Interview
インタビュー

「好き」だけでは「仕事」にならない。価値を生み出す「得意」が必要。《第1話》チョコレートジャーナリスト市川歩美さん

日本を代表する放送局を辞めて、好きなチョコレートで独立。好きを仕事にするための条件とは?

プロフィール

チョコレートジャーナリスト市川歩美

チョコレートジャーナリスト。放送局勤務後、大好きなチョコレートのジャーナリストとして独立。

日本初の「チョコレートジャーナリスト」市川歩美さん。

ブロガーがスイーツ紹介、お菓子紹介、商品紹介などなど乱立する中で、一線を画する「ジャーナリスト」としての仕事とは?

アフィリエイトに頼らない仕事のあり方に至るまでを聞きました

「好き」のレベルは自他ともに認めるくらい

資生堂パーラーの「チョコレート パフェ」(本人提供)

チョコレートジャーナリストの仕事って、チョコレートをたくさん食べられるんですか?

チョコ、たくさん食べてますよ(笑)!
わたしはチョコレート専門のフリージャーナリストとして、仕事をしています。いろいろな放送や出版の媒体に情報を提供したり記事を書いたりお話をしたり、あらゆる方法でチョコレートとカカオについて、情報を発信しています。
チョコは、毎日食べています。仕事柄ということもありますけど、やっぱりチョコレートは好きですね。

チョコが好きなだけで仕事になるんですか?

それはどうでしょうね……。好きとことだけでいえば、わたしはチョコレートがすごく、子どもの頃から好きなんですね。理由を言葉にしづらいですが、とにかく好きなんですよ。

とにかく好き、ってどのぐらい好きなんですか?

どのくらいでしょうね、わたし、簡単に理由が答えられるような「好き」は本当の「好き」かどうかわからない、と思っていて。わたしの中に、理由を探さなくても強い感覚というか実感がある。そういう意味でチョコレートが大好きといえている感じです。

そんなにチョコレートが好きになった理由は何かあるんですか?

5歳の時から、海外で仕事をしていた父からはお土産で海外のチョコレートを、祖父からは国産のチョコレートをもらって大喜びで食べていました。放送局に就職してからも、ずっとデスクとカバンの中にはチョコがある、みたいな。
一緒に仕事をしているアナウンサーさんやタレントさんの間でも「この人チョコ好きらしい」と、有名だったほど。

チョコ好きがそのまま仕事になった…っていうことでしょうか?

いえいえ、その「好き」だけでそのまま仕事になるかというと、なかなかこれは難しいことだと思うんですね。
わたしの場合は、「好き」ということと、自分の得意なことが組み合わさったので、仕事になっているのでは、と思います。

え? 好きなだけでは難しいんですか?

「好き」×「得意」が「仕事」になる

グリーンビーントゥバーチョコレートの新作パフェ「マンゴー&パッションフルーツ」(本人提供)

わたしはチョコレートが好きですが、もうひとつ同じくらい好きで、更に得意なことがあって。それが「人に伝える」ということみたいです。

「人に伝える」というのは、具体的にはどういうことですか?

わたしは放送局で長年番組の企画制作を行うディレクターでしたので、なにか情報を得たらそれを広く伝えるのが毎日の仕事で、しかもそれが好きでした。 
何か「これはいい!」とか「これ面白いな」と思ったとき、それを言葉にしてしゃべるなり書くなりして広く伝えることが、日常だったんですね。
最初はぜんぜんできなくて泣きそうでしたけど、仕事として1000本ノックのように十数年繰り返してきたから、得意になっちゃったんですね、きっと。

「好き」とは別で、仕事を通して「得意」が磨かれた?

はい、おっしゃる通りです。
最初は自分が好きなものを好きと言っているだけだったんですが、放送局のディレクターという仕事を通じて、どうやって好きなものごとを、人に伝えるのかを学ばせていただいたんですね。

「得意」になれば、それが軸になる

得意になったということは、伝えるのが下手だった時期があったんですか?

はい。かなり無口だった時期も、実はあるんですよ(笑)。
学生時代は女の子ロックバンドをやっていた時期がありまして…なんというか、明るくみんなとコミュニケーションをとる、というより感覚のあう人やものだけが好きで、本やアーティスト、音楽やファッションも、個性的なものを好んでいましたね。

女の子ロックバンド!確かに個性的ですね。でも、それは好きだけど仕事にはしなかったんですね。

そうですね。大学卒業後は放送局に就職しました。その後は、お金をいただいているってことは何とか売りものになるものを作らなきゃと必死で、散々先輩方に怒られもしたんですが、あれこれやっていくうちにだんだん上手にできるようになってきて、この仕事は私に向いてるかもな、と思えた時期がありました。 

私の中で「伝えることが得意」という軸ができて、それがのちに「チョコレートが好き」という軸がクロスするわけです。

「好き」だけど「できない」ことはたくさんある

写真:ブルガリ ジャパン 株式会社

「好き」と「得意」の両方がないと、仕事としては成り立ちにくいんでしょうか?

わたしのケースでは、両方ないと一瞬うまくいっても、長く成り立たなかった気がします。
好きだけど得意じゃないこと、いくつもありますから。

好きだけど得意じゃないことって、例えば、どんなことですか?

わたしは音楽を作って表現する人が大好きですが、自分で作るのは得意じゃないです。
たとえば、音楽関係の友人たちが、楽しそうによい歌詞とメロディをさらっと作るのを見て、「わたしは、これは得意じゃないな」とわかったんですよ。自分で作ろうとすると、なかなかうまくできない。一瞬プロになることも考えたんですけど(笑) 結局、音楽番組を作る方へいきましたね。そっちは得意でした。

「好きを仕事に!」に煽られて辞めるのは危険?

コンビニスイーツのチェックも欠かさない(本人提供)

得意を見極めることも大事ですね

あくまでも私は、ですが、「好き」だけだと、仕事として長く成り立たせるのがむずかしい気がします。
「好き」軸と「得意」軸でマトリクスを作って、「好きで得意」に当てはまることを見つけると、そこは仕事になる可能性があるのではないでしょうか。

でも「好きじゃない」のに「得意」になり、その仕事についている人って多くないですか?

好きではないけど、やればできちゃうという優秀な方って、いらっしゃいますよね。前職でも何をやらせても成果を出す方、大勢いました。
わたしは、社会や会社の中でそういう仕事に就いて、努力を重ねて価値を生み出している方を本当に尊敬しています。ただ、その時のご本人はキツいかもしれないですよね。

または逆に、「好き」ということだけで突っ走ってしまうと、仕事にならないという現実も待っているかもしれない、っていうことでしょうか?

そうですね、煽られて勢いで「私は好きに生きるんだ!えい、辞めちゃえ」みたいな突っ走り方は、心配がありますね。
最近、「会社を辞めて自分で好きなことをやる時代」「好きなことでお金持ちに!」みたいな、マインドを煽るような本やセミナーを本当によく見かけます。でもそれは誰にでも平等に100%当てはまるものではない気が、私はしているんですけれどもね。

どんな仕事だったらうまくいくんでしょうか?

もし独立したいなら、やっぱり自分が好きで、かつ得意なことでしょうか。そうでないと仕事としてなかなか持続しないというか、サステイナブルじゃないというか。
得意だと楽しいから、人の半分の時間で出来たり、楽しんで心穏やかに出来ると思うんです。例えばわたしの場合、情報発信はなんの苦にもならないので、時間さえあればちょこちょこやっちゃうんですね。

つまり、好きで得意だと、ラクにできるということですね?

そうです。チョコはラクどころか、子どもの頃から食べてるし今日も食べてますしね (笑)

食べてますね(笑)

誰にもお願いされないのに食べ続け、「5歳からの筋金入り」が大袈裟でないくらいチョコレートは好きですし、情報発信は、メディアに身を置いて一応プロだったので、好きだし得意なんですね。 

「好き」ことでお金をいただくには?

ショコラティエ ヤスヒロ セノのショコラ(本人提供)

好きだけでは仕事にならない、っていうのはどうしてなんでしょうか?

仕事は、お金をいただくもの。好きなことをやるのは楽しいし自由ですが、それが社会に必要とされなければ、仕事にはならないですよね。
好きなだけだと「そうか、あなたはそれが好きなんだね」「素敵」「楽しいっていいね」という話ですよね。それはすごく素敵です。でも仕事にするなら、それ以上に活動が社会や人に必要とされることが必須かな、と思うんです。

「わたしはこれが好きだ」っていうことと、「お金をいただく」っていうことの差は、好きだっていうことを相手に伝えるのにプラスして、相手にとって価値となることをいかに加えられるか、っていうことがポイントなんですね。

そうですね。本当に好きは好きで最高に素晴らしいこと。わたしは音楽もファッションも好きですが、その場合は音楽やファッションを消費する、お金を払う側になりますよね。
もし自分がお金をいただく側になりたい、ということであれば、自分が価値を提供しなければ、だれからもお金はいただけませんよね。

会社員の場合はどう考えればいいんでしょうか?

会社員として会社の中で仕事をすることは、会社が求めることを行なっていくことです。社内のあらゆる部署やエリアに配属されて、アンテナを立てていれば思いがけず、自分が得意なことが見つかることがあるはず。それは会社員として働く上でのメリットだと思います。私だってロックバンドやってた、個性的でちょっと面倒な女の子だったのに(笑)社会を知ることができたのは会社のおかげ。番組制作が自分にむいていることもわかりましたから! 

取材/I am 編集部
文/堀中里香
写真/本人提供

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。
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