先輩アーティストに聞く「趣味と副業の両立方法」趣味で始めたシュガーアート、副業でも世界一に輝けたのは仕事とアーティスト活動の両立。平日夜と土日だけで楽しく年間100万円〈シュガーアーティスト・玉川玲さん/第1話〉
趣味が高じて仕事になったというケースは多い。シュガーアートに見せられ、たった7年で世界一になった玉川玲さんの「好きだから仕事になる」副業スタイルとは?
プロフィール
シュガーアーティスト玉川玲
砂糖に卵白などを混ぜた生地で自由自在に美しいお菓子を作り上げるシュガーアート。英国ヴィクトリア時代に起源を持つ伝統の世界で、世界を驚かせ続けている日本人女性がいます。誰もまねできない繊細な技術を武器に、最高の権威を持つ「ニューヨークケーキショー」や「ブリティッシュ・シュガークラフトギルド」で世界の並み居る強豪を退け、次々に金賞を授賞してきた玉川玲さん(41)は、大手通信会社に勤める会社員の顔も持ちます。副業を推奨する会社の制度を活用し、世界を股にかけて活躍する玉川さんに話を聞きました。独占インタビューの前編です。
目次
誰もやらなかったことをやったら……
一般的なアイシングクッキーなどとはまったく世界が違う繊細さに驚きました。
ありがとうございます。たとえば私の代表作と言っていただけるレース仕立てのハイヒールは、つま先からかかとまでレース地に見える生地の一本一本をすべてお砂糖のペーストを細く細く絞り出して作りあげています。あまりに細かく膨大な作業だったので世界中の誰もやったことがなかったということで、コンテストでも審査員の方に驚いていただきました。
審査員から思わず跳び出した「Crazy!」
美女と野獣の作品もすてきです。
ニューヨークケーキショーで優勝した「Beauty and Beast」ですね。ガラスのドームに包まれたバラの花がモチーフですが、ガラスの部分は2cm×3cmの四角い枠に、約40本もの細い筋を入れてガラスの透明感を表現しました。
40本!! 1mmの幅に2本ぐらいという極細の筋で、人間業とは思えません。
そうですね、私自身も二度とやりたくないと思うほどの細かい作業でした。ニューヨークで見た審査員のコメントの一言目が「Crazy!」でしたから(笑)。こういう手先の細かさが求められる作業と、最後までやり遂げる根性が私の武器だと思っています。
シュガーアートをはじめて7年で世界一
もっと驚いたのは、シュガーアートを始めてわずか6年で日本一、その翌年には世界一というとんでもない経歴です。
美容院でたまたま見た雑誌に載っていた、芸能人のウエディングケーキに飾られていたシュガーアートにあこがれたのがきっかけで、2007年にシュガーアートの教室に通い始めました。3年目の2010年に教室内の展示会に出品したところ、銅賞をいただきました。賞を狙えるという意識がなくて出品していたので、このときに「もっとこうやれば金賞を狙えたのかな?」と思うと同時に、長年教室に通っている方々に交じっての授賞だったので、「これはもしかして、お仕事にできるかも」と感じたのを覚えています。
海外への出品はどんなきっかけだったのですか?
転機になったのは、教室の先生に勧められて2012年にイギリスで開かれた世界大会でした。このときはお花を作る部門で8~9番目にあたる「佳作」という残念な結果だったのですが、審査員の評価基準がすごく参考になって。「WOW!がない」「技術の多彩さが足りない」「色みや形のバラエティーが乏しい」といったコメントから、世界大会で評価を得るためのポイントを学ぶことができました。
無意識に手がシュガーアートを作る
初めてシュガーアートに触れたときから、周囲と自分は違うという感覚はありましたか?
教室では、5~6人で一緒に授業を受けて、先生の見本と同じものを作るのですが、正直なところ、みんなより先に作り終わってしまって。こっそりと自分の好きなもの、作りたいものを作っていたので、上達が早かったのかもしれません。自宅でもやるようになってからは、作っているのがとにかく好きで、仕事や食事、お風呂、睡眠以外の時間はほとんど、何をしているときでも手は常にシュガーアートを作っているという生活ですね。
以前から手先が器用だったり、芸術のセンスがあったりしたのでしょうか。
いえいえ、中学時代に美術部に所属はしていましたが、誰かに絵や作品を褒められたといった経験はまったくありませんでした。お菓子作りも、母が好きだったので家で手伝ったことがある程度で……。手先については、学生時代にネイルチップを作って友だちにプレゼントしていたことがあります。細かな作業は、このころから得意だったかも知れませんが、人から褒められたのはシュガーアートが唯一と言っていいほどです。そう考えると私、シュガーアートに出会えてよかったですよね。
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この記事を書いた人
- 新聞社の経済記者や週刊誌の副編集長をやっていました。強み:好き嫌いがありません。弱み:節操がありません。