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白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりません自分にとって天職とは?何がしたいか分からない…【希望の会社に就職したはいいけれど……】

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読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー
【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】

白川密成

プロフィール

四国第57番札所栄福寺住職白川密成

住職。「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。

++ 今日のお悩み ++

【自分にとって天職とは?何がしたいか分からない…】

28歳 男性 広告代理店 営業職

大学時代、これといってやりたいことがなく、漠然と社会に出れば見えてくるかもしれないと就活を始め、運よく希望の会社に就職することができました。

今の会社の雰囲気もよく人間関係も良好なのですが、仕事にやりがいはあまり感じられません。転職も視野に入れ、自己分析などに励みましたが、これといった答えがでません。

30代になると家族をもったり守るべきものができてしまい冒険も難しくなります。

30になる前になにか夢中になれる仕事を見つけたいと思いますが、自分にとって一生モノ仕事、天職は何なのか?どう見つけていったらいいのかと悩んでいます。

キャリアコンサルタントさんなど専門の方に話を聞いてもらいましたが、いまいちピンときませんでした。このコーナーを知ってぜひお坊さん目線のアドバイスをもらえたらと思いご相談させていただきました。

白川先生からあなたに贈る言葉
我執

好きな人に「企画」を提案する

 お悩みをありがとうございます!私の周りにも、大きな企業を離れてベンチャー企業に社員として参加する人や、自ら起業した人もいます。その人達は、意外と、結婚して子供もいたりしましたから、こういうことは、「守るべきものが、あるかないか」というよりも、タイミングなども大きいのかなと思います。

 しかし、「もし自分だったら」と考えると、たしかに「二十代の方が動きやすいだろうな…」と思う面もありますよね。

 「仕事なので、楽しいことばかりじゃないよ」とアドバイスする人も多いと思います。でも自身の二十代の頃を振り返っても、「仕事で夢中になりたい」という、あなたの思いは、切実なものとして想像できます。

 私の場合を振り返ってみると、論理的に作戦を練ったわけではなく、ただ自然に体が動いたのですが、「こんな風に働いているって、いいなぁ」と心底、感動した人に対して、「こういうことを一緒にやらせてください」と何度か企画を提案をしたことがターニングポイントになりました。

 あなたのまわりにも、社内であっても、社外であったも、そういう人はいないでしょうか。もしいたとしたら、「こういう企画でご一緒したい」と提案することで、もっと何かがリアルに見えてくるような気がしました。そこで、「今の仕事」に対しても、「転職したい分野」についても、何かが見えてくる可能性があるように思います。

1番嫌なことはなんだろう。

 その他にも、「とにかく自分が、仕事を離れてもワクワクすることってなんだろう?」ということや、むしろ仕事の面から、「自分が今、副業をすることになったら、どんなことをしたいだろう」「自分は、一体、なにが1番“嫌”なんだろう」というようなことを、愚直に考え続けることは、やはり大事なことだと思います。

たくさんの人の話を聞く

 しかし、「企画提出というのも少し敷居が高いなぁ」「自分では考える所まで考え尽くした…」という“どん詰まり”の状態であるとしたら、できるだけどんどん色々な人の話を聞きに行くのがいいと思います。

 例えば、「面白い働き方をしているな」「なにかアイデアを持っていそうだな」「あの同級生そういえば面白い会社にいるらしいな」という人は、結構まわりにいるものです。そういう人達に、「できればちょっと話をお聞きしたいのです」と誘って、素直に色々なことを聞いてみることをお勧めします。できれば、1回や2回でやめず、定期的に何度も多くの人の話を聞く方がいいです。

自分をずらしてみる

 あなたにお伝えする仏教語は、「我執(がしゅう)」です。“意識のある生きものの主体として、普遍の自我が実在すると考えて、執着すること”というような意味があります。ちょっと哲学的で難しいので(しかし仏教ではとても大切な考え方です)、ここでは、簡単に「自分に固執している」と考えてみましょう。

 なにもあなたが「自分に固執していますよ」ということが言いたいわけではありません。この言葉をヒントにして、少し「自分」から視点をずらしてみるのはどうでしょうか?

 「あの人は、どんな仕事が向いているかな?」「この人にとって、やりがいのある職場って、なんだろう」そういう「自分以外のこと」を、思考実験のように、今までよりも真剣に考えてみるのです。

 するとどうでしょうか。今までよりも、ちょっと手ざわりの違う考え方が浮かんだり、「こうすればいいのに」という意外にシンプルな方法が浮かんできたりしませんか。

 こういうことを繰り返していると、少しずつ「自分」に対しても、客観的なアイデアが浮かんでくることも増えてきます。試してみてください。

 前にあげた「人の話をたくさん聞く」ということにも、この「自分をずらす」という面があるように感じます。だから会話は楽しいのでしょうね。

<今日のまとめ>

・感動した人に企画を提出する。
・愚直に考え続ける。
・面白そうな人を誘って会ってみよう。

・「他人」で思考実験する。

直感・運気アップ

「まずは10人、話を聞きたい人のリストを作ろう。身近な友達でもいいです」

この記事を書いた人

白川密成
白川密成四国第57番札所栄福寺住職
「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。

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