河合優実「主人公まなみを通じて、誰もが経験する節目『卒業』に徹底的に向き合った」

――主人公の高校生・山城まなみについて、中川駿監督とどのように作り上げていかれたのでしょうか。

河合：私が演じたまなみは、ある理由から喪失を抱えた女の子。中川監督は、初顔合わせのときに、演技のヒントになればと監督の身に起きた、お母さまとの私的な話を共有してくださったんです。「お母さまとの時間が止まってしまった。でも時間はどんどん過ぎて季節も変わっていく。その違和感や罪悪感をまなみに投影してほしい」と。脚本だけでは想像力が及ばなかった心情を、監督から聞いた実体験で埋めていきました。

――監督の思いも背負いながら演じたまなみ。何かお守り用に持っていたもの。励みにしていた言葉などはあったのでしょうか。

河合：台本の後ろに、書き込みができるスペースがあるので、そこに思い浮かんだことを書いていました。まなみは卒業式で答辞を読むのですが、「ピリオドを打つ」「別れを宣言する」という役割をもっていると感じたので、そんな数行のメモを大切にしていました。

――答辞を読むシーンは、河合さんから「一発撮りにしてほしい」とリクエストをしたそうですね。

河合：はい。答辞の場面は撮影の最終日に撮りました。「一発撮りに」とお願いしたのは、どんな反応が出てくるのかわからないけれど、１回目が一番新鮮だと思ったからです。撮影の前には、「まなみは泣かないと思う」など気持ちの部分はもちろんですが、どんなカットをどうやって撮るのかなど細かく監督がすり合わせてくれました。「テストのつもりで、回してみますか」と提案して、生まれたシーンが映画で使われました。、完成した映像を観たときはちゃんとドキドキできるシーンになったのではと感じ安心しました。

――映画には、河合が演じる料理部で部長を務めるまなみのほか、4人の少女が登場します。

河合：4人の姿を観ていて、私も高校時代を思い出しました。恋人じゃないけれど、「一緒に写真撮ろうよ」って声をかけた男の子がいたなとか。4人の女の子それぞれに、思い当たる記憶がありました。誰でも経験する「卒業」という節目。全世代に共感してもらえる映画になったのではないかなと思います。

――まなみは「答辞」を読むことで、離れがたい高校生活などから決別を宣言するわけですが、河合さん自身が最近「卒業」したことはありますか？

河合：教習所を卒業しました。実家にいたときに、家の近くの教習所に通い始めたのですが、通っている間に引っ越しをして……。いまの自宅から教習所まで離れていたので通うのが大変だったのですが、何とか免許を取得することができました。小さな車が欲しいと思っていて、街を歩いているとフィアットとかミニ・クーパーなどに目がいきます。でも、実はひどい方向音痴なんです。グーグル・マップとかを使えば目的地に行かれるのですが……。だから方向音痴を“卒業”しないと、公道での運転は難しそうです。

取材・文・写真／翡翠
編集／MARU

公開情報

「少女は卒業しない」
2023年2月23日（木・祝）より新宿シネマカリテ、渋谷シネクイントほか全国公開
監督・脚本：中川駿
原作：朝井リョウ『少女は卒業しない』（集英社文庫刊）
出演：河合優実、小野莉奈、小宮山莉渚、中井友望ら
配給：クロックワークス
公式HP：https://shoujo-sotsugyo.com/
公式Twitter／Instagram：@shoujo_sotsugyo
© 朝井リョウ／集英社・2023映画「少女は卒業しない」製作委員会