白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりません好きなことを仕事にして生き生きしている姿に夫が放った一言
読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー
【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】
++ 今回のお悩み ++
長年主婦でしたが、趣味のアクセサリー作りをSNSで公開したところ、
販売しませんか?というお声がけを頂き、そこからハンドメイド作家になりました。
だんだんと評判になり口コミでオーダーが増え、
忙しい時は家事がおざなりになることがありました。
夫は理解を示してくれていましたが、
忙しく飛び回る私を見て、家事が出来てないことに対する嫌味を言うようになりました。
私は夫の理解が得られないならもう辞めた方がいいのかも…とも考えています。
(40代女性)
目次
白川先生からあなたに贈る言葉
「和顔愛語」と「正直」
男女関係は深くて難しい
まず本当によかったですよね。自分の趣味だと思っていたことが「仕事」になった時の喜びは、私も経験したことがありますが、とても大きなものです。
そして今回の夫さん(旦那様、ご主人、ダーリン…と呼称が難しいので、ここでは夫さんで統一させてください)との悩み、拝読しました。「男女関係」「夫婦関係」は思いのほか、育った環境や文化の固定概念が強力で、自分のことを棚に上げて、パートナーに対して「これをやってくれたらなぁ」とついつい考えたり、言ってしまうことがあります。私も他人事ではありません。
男女関係が、「一筋縄ではないなぁ」と感じたことがあります。ある宗教会議に参加した時に、著名なイスラム学者が、「西洋的な常識の中でのみ、男女関係をみようとすると、イスラムの人達のことを永遠に理解できないでしょう」と発言されていたのが、心に残っているのです。仕事や教育、生活などジェンダーの問題は、是正されるべき側面が日本においても多いのはもちろんですが、一概に「何が正しいか」は、地域、世代、人によって思わぬ難しさと深さを抱えたトピックです。
あせりと嫌味
個人的には、あなたのドキドキ感やワクワク感がすごくわかるので、なんとか続けることができないか、と思いました。また、恐らくあなたは、「夫の理解が得られないならもう辞めた方がいいのかも」とまで追いつめられるということは、基本的には今の夫婦生活を続けたいと思っておられるようです。一応それを前提に考えてみようと思います。
正論だと夫の方が、心を入れ替えて「良かったよね!家事は僕もやるから、今がチャンス、思いっきり創作に打ち込んで」となれば解決するのですが、お悩みを読むと、なかなかそうはなりそうにありません。
現実を動かすために、あなたに活用をご提案したいのが、じつは「メンツ」です。「女の人は男のメンツを大事にしてください」と言いたいのではありません。私自身、得意な事ではないのですが、同性同志であっても、異性関係であっても、もう少しお互いの「メンツ」を、ケアしてあげられるシーンは現代でこそ多いと感じています。ネット上でも、リアルでも、外交でも、どちらかというと、お互いが「メンツを潰し合うことに一生懸命」なことが不効率だと感じることが多いです。もちろん、それ自体が目的となると本末転倒ですけれど。
夫さんは、すこしあせっているのかもしれません。自分は、もしかしたら仕事にやりがいも感じられず、ストレスも多いのに、妻さんは、なにやら上手くいっているし、楽しそう、う、う、あせる!
あるいは自分の仕事も生活も不満はないけれど、なんとなく悔しい。そういう時、人間はご存じのように嫌みを言ってしまうことがあります。(知るか!という女性読者が多いのは、理解しますが、ここはひとつ現実をみましょう)
腰を抜かすようなシンプルな方法
あなたにプレゼントする言葉は、よく知られた仏教の言葉「和顔愛語」(わげんあいご、わがんあいご)と「正直」(しょうじき)の合わせ技です。
「和顔愛語」は、書いて字のごとく<おだやかな表情>と、<優しい言葉>を使うということで古い仏教経典にも登場します。「正直」は、元々「正(ただ)しき直(なお)き」と読まれていましたが、用語、読み方を仏教から取り込みました。自然のまま、ありのままという意味があるのは、みなさんご存じの通りです。アホらしくて腰を抜かしたでしょうか。
真顔で言うのですが、まずは「和顔愛語」で、パートナーに接する機会を増やしてみてはいかがでしょうか。人間は、時に単純で、おだやかな表情と、やさしい言葉に接すると、どこか心に余裕が生まれます。そして和顔愛語は、接する人だけではなく、「自分」という人にも余裕を生みます。もちろんずっと笑顔でなんていられませんが、その割合を少し増やすイメージです。そして、意識的に相手の話をよく聞いてみてください。
そのうえで、「ワクワクするし、やり甲斐があるので、続けたい。でも、あなたとの結婚生活も続けたいと思っている。どうしたらいいと思う?」と正直に話すしかないと思います。
結果は、「仏のみぞ知る」ですが、他の方法を私には思いつくことができません。正直申し上げると、それでも夫さんの態度が変わらないことはあるでしょう。でも、試してみる価値はあると思います。
繰り返しになりますが、男性も女性も、また状況や関係を問わず、よろしければ試してみてください。もちろん時には、和顔愛語にこだわらず、少し脅してみることも忘れず。その方法は、あなたにお任せします。
今日のまとめ
- 男女関係、夫婦関係は深くて難しい。
- あせった時に、人は嫌みを言う。
- 腰を抜かさず、おだやかな表情と、優しい言葉を使ってみよう。
- たまには脅す。
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この記事を書いた人
- 「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。
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