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あの人に聞きたい I am的「好きなことを仕事にし続けるために必要な5つのこと」難しい言葉が「俳優脳」を鍛えた!? 俳優・松岡広大の10年

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デビューから10周年を迎えた俳優松岡広大さんのインタビュー。I am 的「仕事を好きでい続けられる5つの理由」も伺いました。

プロフィール

俳優松岡広大

1997年8月9日、東京都生まれ。2009年にオーディションに合格し、アミューズに所属。2012年に、俳優デビュー。2015年に出演したライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」では、うずまきナルト役で初主演を果たした。俳優の中尾暢樹とダブル主演を務めるドラマ「壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている」(ABCテレビ、毎週月曜)が放送中。ドラマでは、同人作家・猫屋敷守を熱演している。

2022年3月に俳優デビュー10周年を迎えた松岡広大さん。
8月9日に迎えた25歳の誕生日に写真集「松岡広大 10th ANNIVERSARY BOOK -再会-」を出版。
松岡さんと共に旅をしているような感覚になれる写真たちは西表島で取り下ろされたもの。
写真だけでなく、初舞台で共演した小関裕太さんや溝口琢矢さん、高校の同級生でもある北村匠海さんや矢部昌暉さんとの鼎談を掲載。ソロインタビューもあり、読みごたえのある1冊に。
松岡さんに写真集への思いと、好きを仕事にするをテーマにI  am的「好きなことを仕事にし続けるために必要な5つのこと」について聞きました。

松岡広大さんに聞いた「仕事を好きでい続けられる5つの理由」

辞めたくても辞められなかった理由

俳優の仕事を10年間続けることが出来たのは、「お前は大丈夫だよ」と言ってくれる人が側にいたから。逆に言えば、辞められなかったとも言えます。16歳くらいのときに「辞めちゃうんじゃないかな」と思ったことがあったのですが、周囲が「背中を押す」という延命処置をしてくれました。

10年を支えてくれたあの人のあの言葉

15歳のときに、岸谷五朗さん演出の「FROGS」で初舞台を踏みました。僕が楽屋に一番乗りで入ったら、後から入られた五朗さんが「広大、早いね」と。「本番のために十分ウォーミングアップしたいんです」と伝えたら、吾郎さんが「お前は、正しい俳優のやり方を進んでいるよ」って。まだ未知数の僕に、「お前は間違っていないんだよ」ということを伝えてくれたんです。この言葉は10年間の支えになりました。

俳優としての「考える力」の鍛え方

僕の周りには小難しい話をする人が多かったんです。難しい言葉を平易な言葉で言う人もいれば、難しいまま伝えて下さる人もいたから、考える力を養うことができて、「まず言葉を知って、概念を知る」ということが自然と身につきました。芝居は概念の集まりのようなものだとも言えます。いまの自分に繋がっていると感謝しています。

好きを仕事にしたいなら「起きている現実と向き合う」

好きを仕事にしたいと相談されたら、「今目の前で起きている現実について、まず向き合うこと」を提案します。傷ついていたとしても、1回自分の傷を自分で見ること。壁にぶち当たっていたら「ぶち当たったままでいいし、じたばたしても良いんだよ」って伝えたいです。じたばたするエネルギーがなくなったら、内省して、諦観することを、自分に与えてやることが大事だなと思います。

抱負は持たない、でもモチベーションの軸は手放さない

僕は抱負を持たない主義なんですけど、次の10年を続けていくことを考えると、業界もすごく変わっていると思います。何が重宝されているのか分からない。だから、「自分がやりたいことは何なのか」を流されずに考えたいし、何より、自分のモチベーションの軸を他人に渡さないことを大切にしたいです。

10年の歩みが1冊に

〈インタビュー〉「松岡広大 10th ANNIVERSARY BOOK -再会-」出版

「恐ろしいな、自分の仕事はこれでいいのかな」と悩んだときに救ってくれた1冊の本

「松岡広大 10th ANNIVERSARY BOOK -再会-」に収められた写真の一部。
西表島で撮り下ろされた写真は、松岡さんと一緒に旅をしているような感覚になれる

ーーただの写真集ではなく鼎談やインタビューが入っていて読み応えたっぷりでした。

松岡:俳優として活動をして10年の間、自分の足跡を振り返るということをしていなかったので、とても良い機会になりました。右から開いていくと、西表島で撮影したいまの僕をたどることが出来る。左から開いていくと、これまでの仕事の経歴を振り返る内容になっています。

ーー特に気に入っている写真は?

松岡:スタジオで撮影した1枚です。力を抜いてレンズを見つめていて、ありのままの僕がそこにいます。

――共演者ら総勢29名から寄せられた文章には皆さんからの愛が溢れていました。中でも2020年に舞台「ねじまき鳥クロニクル」で共演された成河(ソンハ)さんは大切な存在なのですね。

松岡:はい。成河さんに出会ったのは、高校2年生のときに舞台で共演させていただいて、初めてお目にかかったとき、「人一人のエネルギーじゃない」と思いました。全ての動きにスキがなくて、口にされた言葉も肉声で、脈を感じる鮮烈なものでした。「言葉を発する」というのはこういうことなのか、と感じ、そこから演劇の勉強を始めたので、僕にとってものすごく大きな存在です。

――同じ高校に通っていた北村さんたちとの鼎談の中では「消費をされている感覚がある」と話されていました。

松岡:「消費されている」という感覚が生まれたのは、18歳くらいのときです。名前だけが先行してしまうとか、取材のときに主語だけが凄く大きくなって「僕の気持ちが介在していない」と感じたことで、「恐ろしいな、自分の仕事はこれでいいのかな」と感じたんです。それで言葉とか、人の心理が気になるようになりました。そこからうまく言えば、よく考えるようになったし、考えすぎるドツボにはまったっていう……。

――考え過ぎているから、毎日の睡眠が3時間とも書いてありました。

松岡:色々なことに疑問を持ち始めたのは、それまでの自分のやり方がどこかで通用しなくなったと感じたことも理由のひとつです。どこに自分の関心があるのかちゃんと見ていなかったせいで、自分がすごくブレていたんだと思います。周囲に目を向けたときに、自分の世界の狭さを思い知らされたんです。

――18歳のころに焦りを感じられた……と。とても充実したお仕事をなさっているように見えていたので驚きました。

松岡:焦燥感がありました。仕事のことをリセットをしたし、学校には同業の同級生たちがいて……。

――とても苦しい時期を過ごされたときに自分を開放してくれる存在はありましたか?

松岡:そのときに出合ったのが小説や純文学です。当時ビビっと来たのは、太宰治です。特に『人間失格』は、その当時の世の中のあらゆる痛みを書き綴ったものだと思いました。それまで僕は、言語化出来ない苦しみを抱えていたけれど、本にはそれが言語化されていたのでこの痛みを感じていることは、正常な状態なんだ」と思えて。それで救われたのだと思います。

「松岡広大 10th ANNIVERSARY BOOK -再会-」には写真だけでなく鼎談やインタビューを多数掲載。
(左)初共演した舞台「FROGS」(2013年)の稽古場で出会いを振り返った。(左から)小関裕太、松岡、溝口琢矢。
(右)舞台「ねじまき鳥クロニクル」(2020年)で共演した成河からのコメントが寄せられたページ

――たくさんの書籍や表現に触れることは、松岡さんにどのような影響がありましたか。

松岡:言葉は時代によって変化して行くものだと分かっているけれど、ニュアンスとかボキャブラリーとか残すべきと思うものがたくさんある。俳優が言葉を発したときに、実感が持てないことが一番怖いと僕は思っています。言葉に思いを乗せたい。言葉そのものが持つ、色味や重さを、内実伴って表現したいという思いはずっとあります。

――俳優の中尾暢樹さんとダブル主演を務めているドラマ「壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている」(ABCテレビ、毎週月曜)が話題です。BLコミックが原作のドラマでは、同人作家・猫屋敷守を演じられていますね。

松岡:性別に限らず、マジョリティーが正常でマイノリティーは異常という感覚は、僕自身も違和を感じる部分です。この作品をやることが、エクスキューズになることとは違うと思っています。ただ、性的マイノリティーと言われる人たちは、自分のセクシャリティーを明かしたときに「誰もいなくなってしまうかも」という思いを背負っている。僕自身がそういった状態で芝居をしていきたいと思っています。


取材・文・写真/翡翠
編集/MARU

写真集

「松岡広大 10th ANNIVERSARY BOOK -再会-」
価格:3,800円(税込)
仕様:A4サイズ 表紙+100ページ
素材:紙
発行元:株式会社アミューズ
公式サイト


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