「もう歳だから……」は謙虚?それともネガティブ? 50代からのキャリアを変える口ぐせ
50代から転職したい、セカンドキャリアを築きたい、と思う時、まずは何から手をつければいいのでしょうか。「まずは言葉を変えること、そして考え方と姿勢を変えること」というのは、企業研修で2万人以上の人の人生をガラリと好転させてきた人材教育家の井垣利英(いがきとしえ)さん。使わない方がいい言葉、気をつけるべきことについて教えていただきました。
プロフィール
人材教育家井垣利英
I am読者のメインは4、50代女性。「定年後も働き続けたい」と願う人、「転職したい」「派遣ではなく正社員になりたい」とセカンドキャリアを考える人もいれば、育児がそろそろ終わったので「正社員で働きたい」と思う人もいます。
【写真】井垣利英著『ふんわりと上昇気流に乗る生き方』(サンマーク出版)
そうやって、一念発起してせっかく動き出してみたのに、「求人を見てみたら年齢対象外で愕然とした」「スキルがないので希望の職種につけない」と落ち込んでしまう人も少なくありません。努力しても、うまくいかない。そんな時、振り返ってみるべきポイントは「使っている言葉」にあるのかもしれません。
今回は多くの企業で研修を行い、マナーや考え方をプラスに変えることで人生を明るく楽しくする専門家・井垣利英さんに50代からの転職やこれからの人生をいつも笑顔でいるために必要なことについて語っていただきました。
目次
キャリアを考える前にやるべきことがある
こんにちは。井垣利英です。シェリロゼを起業して20年。企業研修や主宰する自分磨きスクールなどを通じて、2万人以上の方の人生に向き合ってきました。
私はマナーも教えている人材教育家ですが、そもそもマナーやキャリアの前に、自分の人生に対する姿勢 や使っている言葉、まずはそこから変えていく必要があると思っています。
特に、無意識に使っている言葉には、自分や周りの人たち、ひいては自分の人生をどう考えているのか、その姿勢が全て現れるものです。自分の人生を大切にしていないかぎり、理想のキャリア構築は 夢のまた夢です。
無意識に使っているネガティブな言葉が結構怖い
自分を大切にしていて、自分に価値を感じている人というのは、自分に対してマイナスの言葉、「マイナス語」を使わないものです。そういう人は自然とプラスの言葉「プラス語」を使って人と関わっていきますから、周囲にポジティブな人が集まり、良い人間関係が出来ています。
一方、「もう年だから」とか、「ほら私バカだからさ」とか、自分に対するネガティブな言葉はもちろん「夫が最悪で」「使えない部下が」「こんなつまらない会社」とか、家族や会社、上司、同僚や部下に対しても愚痴や悪口、不平不満を言っている人というのは、日常のどのようなことに対しても口ぐせのようにマイナス語を無意識で言っています。
類は友を呼ぶと言いますが、悪口や不平不満ばかり言っている人のところには、同じような人が集まってきますし、人間関係のトラブルも多くなります。自分の会社を「つまらないつまらない」と悪口を言っている人のところに良い仕事やキャリアアップのチャンスは来ません。
だからこそまずは使う言葉を変えてほしいのです。
今回は、いますぐにできる口ぐせ改善についてお伝えしますね。
レッスン1 「もう歳だから」と言わない
何かに挑戦しようと思ったり、何か新しいことに誘われたりしたときに「もう歳だから」と言ってしまうことってありませんか? この言葉は、80代で使っている人もいれば、30代で使っている人もいて、とても主観的で不確かな言葉ですよね。でも、何歳で使っても、自分の可能性を自分で消してしまう言葉なのです。さらに、この言葉を使っていると見た目も考え方も急激に老け込んできます。
「もう歳だから」の後に続く言葉は否定的です。「もう歳だから無理」「もう歳だからやらない」と、常に新しい事を「やらない言い訳」に使っているだけなのです。「歳だからできなくてもいい」と決めているのは自分自身です。
人生120年なんて言われ始めた昨今では、50歳はまだ折り返し地点にも辿り着いていませんから、まだ人生の半分以下の若者です。ちょっと厳しいようですが、この先笑顔いっぱいの幸せな未来を望むなら、ぜひ「もう歳だから」を、まず、意識してやめてみましょう。
レッスン2 「私たちの若い頃は」「今時の若い子は」は禁句
「今時の若い子って」「私たちが若い頃は」という言葉を使っていませんか?
思い返してみてください。今4、50代の人が20代だった頃、4、50代が「最近の若い者は」なんて言われてどう感じていたでしょうか。「歳をとるとあんなに柔軟じゃなくなるのか」「ギスギスしててああはなりたくないなあ」なんていう思いを抱いた人もいるのではないでしょうか。
私はジャニーズファンなので、10代20代の皆さんとお会いするときは率先してそれを伝えて、ジャニーズの好きなグループを聞いて話をします。共通言語ができるので、休憩中に、好きなジャニーズのメンバーの話で盛り上がり、一気に距離が縮まります。
また、私たちの世代に比べて、今の20代はデジタルネイティブ世代ですから、私たちよりもデジタルの知識がものすごく豊富です。「最近の若者はパソコンもちゃんと使えないのか」なんて眉間に皺を寄せているよりもプラスの方向から見るように視点を変えて「スマホでそこまでできるのか」って関心を持って、やり方を聞いてみるほうが、なんだか素敵な50代って感じがしませんか?
自分が経験してきた 世界にとどまるのではなく、今の若い世代が何に興味があって、流行しているのかに関心を持ってみると、新しい世界が広がりますよ。
レッスン3 「ありがとう」を口ぐせにする
次に、普段からどのくらいの「ありがとう」を口にしているのか、振り返ってみてください。そして普段からありがとうを伝える場面で「すみません」を多用していないかどうか、検証しながら1日を過ごしてみてください。
「ありがとう」を意識してたくさん言うことで、夫婦や家族の関係、職場での人間関係も格段の良くなります。これからは、どんな小さなことでも「ありがとう」 と言うようにしてみてください。
「ありがとう」を多用していると、家庭内、職場、さらに世界に溢れる「ありがとう」つまり「感謝すること」に自然と目が向くようになります。自分のために誰かがしてくれていることや、あってよかったと思うものなどに日々気づくことができるので、「自分は幸せだな」と感じられるようになります。そうすると、自然と日頃から笑顔が多くなり、自然といいことが起きるようになり、さらに「ありがとう」を言える場面が増えます。
無意識に使っている言葉を変えるだけで仕事が決まる!?
人はもともとマイナス思考になりがちな生き物です。一説では、人間の脳は1日に7万回も思考していて、さらにその内容のほとんどがマイナス思考だと言われています。それは、「危険なことが起きたら命を守らなくては」という動物としての本能によるところでもあります。
だからこそ、自分が無意識のうちに口にしている言葉も、放っておくとマイナス言葉になってしまいます。自分が発しているマイナス言葉に影響され、自分がさらにマイナス思考になっていくのです。
逆に、いつもニコニコして「ありがとう」と言っている人は、「ありがとう」と言われる場面も増えてきますし、自然と周りの人に対して感謝の気持ちが生まれます。そうすると、「あなたに会えてよかった」と思ってもらえるようになり、気づいたら、転職や定年退職の際も「ちょっと仕事手伝ってもらえませんか」という声をかけてもらえる人になっています。
50代、円熟味を増してきたこの年代だからこそ、意識的にプラス言葉を使っていきましょう。これまでの人生で培った経験やスキルが活かされるようになりますよ。もっと詳しく知りたいという人は、私の著書『ふんわりと上昇気流に乗る生き方』なども参考にしてみてください。
後編は、50代からのキャリア構築や定年後の人生を輝かせるために必要なことについてお伝えします。
取材・文/MARU
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この記事を書いた人
- 猫を愛する物書き。独立して20年。文章で大事にしているのはリズム感。人生の選択の基準は、楽しいか、面白いかどうか。強み:ノンジャンルで媒体を問わずに書けること、編集もできること。弱み:大雑把で細かい作業が苦手。
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