では2020年から流行した新型コロナウイルス感染症の影響によって、男性が女性の比率を逆転したとされています。スポーツ庁によるとコロナ禍による自粛生活の反動で運動実施率が増えたとされており、体のメンテナンス目的で通う人が増えたのではいかと予想されています。

その逆もしかりで、リモートワークが推進されたことで一日中家から出歩かない日も増えて、体をほぐすために整体に行く人もいます。また自粛生活などのストレスをやわらげるために、リラックス目的でスパやサウナに通う人も増えています。

セルフ脱毛や通い放題など新サービスが増加

サロン業界は競争が激化しているなかで、生き残るためにもさまざまなサービスを展開しています。代表例としてセルフ脱毛や通い放題の痩身エステサロンなどの需要が増えています。

セルフ脱毛とは定額制で通った月の分を月額で払うような支払い形態で、月単位で契約を解約できるのがメリットです。通常の脱毛では6回コースなどコースが決められており、途中でやめるとお金のムダが発生します。ただし自分で施術するので見えにくい場所や、手の届きづらい場所などにムラが出やすくなるのはデメリットです。

ほかにも人気を集めているのが、定額料金で満足するまで通い続けられる痩身エステサロンです。このように市場規模が横ばいのなかでも新たなサービスが生まれているので、業界の流れを理解し、経営に役立てるようにしましょう。

ビジネスマン向けメンズエステに新鉱脈

男性の美容への意識の変化から、フェイシャルエステやアイブロウサロンなどに通う男性が増えています。20代のような若い人だけではなくて、30,40代の働き盛りの会社員などからも人気です。見た目を気にすることで第一印象が良くなり、商談をうまく進められるようなメリットもあります。

サロン経営にリピーターが重要なワケ

サロンは競合店舗も多く、経営課題のひとつに集客があります。そこで経営を安定させるためにリピーターの獲得が重要になります。なぜならリピーターによって集客コストの削減や売り上げの安定化、リピーターの紹介や口コミによる集客効果が見込めるからです。それでは詳しく解説します。

写真/Canva

理由①集客コスト「1.5の法則」

マーケティング用語に「1:5の法則」という言葉があり、新規顧客を獲得するには既存顧客の5倍のコストがかかるといわれています。乱立するサロンから顧客に選んでもらうには、まずは知ってもらう必要がありますが、その際に集客コストが発生します。しかしサービスの良さを一度は感じてもらっているリピーターであれば、集客コストはかかりません。

集客コストとはホームページの作成やチラシの作成、SNSの運用、ホットペーパービューティーなどの仲介サイトの利用などで発生します。これらの利用によって周知できても、ライバルが多いなかで顧客に選ばれるとは限りません。

そこで注意したいのが価格設定です。価格勝負に走ると低価格競争に巻き込まれる可能性があります。価格をさげ続けると経営がむずかしくなり、教育や道具などにお金が回せずに、サービスの品質を落とすことにつながりかねません。

理由②売上げを作る「パレートの法則」」

マーケティング用語で「パレートの法則」という言葉があり、売り上げの80%を20%のリピーターがつくっているといわれています。リピーターがいることで定期的に来店してもらえるだけではなくて、客単価向上も見込めるので売り上げが安定します。

客単価が上がる理由として、リピーターはサービスの良さを理解してもらっているので、回数券などのまとまった商品の販売が可能です。またサロン限定の美容品なども買ってもらえる可能性もあるでしょう。

一方で新規顧客を獲得する場合はどうでしょうか。

株式会社NEUTRALが実施した、22歳~30歳のエステに通った経験のある女性を対象にした調査によると、サロンを選ぶ理由の第一位が約75.7%で価格となっています。

つまり、価格をさげる、もしくは、お得なクーポンやキャンペーンを実施することが必須となり、客単価を上げるのがむずかしくなります。

理由③紹介や良い口コミによる集客効果が見込める

リピーターを大切にすると、リピーターによる紹介や良い口コミによって集客効果が見込めます。先述の株式会社NEUTRALの調査によると、サロンを探す際に参考にするのが、2位に口コミ、3位が友人や知人の紹介です。このことより紹介や口コミの重要性が高いことがうかがえます。

ではどうやって紹介や口コミを発生させるのかというと、人は良い商品やサービスに触れた際に、友人や知人に紹介します。サロンの施術や接客対応などで満足してもらうことが大切です。満足してもらえれば自然に書いてもらうことが期待できます。

ほかにも、紹介や口コミをしてくれたらお得なクーポンを渡すといった手段もひとつです。

サロン経営のリピーターのつくり方

ではどうやってリピート客をつくるのか、5つのポイントに沿って解説します。サロンが乱立した現代では、施術の技術を磨くだけではリピートされないような時代です。ポイントとして予約しやすい仕組みづくりやリピート特典、顧客との継続的な接点づくりなど詳しく解説していきます。

ポイント①予約を取りやすくする

写真/Canva

スマートフォンの普及の影響もあって電話予約しかできなかった時代から、ネットやアプリ、SNS予約などオンライン上で予約する時代に変化しています。オンライン予約の場合は予約したいときに、いつでも予約できる便利さがあります。

SNSで予約

サロンでInstagramを運営している場合は、投稿した画像に興味を持ってくれる人もいるでしょう。Instagramのビジネスアカウントでは、プロフィール欄にURLを貼ることができます。わざわざホームページを検索してもらう手間や、外部の紹介サイトを利用する必要もなく、SNSから予約が可能です。

LINEで予約

またサロンの公式アプリやLINEのアカウントを用意することで、こちらもホームページから予約する手間が省けます。顧客にとってLINEなどは使い慣れているので、操作も簡単で便利です。

電話で予約

一方で電話予約の場合は、サロンが経営している時間に合わせて電話をかける必要があります。仕事でどうしても時間を合わせるのがむずかしい場合や、かけても通話中などで電話がつながらないこともあるでしょう。予約したいときに予約できなかった場合は他店に流れてしまう可能性があり、機会損失につながります。

このように予約を取りやすくすることはリピーターをつくるうえで重要な要素となります。

ポイント②リピートしたくなる仕組み

ポイントカードやリピート特典など、リピートしやすい仕組みをつくるのも大切です。飲食店でもよく見られるポイントカードなどは一般的で、来店回数に応じてお得なサービスを提供するというものです。

ポイントカードはハードルを下げる

ここで注意したいのが「10回来店したら〇円割引」のようにすると、10回までの道のりが長いので、顧客からするとあまりメリットを感じません。たとえば「3回来店したら〇円割引」や美容品をプレゼント、何かのサービスを無償でおこなうなど、特典を受けるためのハードルをさげましょう。

次回予約の特典を明確に

ほかには施術を受けてもらったあとに店頭で次回予約すると、10%オフといった特典もよく取られている手法です。顧客に予約を任せてしまうと、もし予約したいタイミングで予約が取れないとリピートされない可能性があります。店頭での次回予約を有効に使うのも良いでしょう。

ポイント③忘れられない

写真/Canva

「忘れられないために」SNSやメール、DMなどで継続的に接点をつくることも検討してみましょう。

心理学で単純接触効果という心理的現象がありますが、接点を持つ回数が増えることで相手の印象が良くなるといった効果です。継続的に接点を持つことで、サロンと顧客の間で有効的な関係構築が可能となります。

SNSであれば施術効果がわかるような前後比較の写真や、新サービスの紹介、外観や内観の写真などをUPしてみましょう。また何気ないサロンでの日常や、スタッフを紹介するのも良いかもしれません。顧客に何度も見てもらう工夫をすることで、親近感を持ってもらえます。

また顧客の誕生日や新サービスを導入した際など、キャンペーンをつけて案内するのもひとつです。最近ではメールのDMで送る機会も増えており、ハガキと比べて郵送などのコストが省ける点でおすすめです。美容に関する役に立つ知識などを定期的にメルマガやLINEで配信するのも良いでしょう。

ポイント④技術やサービスの向上

ポイント①〜③についてはテクニックめいたものでしたが、リピートを掴むには施術の内容が料金に見合っているかどうかがベースにあります。常に技術や接客対応などのサービス向上を図りましょう。

エステサロンは国家資格が不要な仕事でもあるので、店舗によっては技術のレベル差が大きいともいえます。そこで技術に満足してもらえれば、料金が高くてもリピーターになる可能性があります。国家資格がなくても施術内容に応じて、一般社団法人日本エステティック協会が定めた民間資格などを取るのもおすすめです。資格があると確かな技術と箔がつくので検討してみてください。

技術と合わせて接客にも力を入れる必要があります。施術は良くても接客が悪ければ満足されずリピートにはつながりません。技術もそうですが、スタッフを抱える場合は接客対応の教育などにも力を入れるようにしましょう。

ポイント⑤アンケートを活用

リピーターを掴むために、施術を受けてもらったあとに顧客満足度アンケートを取り入れ活用してみましょう。施術を受けてもらったあとにリアルな意見をもらうのは、店をより良くするための情報として重要な要素です。アンケートのなかにはサービスに否定的な意見もあるでしょう。ただしリアルな意見を受け入れないとサービスの改善ができずに、リピーターがいつまでもつかない可能性もあります。

一方で満足してもらった内容はサロンの強みでもあるので、強みを店のブランディングに活かすのもひとつです。

また質問項目で受けたいサービスについて聞いてみたりするのも良いかもしれません。新しいサービスの開発につながりますし、似たような意見が集まれば、そこから世の中のトレンドがわかるケースもあるでしょう。

サロン経営者に知ってほしい「リピートしなかった理由」

ここでは顧客がリピートしなかった理由を解説します。リピートしなかった理由を把握し、同様の対応をするのはさけましょう。逆の対応をすることでリピーターの獲得につながります。

理由①立地条件が悪い

施術内容が良くても店舗の周りに同業他社が多く乱立している場合、リピートにはつながりづらい可能性があります。また駅から離れた場所にあるなど、アクセスが不便な場合においても、ほかの店に顧客を取られることも考えられます。店舗を決める際には事前に周りに競合店がないかなど、調査するようにしましょう。

理由②減点ポイントが見られる

価格競争に巻き込まれると価格を落とすために、サービスや備品などの質を落としてしまうことも。たとえば施術で使う部屋を個室にすればより良いリラックス効果を与えられるかもしれませんが、個室を用意できないこともあるでしょう。またアロマなどの備品類にお金をかけられないこともあるかもしれません。施術はよくてもこのような減点ポイントは減らしたいところです。

〈サロン経営者に聞く〉選ばれるサロンになるポイント

写真/Canva

顧客との相性をマッチさせる

ここでは実際に東京都目黒区でボディやフェイシャルエステ、マッサージなどを提供するリラクゼーションサロン「Relax Rose(リラックスローズ)」を経営している水本美歩さんに聞いた、選ばれるサロンづくりのポイントを紹介します。

水本さんによると「当店は新規が2割、リピーターが8割」「施術の技術はもちろん大事ですが、顧客との相性(顧客が求めるものとマッチしているか)が大事」ということ。

たとえばRelax Roseでは店内をカーテンで仕切っているため、隣の客の声が気になる人もいるようです。顧客のなかには完全個室でリラックスして受けたい人もいるので、そのような人とは相性が合わないといえます。サイトの備考欄に仕切りの旨を記載し、あらかじめ相性の不一致をさけるようにしています。

「ご褒美エステ」か「デイリーケア」か

また駅近で施術は相場よりも低価格に設定しているため、「ご褒美エステ」よりも「毎日のケア」として利用してもらっているそう。訴求するサービスやコンセプトを明らかにすることで、その人に合ったサロンを提供できます。

「立地優先」か「営業時間」か

ほかにも「通いやすさや柔軟性も重要」と話す水本さん。通いやすさは立地条件だけではありません。コミュニケーションが取りやすい接客や、仕事終わりからでも行けるように夜遅くまで営業しています。男性NGの店が多いなか、カップルで通える店にしているのも人気を集めている点です。また顧客の予算に合わせて施術内容を提案するなど、柔軟性も兼ね備えています。

数あるサロンのなかでリピーターを得るには自店のコンセプトを明確にし、相性の合った顧客に選んでもらうことが重要です。

女性に人気の「おうちサロン」の記事も参考にしてください。Irodoriを経営し、リピーターを大切にされているセラピストの田篭まりなさんの事例を紹介します。

〈まとめ〉個人オーナーのサロン経営に大切なリピーターのつくり方

サロン経営を続けるのに大切なのはリピーターの獲得です。リピーターを得ることは集客コストの削減や売り上げの安定、リピーターによる紹介や口コミで集客効果が見込める点など、メリットが多くあります。ただしライバル店も多いサロン経営では、リピーターを獲得するのは簡単ではありません。これからサロン経営を考えている人や興味のある人は、本記事を参考にしてみてください。

文/藤田祐秀

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この記事を書いた人

I am 編集部
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「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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