絶対に失敗するカフェの作り方起業してメディアの取材が殺到するようになるには? 誰もが人に教えたくなる最強のサイドメニュー作り。
小さなカフェが「有名店」になるために必要な「知ったら最後、誰もが人に教えたくなる最強のサイドメニュー」。その考案の仕方とは?珈琲文明の店主赤澤智さんが語ります。
目次
カフェ経営は最強のサイドメニューがなければ失敗する
前回、前々回でサイドメニューを考案するためのポイントを2つお伝えしました。
・同じ原材料でいくつかのメニューを作る
・キラーメニューを生み出す
キラーメニューというのは、看板サイドメニューのこと。
「知ったら最後、誰もが人に教えたくなる最強のサイドメニュー」と言い換えることができます。小さなカフェを運営するなら、この最強のサイドメニュー作りは「絶対にやらなくてはならない」と言っても過言ではありません。
今回はこの、誰もが人に教えたくなる最強のサイドメニュー作りについてお伝えして行きます。
私が経営している喫茶店『珈琲文明』には、名物「文明カレーパン」があります。「アツアツトロトロのカレーがつぼ型のパンの中に入っている」のが特徴なのですが、つまりはカレーライスにかかっているカレーのルーがパンの中に入っているというものです。
ライスではなくパンにすることで、「飲み物を頼みたくなる」という利点があるのですが、ただのカレーパンではなく、注文を受けてから熱々のカレーを注ぎ込むことで、競合他社が星の数ほどいる「カレーを出すカフェ」の中で抜きん出ることができます。
これが、前回お伝えした「競争相手がいなくなる『ずらし』を使った人気サイドメニュー作り」なのですが、『珈琲文明』にはもう一つ「地獄のカレーパン」というサイドメニューがあります。これが、まさにキラーメニュー。「知ったら最後、誰もが人に教えたくなる最強のサイドメニュー」なのです。
なんせ、辛い。とにかく辛いんです。
「地獄のカレーパン」は横浜のローカルメディア『はまれぽ』で、「横浜で一番辛いモノ」という認定を受けたり、全日本カレーパン協会の会長さんから「日本で一番辛いカレーパン」のお墨付きをいただいたことでたくさんの人が知る看板サイドメニューとなりました。
小さなカフェにメディアの取材が殺到する理由
そこからの広がりがすごかった。ユーチューバーの方々が挑戦している動画がバズり、テレビや雑誌、ネット、新聞などの取材が相次ぎ、メディアへの露出が雪だるま式に増え、さらに他のメディアに引火するというもはや私自身も止められない循環が生まれています。
今「私自身も止められない」と言いましたが、私は聞かれない限りこの「地獄のカレーパン」について語ることはありません。
こちらから声を大にして宣伝しない、テイクアウトをしないことを徹底しています。
さらに、「地獄のカレーパン」は「文明カレーパン」より50円高く設定し、付加価値をつけています。とはいえ、あくまでサイドメニューなので、「カレーの匂いが充満する店内にしないこと」も気をつけています。
これらは、「表に出過ぎないように手綱を引っ張り押さえつけている」と言っても過言ではありません。でも、この手綱を緩めないことが非常に重要なのです。
なぜか。
「コーヒー専門店でありながら実はカレーパンも有名」ということが重要なんです。
このフレーズが、間違っても逆(カレーパンが有名な店だけど実はコーヒーも美味しい)にならないようブランディングが崩れないことを意識しています。
小さなカフェを「誰もが知る有名店」と錯覚させる
それでも、この「地獄のカレーパン目的」という取材が相当数あります。
でも、「地獄のカレーパンを取材したい」という依頼は必ず受けるようにしています。
これは、『珈琲文明』というお店の宣伝になっているからにほかなりません。
宣伝効果は抜群です。「お客さんは人が集まるところに集まる」という、身も蓋もない原則を具現化するためには、「有名なお店であるかのような錯覚を起こさせる工夫」が必要なのです。その方法の一つが「知ったら最後、誰もが人に教えたくなる最強のサイドメニュー」を生み出すことなのです。
複数コンセプトを持つだけに色んな角度からの取材や掲載、放映がこれまでにありましたが、それらを見た人の中には細かい情報はあまり関係がなく、あちらこちらで見ることによって「へぇ~いろんなものに紹介されてる有名なお店なんだな」と認識されていきます。
また、芸能人がカレーパンを食べている様子がテレビで放映されると、「あの芸能人が行ってたあのカレーパンのお店に行ってみよう」となり、結果こちらに来店された方はサイフォンコーヒーや天井劇場を見てそれをさらに写真で押さえてSNSに公開する……という好循環が生まれます。
これって、「上質な音楽活動を息長く続けていくために敢えて売れ線のヒット曲を出して不特多数の人にそのヒット曲が収録されたアルバムを買ってもらう」みたいな話に近いかもしれませんね!
尖ったサイドメニューで小さなカフェは大成功
最後に重要なことをお伝えしておきます。
「知ったら最後、誰もが人に教えたくなる最強のサイドメニュー」はやはり相当尖った、エッジの利いた商品である必要があるということです。
それが「激辛」であったり「爆盛り」であったり色々あると思いますが、要するに意図的に突き抜けた商品、「出過ぎた杭」の商品であるべきということです。
ただしこれらキラーメニューはそれこそ店側も取り扱い注意です。それがメインメニューであるならそれでいいのですが、サイドメニューである以上は先に述べたようにご自身のお店のブランディングを脅かすほどの破壊力があるので手綱操作を怠らぬように気を付けてくださいね。
珈琲文明店主・赤澤智でした。
関連記事
この記事を書いた人
-
脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」