白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりませんAIに仕事を奪われるかも…この先事務職で稼げるか不安
読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー
【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】
++ 今日のお悩み ++
【10年後も、同じ仕事で稼げるのか不安】
41歳 女性 シングルマザー 印刷業 事務
私はシングルマザーで一児の母です。長年印刷業の事務員として働いてきました。今の仕事に不満はないのですが、テレビやネットの記事で事務職はテクノロジーの進化によって AI に代替されなくなる仕事だということを知り、とても恐ろしくなりました。
新卒以来、事務畑の仕事しかしてこなかったので、今さら営業、エンジニアなどの資格とスキルが必要な職に就くことは、勉強する時間もなく難しいです。
まだ子供は小さいので、教育費などお金は必要ですし自分の老後の蓄えも必要です。
お金ばかりでなく、気力という部分で年齢的にも不安があります。
守るべきものがある自分は何だって出来る、と気合を入れて頑張ろうと思いますが、もし前を向くために白川先生にお言葉を頂けたら、より頑張れるように思います。宜しくお願い致します。
目次
白川先生からあなたに贈る言葉
「退屈」(たいくつ)
あらゆる仕事が時代の中で更新されている
文章を拝読して、直感的にすぐに、「この方は、仕事が出来るだろうし、真面目に取り組んでおられるのだろうなぁ」と思いました。
どちらかといえば私自身は、逆の傾向もかなり持っていますので、「きちんとした人」を見分ける嗅覚を持っているようです。
「事務職は AI に代替されなくなる仕事かも・・・」、とのお悩みです。
ご存じのようにあらゆる仕事は、更新されたり、減ったり、新しく生まれたりしています。
例えば、100年前よりも「筆」を作っている人は減っています。それは筆を使う人が減っているからです。
あなたの係わっている「印刷業の事務」という仕事が、今後、どうなっていくかは私にはわかりませんし、恐らく色々な予想をする専門家はおられても、本当のことは、「よくわからない」部分も結構あるのだろうと思います。
新聞広告に「ボタンひとつで、お経を読む坊さん人形」がたまに掲載されているのですが、私もあの姿を見て、日々、戦々恐々としています。
今の持ち場をもう一歩掘りさげる
「わからない」なかでのお答えになってしまうのですが、取りうる選択肢のひとつは、「需要が増えそうな業界に転職する」ということでしょう。しかし現実的には、今まで培った経験や実績をゼロからスタートするのは、「もったいない」という気持ちがあるでしょうし、それがあなたの人生や生活にとって「よい方法」かどうかは、不透明です。
ですので今回は「残る」場合のアドバイスになるのですが、ひとつは「今の仕事」に対して、もう一歩も二歩も、掘りさげて、細かい改善点や、根本的なよき変化をする隙間はないか、取り組んでみることです。つまり先ほどの「筆」を例え話で用いると、「よりよい筆をつくる」「今の時代に喜ばれる筆を作る」ということです。今携わっている「印刷事務」にとっても、今までになかったような技術や考え方が、新しいイノベーションを生むかも知れません。
興味のある異分野を持つ
もうひとつは、今現在もかなり忙しい日々で「時間との戦い」だとは思うのですが、自分の係わっている業界以外に、ひとつ、ふたつと「興味のある分野」を作ることもいいように思います。
先に書いた「未来がある」というよりも、むしろ「自然に興味がもてる」領域がいいように思います。
それは、例えばインターネット関連かもしれないし、ペット産業の推移でもいいし、“不況に負けていない観光業”のようなものでも構いません。
ある世界に興味を持つと、そこにいるキーパーソンや、新しい動き、ワクワクするような事例があるはずです。それが今の仕事にも活かせると思いますし、「やはり転職しなければ」という状況になった時にも、強い支えになるように思います。
先日、妻に「この体温計は**という人がデザインして、すごくロングセラーで、受賞もしているんだよ」と言うと、「体温計のデザインした人まで知ってるんかい!」と呆れていました(ちなみにオムロンの「けんおんくん」という商品です)。
しかし自分の好きな「デザイン」という分野は、確実に住職、著述業という仕事の役になっています。なによりも「楽しさ」を生んでくれます。
「気力という部分で年齢的にも不安があります」とあなたも書かれていますが、気力というものは、ある意味で絞り出すもの、というよりも「育むもの」という要素もあります。
意図的に気力を取り戻す
あなたに今回、贈りたい言葉は「退屈」(たいくつ)という言葉です。
普段もよく使う言葉ですよね。ご存じのように普通に使う時には、「飽きて、嫌気がさす」というように用いられますが、仏教語でもあるこの言葉は、仏教では、「仏道修行の困難さによって、気力を失うこと」という意味になります。
個人的には、じつは「退屈」という感覚は、嫌いではないですし、「大切な退屈さ」というものが、あるような気がしていますが、今日は少し、シンプルに話を進めましょう。
つまり「退屈」を打破するために、今の自分の環境に対して、もう一度気力を加えて、興味を増やして取り組んでみるのはいかがでしょう。
そのためには、ある程度、意図的な「気力作り」の環境設定が必要だと思います。
手慣れた今の仕事にもさらに工夫してより良くする余地はあるかもしれません。
例えば、「1日」の仕事で、携わっている「事、時間」を具体的に書き出して、「本当に必要か」「こんなに長い時間をかける必要があるか」「こんなことを始められないか」などと自分に課題をあたえるのもひとつです。
そんな風に取り組んでいると、今までとは違う仕事も任されるようになるかもしれません。
私も24歳で住職になった頃のように、「見るものすべてが新鮮」というシーズンは、とっくに過ぎ去っていますが、あなたの悩みに刺激を頂いて、もう一度、自分の分野を掘りさげて、他の分野にも興味を持って、取り組んでみようと思います。
まだまだ「屈して、退く(退屈)」わけにはいきません。40代の今だから、経験をふまえて、できることがあるはずです。応援しています。
<今日のまとめ>
・どの仕事がなくなるかは、わからない
・今の仕事を掘りさげてみる
・他の分野に興味をもつ
・「退屈」という言葉をヒントに、気力、興味を計画的に加えよう
直感・運気アップ
手書きの「仕事ノート」と「生活日記」をつけてみましょう。意外と「やること」は残っています。
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この記事を書いた人
- 「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。
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