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白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりませんフリーランス1年目、収入が安定せず不安…こんなことならやっぱり会社辞めなきゃ良かった?

読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー
【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】

白川密成

プロフィール

四国第57番札所栄福寺住職白川密成

住職。「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。

++ 今回のお悩み ++

コロナでリモートワークが進む中、

自分の会社は頑なにリモートワークをさせてくれず、違和感をおぼえ退職。

元々Web関連の仕事をしていて、知り合いのツテもあり、

独立しても食べていけるだけの目途はたっていました。

しばらくは順調でしたが、予定していた案件が途切れ突然の収入ゼロ。

自由な働き方を求めて会社を辞めたのに、今は毎月安定したお給料をもらえるという事がどんなに有難かったかを実感しています。

やはり会社を辞めなきゃ良かったかも?と後悔し始めています。

でもこの自由な働き方も捨てがたい気持ちもあり、どっちつかずの状態です。

自分の働き方を見つめ直す助言を頂ければと思います。

(30代男性)

白川先生からあなたに贈る言葉
方便

フリーランスに向いている人

 なかなか難しい悩みです。色々な立場で働く人にお会いすると、やはりフリーランスに「向いている人」、「向いていない人」がいるな、と感じることが多いです。起業した友人は、元々、従業員の多い企業に勤めていました。しかし入社してすぐに「毎月、成果をあげられなくても給料がもらえる」ことが、“恐くなって”起業を決意したと話していました。私などは、「成果があがらなくても給料もらえる」ことに、「うれしい!」と思ってしまうほうなので、「ああ、こういう人が起業するのだなぁ」と感銘を受けたことがあります。

 逆に、従業員として会社に残る人の中にも、いい意味で「この人は、会社にいるからこそできる面白い仕事をやっているなぁ」と感心させられることがあります。

 以前、原作者として映画の制作に関わったことがありました。ロケ地も私が住職を務めるお寺で撮影することも多かったので、様々なフリーランスの人たちもスタッフとして加わって、ひとつの映像作品が出来上がっていくことを知りました。その衣装担当や、メイクアップ担当の若い方々と話し込むことも多く、「みなさん、どうやってこの道を選んだんですか?」と聞くと、「結局、私は満員電車に乗りたくないんです」と冗談交じりにニコニコと笑われていたのが、印象的でした。どこか本音のようにも感じました。

選択肢はそのふたつでしょうか

 今回のお悩みですが、「ああ、フリーを続けてよかった」ということもあるでしょうし、「安定したお給料の仕事に戻って助かった」というパターンも両方あり得ますので、正直、大変難しい選択だと思います。しかし選択肢はそのふたつでしょうか。

 この話を聞いて、ふと頭に浮かんだのは、仏教に強い興味を持っているIT企業の代表の方と対談をさせて頂いたことでした。その人は会社で、社員の「複業(副業)」を大々的に歓迎していて、同時に複業になる形での社員採用も積極的にされていました。私のイメージでは、企業は社員の複業を嫌う固定概念があったため、すごく新鮮でしたし、働く人にとっても「いくつかの現場」を持つことが、それぞれの仕事にいい影響を与えているようでした。

 もしかしたらあなたの場合も、フリーで働きながら、別の場所で安定した収入を得る方法があったり、メインは会社に所属しながら、違う分野でフリーで働くような方法もあるのかも知れません。

サバティカル休暇のお遍路さん

 これはあくまで一例ですが、「働くこと」の固定概念を少し破ってみるとことにも、ヒントがあるような気がしました。近年、四国八十八ヶ所のお遍路さんは、海外からのお参りもずいぶん多くなっています。ある日、30代のフランス人銀行員のお遍路さんが来られた時に話していると、「サバティカル休暇」という一定期間働いた従業員が、数ヶ月から1年という長期間の休暇をとれる制度を利用して、世界中を旅していると話してくれました。「いいなぁ」と思いました。「働く」ということの形態が、日本でも、もっと柔軟になればいいなと思います。

仮の手段が本道になることがある

 あなたに紹介したい仏教語は、「方便(ほうべん)」です。「嘘も方便」のことわざでも知られる言葉ですね。仏教の言葉として「人々を真理に導くための<仮>の方法。巧みな手段」「人を救い、覚りに導くための一時、手段として用いる方法」を表す言葉で、元々は接近する、到達するという意味から派生した言葉です。

 人生の中では、答えのない悩みが多いです。その壁にぶち当たった時、今、選択肢だと思っている道、以外にも道をいくつか新しく思い浮かべてみてはどうでしょうか。それが「方便」のように一時的な仮の手段のように見えても、それが自分の本道になることもあります。

 そして、その「新しい選択肢」に道を進めなかったとしても、必死で思い描いた「方便」「その場しのぎ」は、これからの人生のヒントになると思います。

今日のまとめ 

  • フリーが向いている人はやはりいる。
  • 人生の選択肢は、今思い描いているもの以外にもあることを見つける。
  • 「働く」ということの形態は、変化可能である。
  • 仮の道のはずだったことが、メインの道になることもある。

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この記事を書いた人

白川密成
白川密成四国第57番札所栄福寺住職
「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。
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