Interview
インタビュー

土屋太鳳、玉木宏らも監督に挑戦。別所哲也が見出したショートフィルムの可能性と未来とは。

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俳優・別所哲也さんが主宰する映画祭『ショートショート フィルムフェスティバル &アジア(SSFF & ASIA)』。ショートフィルムにかける思いや挑戦について伺いました。

プロフィール

俳優別所哲也

1965年静岡県生まれ。1987年に慶應大学在学中、ミュージカル「ファンタスティックス」で俳優デビューし、1990年に日米合作映画「クライシス2050」でハリウッドデビュー。1999年より、日本発の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」を設立。2009年観光庁「VISIT JAPAN 大使」に任命され、文化庁文化発信部門長官表彰を受賞した。映画・TV・舞台・ラジオ等で幅広く活躍している。

6月21日から音楽劇『ある馬の物語』に出演する別所哲也さんが、自身が設立し、代表を務めている国際短編映画祭『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)』25周年について語ってくれました。

別所哲也が主宰する映画祭は時代を移す鏡

――別所さんが設立し、代表を務めている国際短編映画祭『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)』が25周年を迎えました。

別所:SSFFは25周年、SSFF ASIAが20年。2つの姉妹映画祭がアニバーサリーイヤーを迎えました。たくさんの人に支えていただいて迎えた節目。次の25年に向けた、新しいスタートだと思って頑張っていきたいです。

――慶応義塾大学に進学後、俳優の中村雅俊さんも所属した英会話サークル「ESS」で演技に出合われ、在学中にミュージカル「ファンタスティックス」で役者として始動。1990年に日米合作映画「クライシス2050」でハリウッドデビューされました。ショートフィルム作品との出合いは、日米で経験を積まれた30代のときだったそうですね。

別所:ロサンゼルスで過ごしていたときに、友人に「ショートフィルムを観に行こう」と誘われました。最初はあまり気乗りしませんでしたが、見たら面白くて……。

――短編作品のフェスティバルを開こうと思わせたほど、心を掴まれたのはなぜだったのでしょうか。

別所:時間は短くても、クリエーターたちが、さまざまなチャレンジをしていることを感じました。興行を目的としている長編映画は多額の資金やスタッフが必要ですが、ショートフィルムはそうではない。でも億単位の資金がなくても素晴らしい作品を生むことはできるんです。しがらみがないショートフィルムは、着想から公開までの時間が短いため、僕たちが今抱えている問題が作品の中に盛り込まれていることも多い。今年は戦禍のウクライナを背景にした作品、SDG’sやダイバーシティなどをテーマにした作品が多く集まりました。ショートフィルムは「時代を映す鏡」だと感じています。

別所哲也が感じた映画の新しい潮流と最先端の手法

――今年は、世界120カ国以上の国と地域から、5215点以上の応募がありました。スマートフォンで撮影をした作品を集めた部門など、新しいカテゴリーも生まれています。

別所:発明王のエジソンが生んだと言われる映画は、常にテクノロジーと共にあります。スマートフォンや、ドローン、VRなど新しい技術を活用した作品など、最先端の手法を駆使して生まれた作品を楽しむことができることも魅力ですね。

――4部門ある「オフィシャルコンペティション」は、優秀賞が翌年の米アカデミー賞短編実写部門にノミネートされる権利を得るなど、映画祭は大きな影響力を持つようになりました。同部門の1つ「ジャパンコンペティション」は現役の俳優が監督を務めるユニークな企画です。今年は土屋太鳳さん、玉木宏さんがメガホンを取りました。

別所:今年で3度目の企画です。僕ら俳優は台本など与えられた情報から、演じるキャラクターを造形していくのですが、監督として映像作品を生み出していくことは、演技と異なる目線が必要。「これまでにない経験ができた」と言われたときは、うれしかったですね。撮られる側の心情が分かる人が撮影した映像は、演者と監督の境がシームレスになっていると感じます。潤沢な資金がないショートフィルムは、監督も作品に出演していたり、音楽も自分たちで作っていることが少なくありません。そうやって色々な経験をすることは、作品が磨かれていく一因になると感じています。

俳優でありながら映画監督にも初めて挑戦した高良健吾さん、玉木宏さん、中川大志さん、野村萬斎さんがそろって登壇(写真/SSFF & ASIA提供)

別所哲也が「情熱が手繰り寄せる奇跡がある」と感じる理由

――性別や国籍、ジャンルも越えた映画祭は表現者にとって刺激的な場になっています。表現者たちに機会を提供している一方で別所さんは、役者としても常に挑戦をし続けています。6月21日からは、音楽劇『ある馬の物語』に出演されます。

別所:3年前に上演される予定でしたが、コロナ禍で無期延期になっていました。僕は白井晃さんの演出を受けるのは初めて。(出演者が集まる)台本読みも始め、ポスター撮影なども終えていたので、とても残念に思っていたのですが、全キャストが3年前と同じ形で幕開けを迎えることができそうです。奇跡的なことですが、主演の成河(そんは)くんと「これは奇跡ではなくて、白井さんや僕らの情熱が手繰り寄せたことなんだと思って頑張ろう」と話し合いました。

――レフ・トルストイの原作をもとにした舞台では、成河さん演じる馬のホルストメールの才能を見い出す、セルプホフスコイ公爵を演じます。

別所:人間の業について描かれた作品。多くの物を持つことが良いとされていた時代から、共感やシェアすることを重視している現代。作品自体は、農奴解放令の後に生まれたものですが、現代と通じるところも多くあるので、ぜひ劇場に足を運んでいただきたいです。

取材・執筆/翡翠
編集/MARU

『ある馬の物語』は世田谷パブリックシアターにて6月21日より上映
(宣伝美術:秋澤一彰宣伝写真:山崎伸康)

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