AI 時代に必要な文章術「プロンプト思考」ChatGPT を使いこなす「プロンプト思考」って? AI 時代に身につけるべき文章力

ChatGPT から始まった AI 旋風も、今やメールやレポートの自動化といった仕事の効率化への活かし方に話題が移っています。単に新しいツールを使いこなすための How を追いかけるだけで良いのでしょうか? 元SEのITコンサルタント兼武蔵野大学講師の小笠原記子がAI 時代を生き抜く私たちに必要な「プロンプト思考」をお伝えします。

プロフィール
元 SE の IT コンサル小笠原記子
目次
呪文のようなプログラミング言語なしでAIを使いこなせる
最近、目にしない日がない「プロンプト」という言葉をはじめて聞いた人も多いのではないでしょうか?プロンプトというのは、AI のようなシステムに伝えるメッセージだと思ってください。
ほんの半年前までは、「プロンプト」を使いこなせるのは IT の専門家であるエンジニアだけでした。ところが、ChatGPT のような生成 AI が私たちの身近になったことで、「プロンプト」には普段の言葉そのものが使えるようになったのです。
つまり私たちは、呪文のような英数字を覚えなくても、いつも使っている日本語で AI を使いこなせるようになったのです。
ChatGPT を使ったことがある人であれば、こんな画面を見たことがあると思います。ここに打ち込む、命令や質問のようなメッセージのことをプロンプトと呼びます。

「プロンプト思考」とは AI 時代の最強文章力?
しかし普通の言葉が使えるからこその難しさもあります。相手は AI ですので、こちらの気持ちを忖度したり、想像したりしてくれません。言葉を厳密に定義し、前提や制約を伝えることで間違いなく意図が伝わるような文章を書かなければいけないのです。
こうした文章が書けて、AI に正しく伝わるプロンプトをなげられる力が AI 時代には必要です。これを「プロンプト思考」と呼びます。つまり、AI 時代に私たちが鍛えるべきは「文章力」なのです。
言うなれば「プロンプト思考」とは、具体的かつ正確な情報を最短で伝える方法なのです。
レシピ作成でプロンプトを考えてみる
では、具体的に「プロンプト思考」のサンプルを見ていきましょう。
〈シチュエーション〉
小学生4年の息子の友だちがこれから 4 人、自宅へ遊びにくるようです。腹ペコ男子のお腹をみたす軽食を急いで用意しなければいけません。ChatGPT にレシピを教えてもらうことにします。
〈プロンプト思考がない場合〉
男の子が喜ぶ簡単な料理のレシピを教えて
〈プロンプト思考がある場合〉
お腹をすかせた小学生4年の男子が満足する料理のレシピを教えて。
量は 5 人分。ただし、5 分以内で作れること。
冷蔵庫にあるのは、ソーセージ1袋、卵1パック、玉ねぎ3個、にんじん1本。
無料版の chatGPT(3.5)で構わないので、試しに上の質問をなげてみてください。どうでしょう、違いが理解できたでしょうか?
プロンプト思考がないと、確かに簡単だけれど、分量がわからなかったり、そもそも食材が家になかったりする事態が発生します。そうなると、他のレシピを聞いたり、あとから条件を追加したりしなければいけないので、手間がかかります。
《プロンプト思考のない質問と回答》

《プロンプト思考のある質問と回答》


「プロンプト思考」とは人間が AI を使いこなすための考え方
プロンプト思考とは、簡単にいうと AI に正しく命令を伝えるための考え方です。命令と聞くと違和感があるかもしれません。要は、AI に答えを出させるための質問や、お願いごとを書いたメッセージのことです。先ほどの例でいえば、料理のレシピを教えてもらうために打ち込んだメッセージがプロンプトであり、命令となります。
数年ほど前に、小学生向けのプログラミング教育が流行った頃、「プログラミング的思考」という考え方が注目されました。これは、融通の利かないシステムに対して、誰がどう解釈してもいつでも・同じように理解できる命令をプログラムとして渡すための考え方です。この考え方では、言葉を厳密に定義し、前提をおき、制約があればそれを伝えるのですが、プロンプト思考も、相手が AI というだけで同じです。
人間は感情や暗黙知をフル活用してコミュニケーションを行っていますが、AI やシステムには通用しないのです。つまり、AI と人間のコミュニケーションにはギャップが生じます。
このギャップの存在を知り、プロンプト思考で埋めることができる人こそが、本当に生産性を上げられる人なのです。
「プロンプト思考」は小学生でも分かる・使える
ここまで読んで、「プロンプト思考」についてどのような印象を持ちましたか?難しくて自分には理解できない、使いこなせそうにない、と思われたかもしれません。でも実は、小学生でも使えるとても簡単なものなのです。そして、皆さんも無意識のうちに使っている可能性があります。
例えば、今晩の夕食にはカレーを作るので、家族に買い物をお願いするとします。できれば、「カレーの材料を買ってきて」と一言で済ませたいところですが、相手がもし、カレーの材料を知らなかったら?もしくは、カレーと聞いてキーマカレーを思い浮かべるかもしれません。そうなると、カレーの材料として何が届くのか不安になってきますよね。こういうとき(ツーカーの仲ではないとき)私たちは、カレーとは何か?カレーの材料とは何か?じゃがいもは何個必要なのか?といったことを事細かに伝えることになります。相手に合わせて伝える内容の丁寧さを変えることは、プロンプト思考そのものです。
どうでしょう?プロンプト思考は何も難しいものではなく、私たちにとって身近なものだということが分かって頂けたでしょうか。
AI 時代に人と差をつけるなら「プロンプト思考」
AI を使いこなすのに「プロンプト思考」が効果的だとしても、毎回こんな丁寧なやりとりをしなければならないのは面倒ですよね。知った仲であれば、阿吽の呼吸で伝わることも、全て言語化しなければいけないなんて。
でも待ってください。この面倒なことをやれるかどうか、こそが重要なのです。既にスマホを使う生活が考えられなくなったように、私たちの誰もが AI を使いこなす時代も、あっという間にくると思います。つまり、今はリテラシーの差が大きく見えても、いずれそうではなくなるということです。しかも、スマホの普及とは比べものにならないくらいあっという間に。
そんな AI 時代に人と「差」をつけたいなら、「プロンプト思考」を習得しましょう。多くの人は、面倒なことを避けたがります。簡単に問題を解決できる How に飛びつく人たちは、なぜそのプロンプトが良いのか考えず、ただ真似をするだけです。だから、似たようなシチュエーションに陥ったときに、解決策を自分で考えることができません。でも「プロンプト思考」を知っていれば、いろんな場面で応用が効くのです。
だから、「プロンプト思考」は AI 時代に人と差別化をはかるために重要なのです。
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この記事を書いた人

- 元SEのITコンサル
- (おがさわらのりこ)都内ITベンチャー企業で働くITコンサルタント。20年以上のSEの経験を持つ。立命館大学理工学部情報学科卒。フルタイムの仕事と子育てを両立させながら、KIT虎ノ門大学院でビジネスを学び2016年に修了。2023年より、武蔵野大学で非常勤講師も務める。