白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりません年齢を重ねて仕事が減ってきてしまった…【フリーランス、ベテランになって気がつく落とし穴】
読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー
【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】
++ 今日のお悩み ++
【年齢を重ねて仕事が減ってきてしまった… 】
55歳 男性 フリーランスライター
出版社で編集者として働くも会社の人間関係に悩み、自分らしく自由に働きたいとライターとして独立しました。フリーになってからかれこれ20年近くたちます。
一時は本も売れて忙しい日々を過ごし、収入も安定していました。しかし世の中が変わって来て書店の数も減り、本が売れなくなってきています。さらにクライアントの出版社の担当も昇進したり異動したり、世代交代がおこっています。若い担当さんは自分より上の人に仕事を発注しづらいのか、少しづつ仕事量が目減りしてきました。
フリーランスには定年はない、と言いますが仕事自体が減っていきいつまで働けるのか不安です。自分はまだまだ頑張れる!そう思えるようなお言葉を頂戴できると嬉しいです。
目次
白川先生からあなたに贈る言葉
対機説法
若いという特権
お悩みありがとうごいざます。僕自身も住職をしながら文書を書くことを、仕事にしておりますので、その先輩に対して、「アドバイス」というのもおこがましいですが、近しい年上の方から相談を受けたような気持ちで、自分なりに思ったことを、お答えしようと思います。
お悩み拝読して思い出したことは、私の場合も、比較的若い年齢の24歳で住職になり、また同じ年齢で文章を発表しはじめた、やはり「若い」というのは、人が興味を持って頂くきっかけに、ずいぶんなったということです。
また私は前職で、ほんのわずかながら(1年間)書店の社員をしていたことがあるのですが、その頃に較べて、例えば「誰もが知っているベストセラーが減ったなぁ」と感じることが多く、文字メディアを取り巻く状況もこの20年、10年でずいぶん変わったように感じます。
ベテランであることを逆手にとる
しかし「なんだか仕事が若い人ばかりに行くなぁ」とか、「本が売れなくなったぜ!」とお互い、手をこまねいているばかりにもいきませんよね。そこで、まずひとつめに提案したいことは、「年齢が上がってきていることを逆手にとる」ということです。
テレビを観ていても、文字メディアを読んでいても、最近感じることが多いのですが、わりと安易な雰囲気で「この世代は、これが好きなんでしょ。はいどうぞ」というような内容が結構多いと思うのです。特に感じるのは、「高齢者世代」と「子供」に対してです。
それには色々な理由があると思いますが、シンプルにいうと、それを制作した人達が、自分と違う世代が、「どのようものを切実に求め、楽しんでいるのか?」ということが、いまいち想像しきれていないのではないでしょうか。
ですので、まずは「自分」を読者のサンプルにして、「自分と同じような世代が今、本当に読みたいもの」を徹底的に深めて、書いていくのもいいのかな、と感じました。
そうすれば、自分と違う世代の人もある程度、興味をもってくださるような気がしますし(どの世代にも老成している人や若々しい人がいるものです)、世代交代が進んでいるクライアント(出版社)の人も、「自分より上の人のことって、よくわからない時があるから、あの人に書いてもらおう」という流れがあるように思います。
もちろんすべてが「世代論」ではありませんので、年齢だけでなく、自分の得意なテーマ、ジャンルで、同じように「やっぱり、あのテーマなら、あの人だよな」という分野を少しずつでもより構築していくことでしょうか。
自分がクライアントになる
ふたつ目は、これも私がそうなのですが、今まではやはり“声がかかること”がうれしくて、「発注される」仕事が多かったのですが、少しずつであっても「自分がクライアントで、同時にプレイヤー」の仕事をやりたいと思うことがあります。
20年間ライターとして力を蓄えられてきたあなたでしたら、「自分がメディアを作るとしたら、こんな雰囲気にしたいな」と、1度は想像したことがあるのではないでしょうか。幸い、インターネットや様々なシステム、アプリケーションを使って、やりがいを感じながら収入を得る選択肢、可能性は増えてきているようです。1度、どんなに小さくても自分が発信するメディアを試験的に自前で作ってみることも、いいように感じました。それによってライターとしての視点も広がることもあるのではないでしょうか。
「対機説法」
あなたに送る仏教語は、「対機説法」です。一般にもよく知られた言葉で、教えを聞く人の能力、素質に応じて、仏法を説くことを言います。今、メディア全体にもっと必要なのは、この「対機説法」のようなスタンスではないかと思うのです。
それは「マーケティングをきちんとしましょう」というビジネス的な意味よりも、「もう一歩深く相手を見て、ゆっくり想像して」という、もっと普遍的なことなのかと感じます。それが「書く」という仕事にも繋がっていくように思います。
また「対機説法」で話しかける相手は、なにも「他人」ばかりではありません。時に、自分自身も丁寧に観察して、「今、こんなことを自分発のメディアで発信したいな」ということも、ひとつの「対機説法」ではないかと考えました。
<今日のまとめ>
・年齢があがってくることは、その年齢の人たちのことがわかるということ。
・自分発のメディアを持ってみるのはどうでしょうか。
・「対機説法」をヒントに、相手のこと、自分のことをより想像しよう。
直感・運気アップ
「久しぶりに会う同世代で集まってみましょう。なにかヒントがあるかもしれません」
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この記事を書いた人
- 「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。
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