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「小鉢大好き」から「捨てない料理人」にたどり着いた、自分の強みを見出す方法とは。

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自分の強みを見つけたいけれど見つける方法が分からない…という方々に読んでほしい!小鉢好きのいち料理家だった小鉢さんが「捨てない料理人」という強みを見出したプロセスから導かれる、強みを見つける方法とは?

自分の強みを見つけたいけれど、どうやって見つけたらいいのか悩んでいる人はとても多いのではないでしょうか。「わたしもその一人でした」と話すのは、「捨てない料理人」として活動している小鉢ひろかさん。

料理人や料理研究家など、料理に関連する仕事をする人は今やプロから素人まで有り余るほど。レシピサイトをはじめ、InstagramでもYouTubeでもブログでも、日々新たなレシピが公開されています。そのレッドオーシャンから抜け出すには、何か他の人と異なる強みが必要です。

小鉢さんの以前のキャッチコピーは「1食材で100通りの食べ方を提案する副菜専門料理家」。副菜すなわち”小鉢”に特化し、様々な小鉢レシピを発表していたものの、あくまで家庭向けのレシピの開発にとどまっていたといいます。

現在のキャッチコピーは、「捨てない料理人」。そう名乗り始めてから依頼されるレシピの幅が大きく広がり、メディア関連の仕事も増えたのに加え、なにより「生産者の方に名前が届くようになったのが大きいですね」と小鉢さん。

小鉢好きのいち料理家だった小鉢さんが「捨てない料理人」という強みを見出した、そのプロセスに迫ります。

自分のやりたいことをやっていた小鉢時代

小鉢さんは京都の調理師専門学校にて京料理を専攻。卒業後は同校のクッキングスクールで京料理の講師として活動したのち、都内の青果店で飲食部門の立ち上げや、弁当や惣菜の考案を担当しました。その後レシピサイト運営会社に転職し、小売り店に向けた旬の食材レシピの開発を行っていました。業務委託を経て、独立したのは5年前のことです。

独立した当初は、小鉢を足せばバランスの良い食事になるような副菜の簡単なレシピをはじめ、器としての小鉢の楽しみ方や、心と身体を整えるコツなど、食生活を豊かにするための情報を日々SNSやセミナーで発信していました。

「”小鉢”を通じて世界中の人の食生活を豊かにしたい」

その思いで行っていた活動でしたが、あるときこれが強みだと発信できる1本筋が作れていないことに気づいたといいます。”小鉢”に特化していたつもりの発信は、他の料理研究家と一線を画すものにはなっていなかったのです。

自分年表で見つけた強みとなるかけら

自分の軸となる、伝えたいことは何か。それを見つけるために小鉢さんが始めたのは、生まれてから今までの行動をすべて、紙に書き出してみることでした。日々自分の行動と向き合う中で、父親の会社に飾ってあった、曾祖母が30回も縫い、使い続けた雑巾のことを思い出したそうです。

全てに命があり最後まで工夫して使いきる思考を幼少期から教えてもらった」

と、小鉢さんは回想しています。

実は捨てない料理も得意だった

実は、最後まで工夫して使い切る思考は、小鉢さんの仕事に現れていました。”小鉢”をメインに活動していた時は”捨てない料理”には特にフォーカスしていなかったそうですが、小鉢さんはすでに様々な”捨てない料理”の活動を行っていたのです。

青果店で働いていた時は飲食部として廃棄・規格外野菜を活用した弁当総菜屋を立ち上げ、まだ食べられる野菜約3トンを料理に大変身させました。独立してからは、「この野菜は皮をむく必要はありません」「こっちは茎も全部食べられます」のように、副菜レシピの捨てなくていい部分を積極的に発信していました。

小鉢さんのルーツである京料理のひとつ精進料理は元来、修行僧のための食事だったと言われています。食事も彼らにとっては修行の一環。普段なら捨ててしまうような野菜の皮や根を、精進料理では余すことなく丁寧に調理するのだそう。最後まで使い切る思考と精進料理が合わさり、自然と”捨てない料理”の発信につながっていたのです。

他者からの反応で”捨てない料理”の方が伝わると気づく

そんな活動を続けるうちに、周囲から「捨てない料理人になればいいのに!」と勧められるようになりました。しかし当初はできることが狭まるのではないかと、「捨てない料理人」と名乗ることに葛藤があったといいます。

そこで小鉢さんが試みたのが「人に言ってみて、反応を見る」ということでした。

「捨てない料理が得意なんです」とさりげなく伝えてみたところ、「捨てない料理っていいですね!」という反応の多さに驚くことになります。他者の反応から、伝わる言葉が何かが見えてきたのです。

自分のやりたいことより、時代を取り入れた方が強みになる

”小鉢”をキーワードに活動を始めた小鉢さんでしたが、普通の人が考える”小鉢”はあくまで付け合わせ。他の料理人との差別化を図るまでの強みに持っていくのは難しかったのではないでしょうか。

一方、「捨てない料理人」はSDGs社会である今の時代、誰もが共感する言葉。「捨てない料理人」と言われただけで、未来につながる料理のイメージが広がります。キャッチ―でもあり、ストーリー性も感じるこの言葉によって、小鉢さんのビジネスは大きく変化していきました。

実際にこんなにビジネスが拡大した

「捨てない料理人」と名乗り始めてから、依頼されるレシピの幅が副菜だけでなく大きく広がったのに加え、レシピを発信することで「メディア出演や雑誌掲載のお仕事もいただけるようになった」と小鉢さん。なにより一番変わったのが、生産者に名前が届くようになったことでした。

できる限り廃棄を出したくないけれどどうしたらいいかわからない生産者にとって、「捨てない料理人」はとても響く言葉だったといいます。

”小鉢”から”捨てない料理”に軸足を変えたことで、生産者から反応をもらえるようになった小鉢さん。例えば捨てるしかなかった昆布の茎を「チップスにするのはどうですか」と提案するなど、生産者の目線とは違った視点で新しいものを生み出す小鉢さんは、生産者と一緒にさまざまなプロジェクトを立ち上げるようになりました。

家庭向けの副菜レシピを開発するというCtoCの仕事から、企業の困りごと「廃棄を減らしたい」を解決するというCtoBの仕事に、小鉢さんのビジネスは大きく変化したのです。

つまり強みとは、強みのかけらと時代の掛け合わせ

小鉢さんが幼少のころから培ってきた”最後まで工夫して使いきる思考”が精進料理とつながったことで、”捨てない料理”が生まれました。そしてそれがSDGs社会という時代と掛け合わさったことで「捨てない料理人」という大きな強みになったのです。

「捨てない料理人」となってから、静岡に拠点を移した小鉢さん。現在毎年大量に廃棄される茶葉問題を抱える茶農家の課題解決に取り組んでいます。料理研究家であれば携わることができなかったような仕事が増えているといいます。「捨てない料理人」という強みを活かして、社会の課題を解決し、ビジネスを広げています。

この記事を書いた人

堀中 里香
堀中 里香取材・ライティング
知りたがりのやりたがり。エンジニア→UIデザイナー→整理収納×防災備蓄とライターのダブルワーカー、ダンサー&カーラー。強み:なんでも楽しめるところ、我が道を行くところ。弱み:こう見えて人見知り、そしてちょっと理屈っぽい。座右の銘は『ひとつずつ』。

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