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花輪陽子の「経営者3年目」までのお金のこと「事業資金」と「生活費」をどうやって分ける?フリーランス必見のお財布管理術

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「事業資金」と「「生活費」が混ざったら、確定申告の経費計上が困難になる?そこに時間や手間をとられず事業をスムーズに進めるためには、「2つのお財布管理術」が必須。1級 FP花輪陽子の連載・第3回!

プロフィール

1級ファイナンシャルプランナー花輪陽子

リーマンショックで夫婦二人でリストラを経験。シンガポール在住1級ファイナンシャル・プランニング技能士CFP®認定者。

「事業資金」と「生活費」分けていないと経費計上が難しい

事業資金と生活費が混ざる状況とは?

シンガポール在住、ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。個人事業主やスモールビジネスのオーナーにありがちなことに、家計と事業のお金がぐちゃぐちゃになっていることがあります。


個人の家計簿を見せていただいている時も家計簿だけでは辻褄が合わずに、いくつかの費目の金額が少なくなっている方も中にはいらっしゃいます。よく聞くと、ビジネスの経費から落としているということもあります。もちろんそのことを自分でも把握していて、ビジネスの記帳に関しても税理士の方などに相談をしているのであれば問題ないかもしれません。


しかし、家計管理の面からも、税務署に説明をする上でもこの2つはしっかりと分けて管理をすることが重要です。

家賃や管理費は、事業に使用した割合のみ経費になる(写真/Canva)

例えば、賃貸マンションを事務所にしている場合、家賃や管理費、契約更新料や火災保険料が経費の対象となります。ただ、全部が経費になるわけではなく、事業に使用している割合に応じて経費として計上することが一般にできます。光熱費なども事業で使っている割合だけ経費計上をすることになります。


その他の支出に関しても領収書や明細、あるいは出金伝票「(日付や支払先、金額、内容などを記載)が必要になります。何でもかんでも経費にできるわけではなく、経費にする場合も税務署に説明ができるように必要な書類と記帳が求められます。


西原理恵子さんの『できるかな V3』では『脱税できるかな』というテーマで税務署と戦うシーンが漫画で面白おかしく描かれています。しかし、実際にはずっと厳しい記帳や決算処理をしなければならず、家計簿とは比較にならないほどです。

節税より重要なのは「お金の流れ」の把握

特に私が住んでいるシンガポールでは経費の取り扱いが厳しく、領収書などがないとプライベートの支出になってしまいます。一度、引っ越しの際に領収書をなくしてしまったことがありますが、その分はプライベートの支出となってしまいました。また、売上に関しても全てインボイスが必要になります。現在はほとんど全部の売上と経費をカード払いか銀行取引にしているのですが、銀行の入会金以外にも領収書とインボイスが必要になります。


こんな厳しいシンガポールに住んでいるので、もちろん家計で使っている 1 ヶ月の支出、ビジネスで使っている支出もしっかりと把握できています。節税を頑張るよりもお金の流れをきれいにしたり、把握をすることが重要だと感じるようになりました。

事業資金と生活費はどうやって分ける?

口座を分けて管理する

口座を分けたらお金の管理がスムーズになる(写真/Canva)

さて、どうすればこの 2 つのお金を分けて把握できるでしょうか。私は口座を分けて管理することをおすすめします。個人事業主の場合も屋号付きの口座でデビットカード付きの銀行口座を開設することも可能です。法人の場合、法人口座で個人口座と別管理にしましょう。事業用と個人用と口座を分けることで公私混同を自然に避けることができます。また、事業用の口座になっているために、税理士などの専門家に相談をすることが容易になり、会計ソフトとの連携もスムーズです。


顧客に入金をしてもらう際にもビジネス専門の口座がある方が取引先からの信頼を得られやすい場合もあります。


デメリットとしては口座開設に多少手間暇がかかることと、管理をする口座がもう一つ増えるということでしょうか。特に法人口座を開設する場合、書類を複数提出する必要があり、数週間かかる場合もあるようです。しかし、デメリットをメリットが上回る可能性も高いので口座を分ける事を考えてみましょう。

銀行やクレジットカードを活用して記録を残す

ビジネス口座を持つ事のほかにも、銀行やクレジットカードを活用して記録を残すということが考えられます。現金で取引をすると証拠が残りにくくなります。また、記帳も手でしなければなりません。しかし、銀行の入出金等で記録を残しておけば、会計ソフトと連携するだけで半自動的に記帳が可能になります。専門家に相談をする際にも銀行の入出金記録等や領収書等を見せるので記録がある方がスムーズなのです。


かくいう私も日本にいた頃は交際費などがやや曖昧になってしまっていました。その原因として、ビジネス口座を作っていなかったこと、現金での支出があったことが考えられます。しかし、現在は法人口座を持ち、ほとんど銀行かカード取引なのですべての記録を自動的に残すことになります。シンガポールではプライベートとビジネスと支出をしっかりと切り分けしなければなりません。また、法人口座を持ってしっかりと体制を整えたことによって、個人のときには受けられなかった大きな仕事を受けることもできるようになりました。


ビジネス口座を持って、きちんと記帳をすることは大変です。特にスタートアップした頃はそれどころではないかもしれません。しかし、経理作業をアウトソースさせることも以前よりも低コストになりつつあります。きちんと体制を整えることによってビジネスやお金の流れが好循環することもあるので頑張ってお金の管理をしていきましょう。

この記事を書いた人

花輪陽子
花輪陽子リストラから1級FP
1978年生まれ。シンガポール在住1級ファイナンシャル・プランニング技能士CFP®認定者。青山学院大学国際政治経済学部卒業後、外資系投資銀行に入社。リーマンショックにより夫婦2人でリストラを経験。FP1級取得後、雑誌や書籍での執筆など幅広く活動。

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