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月収100万円のカメラマンが教える「ギブアンドギブ」のマインドセット

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「自分の強み」と「ガラ空きポジション」を見つけることで「レンタルスペースのカメラマン」として成功。月収数万円から月収100万円になったカメラマン・坂口康司さんにフリーランスがやるべきマーケティングを聞きました。

かつてのカメラマンへの道は、写真学校を卒業し、フォトスタジオでアシスタントとして2〜3年の修行後、独立するのがスタンダードでした。いわゆる下積み時代というものです。しかしこのスタジオカメラマンの間にいろんなカメラマンの仕事の仕方や機材の使い方を学べたり、人脈を作れるというメリットもありました。しかし最近はいきなりフリーランスカメラマンとして独立する人も多い。どのようにしてプロカメラマンとしての軌道に乗せていくのでしょうか。

マーケティングで「自分の強み」を見つける

プロのカメラマンになるには、撮影技術があることは最低限でマストの要件なのは、今も昔も変わりません。ですが、それとは別に、緻密にマーケティングできることも必須条件となります。

いくら技術力があったとしても、それを世間の人が知らなければ、ゼロのままです。無名の段階から世間に知ってもらうためには、マーケティングを実践してください。

例えば、マーケティングの手法に3C分析というのがあります。自社(Company)と市場・顧客(Customer)と競合(Competitor)を分析して、自分のポジションを探すビジネスのフレームワークです。

それをめちゃくちゃ緻密にやったのです。そして「レンタルスペースのカメラマンのポジションが空いているな」と結論づけました。

今もそうですが、私が独立した頃はレンタルスペース専門のカメラマンは、ほぼ存在していませんでした。市場としてそこがブルーオーシャンで、競合もいなかったのです。そこで、レンタルスペースのカメラマンというがら空きのポジションに、一点中集中で頑張っていこうと決めました。

レンタルスペース業界は狭いため、「撮影できる人で誰かいい人いない?」「坂口さんというプロがいますよ」の口コミの連鎖で仕事が増えていき、狙いの正しさが立証されました。

このように分析を深めていけば、まだ見いだされていなくて、その人にぴったりのポジションはいくらでもあると思います。そうしたステップを省いて、「SNSで写真アカウントを始めます」では、間違いなく悪手であり、戦略もなにもあったものではありません。すでに有名で、撮影技術が極めて高い写真アカウントが多くあるからです。カメラマンに限った話ではありませんが、独立したらマーケティングは、徹底的に注力しましょう。

SNSでは有益な情報に絞って投稿する

SNSは外せません。といっても、やみくもにあちこちのSNSに手を出すのではなく、市場分析をして、どの層にどういうサービスを届けたいのかを考えます。

例えば、自分であれば、「レンタルスペースの運営者に対して撮影サービスを売りたい」となります。

そこから、そのターゲット層との接点はどこなのかをいろいろ調べ、結果としてTwitterであったのですね。

レンタルスペースの経営者は、当然ですが売上げをアップさせたいと日々考えています。そこで、カメラマンの視点で、どうやったら売上げにつながるかということを、いろいろ発信したのです。例えば、「お部屋はこの角度から撮ったほうがいいですよ」「ソファにこういうクッションを置くと見栄えが良くなりますよ」というふうに。

レンタルスペースの担当者がリツイートしたくなるような内容を練りに練って投稿し、リツイートいただいたことで認知度がすごく広がりました。

有益な情報を発信し続けることで、写真の重要性を知ってもらい、自分の認知度を上げ、「坂口さんにお願いしようかな」という流れを作ったのです。

ただし、カメラマンのSNS、イコールTwitterとは限りません。同じ写真撮影でも、ウェディングだったらInstagramをやった方がいいかもしれないですし、ポートレートだったらTikTokのほうが拡散性はあるかもしれない。しっかり分析することで、ふさわしいSNSは変わってくるはずです。いずれにしてもSNSで、勝手に広がるような投稿をすることはとても大事です。自分は営業が苦手でしたが、お客様視点では営業をかけてこないという安心感が、信頼につながり、お互いに満足度が高くなることに気づきました。向こうから依頼が来る仕組みづくりとしても、SNSを活用してみましょう。

独立したら「ギブしまくる」

意外かもしれませんが、独立したら「テイク」はせずに「ギブアンドギブ」、つまり「ギブしまくる」姿勢が大事です。そうするメリットはいくつかありますが、人から応援される存在になるのが大きいです。

「ギブ」と言うと、「モノをあげる」イメージがあるかもしれません。ですが、カメラマンであれば、知人夫婦に子どもをスマホで撮るコツを教える、初心者にどんなカメラがいいかアドバイスする、結婚式に呼ばれたら新郎新婦の写真を撮ってあげる。

こうしたささいなことでも、立派な「ギブ」です。やがて、周囲には大勢のファンができ、仕事を依頼したり、紹介してくれたりする存在となります。

さらに、SNSでの有益な情報発信も「ギブ」なのです。

「坂口さんって、いつも耳よりな情報を発信していてありがたいな」と思ってもらい、ある種のファンになっていただくことが、回りまわってビジネスにつながっていきます。

情報は出し惜しみしないほうがファンが増える

余談になりますが、すごく有益な情報発信をしたとしますね。「これをやれば、ちょっと大変だけど、十分稼げますよ」といった話です。でも、みんな有益だとわかっていても、実際に行動に移す人って、1人くらいしかいないのです。

今は、数百円〜数千円の有料記事を出す人は結構いますね。有益すぎて無料で出すのがもったいない。それなら、ちょっと稼ぎたいという気持ちや、記事に書かれているノウハウを実践されて自分のライバルになってほしくないという気持ちでしょう。ですが、読んだところで、実行して自分のライバルになる人は少ないので、だったら有益な情報をバーンと発信して、「すごい。応援したい」と思ってもらった方が絶対いいと思います。有料情報が購入されて得られるお金よりも、ずっと大きな金額として返ってきますから。

そんなかたちで、有形無形を問わず、見返りを求めないで「ギブ」しまくってください。とても重要なことです。

ただ、1点だけ注意したいのは、完全な無償奉仕はしないことです。「こんなに努力して、ギブしている」というのが見えてしまったら、逆に相手が引いちゃって逆効果でしょう。

得意ではない仕事は断るスタンスで

仕事を断ることで、さらに大きなリターンが返ってくることが結構あります。

お客様から依頼があっても、得意な領域からちょっと外れた業務であって、ほかの人がより大きなパフォーマンスを発揮できるのであれば、その人を紹介してしまいます。

というのも、お客様の利益が最大化してほしいと真面目に考えていますので、他に適任者がいるにも関わらず、自分の利益だけを考えて受注することは悪だと考えているからです。

それで、自分の売上げはゼロになります。ですが、下手に受けてしまい、クオリティの低い成果物となって、相手が損をする可能性を減らしたわけです。

このことは徹底的なお客様目線で、自分の利益よりお客様の利益を優先させる自己犠牲ですから、相手は強く感謝の気持ちを感じてくれて、「今回の仕事は違う人にお願いするけど、次は坂口さんにお願いしよう」となるのです。

これを徹底するには、お金の切迫感がないことが大事です。特に独立当初は、運転資金の不足と背中合わせの苦しい状況になりがちなので、開業前にまとまったお金は貯金しておくようにします。これは必須の要件と考えてください。

坂口康司

株式会社トータルクリエイツ代表取締役。法政大学卒業後、東証プライム上場のITベンチャーに入社し、新規事業の開発に携わる。その後転職し、撮影サービスの立ち上げに伴いカメラマンとしてのキャリアをスタート。執行役員として撮影サービスや海外向けメディア事業の拡大に従事。独立後は、レンタルスペース運営者の売上を増やすカメラマンとして実績を上げる。著書に『堅実な資産運用をしたいならこの1冊!レンタルスペース投資の教科書』(自由国民社)と『カメラマンになっていきなり月収を100万円にする方法』(自由国民社)がある。


この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

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