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花輪陽子の「経営者3年目」までのお金のことフリーランスになっても損をしない!いざというときに役立つ保険の基礎知識

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会社員とは違い、加入する保険を自分で選択しなければならないフリーランス。老後の年金、医療、就業不能、損害など、必要な保険を見つけるための基礎知識をお伝えします。1級 FP 花輪陽子の連載・第 6 回!

プロフィール

1級ファイナンシャルプランナー花輪陽子

リーマンショックで夫婦二人でリストラを経験。シンガポール在住1級ファイナンシャル・プランニング技能士CFP®認定者。

フリーランスは自分で保障を設計

会社員より保障が少ないフリーランス

フリーランスになると、会社員の時と違って一般に保障が少なくなります。米系企業や日本の大手企業では、従業員に対して手厚い保障を提供している場合もありますが、フリーランスになると、自分自身で保障を設計することが必要になります。スタッフを雇っていると、規模などによっては福利厚生を考えなければならない場合もあります。


また、大企業では、社内に弁護士などもいる場合が多いですが、フリーランスはそうではないことが多いでしょう。ビジネスを営む上での損害賠償等に備える保険も検討したほうがよいケースもあります。自分でビジネスをしている上での責任になりますので、しっかりと考えていきたいところです。

国民年金の支払いが 65 歳までになったらどうなる?

日本に住んでおり、フリーランスとして活動をするなら、公的医療保険に加入する必要があります。個人事業主の場合、国民年金と国民健康保険に加入します。国民年金保険料の金額は 1 カ月あたり 16,520 円で、まとめて前払いすると割引が適用されます。現在は 60 歳までの納付で、65 歳まで任意で加入することができます。


少子高齢化の影響から納付を 65 歳までにすることが検討されていますが、そうなれば将来受け取る年金額は増えるものの、60 歳から 5 年間は保険料負担(現在の保険料率で月額16,520 円)が発生することになります。つまり、60 歳で退職するのではなく、現役である程度働き続けないとならないことを意味します。


また、ビジネスを開始したばかりの頃は、お金がなくて保険料を払うことが困難な場合もあるかもしれません。収入減や失業等で保険料の支払いが困難になった場合は、免除制度や納付猶予制度を活用することになります。

国民年金は「転ばぬ先の杖」

病気やけがをしたときの保険機能もある

国民年金は老後だけではなく、障害や遺族の保険機能があります。遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、亡くなった時に、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金のことです。障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。これらの保障を受けるためにも未納にせずにしっかりと保険料を払うようにしましょう。


また、会社経営の場合は厚生年金と健康保険に加入をするのが一般的です。日本ではすべての国民が公的医療保険に加入することになっており、国民皆保険制度(こくみんかいほけんせいど)とも呼ばれています。国民皆保険とは、病気や事故にあった時の高額な医療費の負担を軽減してくれる医療保険制度のことです。

就業不能や医療保障は民間の保険でカバー

掛け捨て保険も選択肢のひとつ

自分に必要な保険を見極めよう(写真/Canva)

先程の公的医療保険で不足する部分は、民間の保険でカバーするようにしましょう。例えば、国民年金では最低限の遺族保障はありますが、扶養家族の数や年齢によっては十分ではない場合もあるかもしれません。不足部分は、共済組合やネット保険などで掛け捨て保険に加入すれば安価で保障を買うことができます。


また、病気で働けなくなった時に備える保険も検討されます。「就業不能保険」(公益財団法人生命保険文化センター)という保険があり、就業不能状態が続く限り、ずっと毎月お金を受け取ることができるので安心です。フリーランスの場合、病気になると収入も入らなくなり、医療費がかかるのでそちらに備える保険になります。


その他に医療保険やがん保険なども検討される人が多いでしょう。日本では高額療養費制度があり、医療費が高額になった場合も1ヶ月の医療費の上限は一定に抑えられています。そのために 200万円程度のまとまった貯金がある方にとっては、医療保険は必須ではありません。しかし、心配な人は共済やネット保険などで必要な分に加入すれば、安価な保険料で保障を買うことができます。

ビジネスリスクに備えるには損害保険

フリーランスにありがちなビジネスリスクとは?

フリーランスならではのリスクには損害保険で対応できる(写真/Canva)

フリーランスになるとビジネスのリスクに対して備える損害保険に加入することが検討されます。これは自宅を守るための火災保険や自動車事故に備えるための自動車保険のようなものになります。


例えば、賠償責任保険です。情報漏洩、納品物の瑕疵、著作権侵害などフリーランスの業務執行上にありがちなビジネスリスクに備える保険もあります。その他に、弁護士費用に備える保険などもあります。加入方法は自分が保険会社や代理店にダイレクトに問い合わせる方法のほか、フリーランス協会等が提供しているパッケージプランに加入することも考えられます。


もちろん、保険に入れば安心というわけではありません。まずは、そのようなリスクが起きない体制を整えておくことが重要です。例えば、火災保険に入っていたとしても、そもそも火事を起こさないように気をつけることが大前提でしょう。火事で破損してしまったものは元通りに戻すことはできず、保険会社の所定の要件を満たした場合に一定金額の保障を受けられるというものになります。


また、昨今では SNS の運営も名誉毀損などで問題になることがあります。自分のビジネスの宣伝以外の発言は控える、あるいは慎重に投稿するなどの戦略も一つかもしれません。特にスタッフが増えるなどするとリスクが増えますので、保険の加入を検討することは必須になるでしょう。もちろん保険料もかかりますので複数社を比較検討して、必要な保障に安価で加入できるとよいですね。

この記事を書いた人

花輪陽子
花輪陽子リストラから1級FP
1978年生まれ。シンガポール在住1級ファイナンシャル・プランニング技能士CFP®認定者。青山学院大学国際政治経済学部卒業後、外資系投資銀行に入社。リーマンショックにより夫婦2人でリストラを経験。FP1級取得後、雑誌や書籍での執筆など幅広く活動。

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