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超高額! 現代アート作家、ダミアン・ハーストに学ぶ付加価値の付け方。ちょっと変わった現代アート入門

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現代アートはビジネスマンの教養として必須科目とされています。でも「現代アートの見方がわからない」「作品のどこが優れているのかがわからない」という人のために、『君はリンゴで世界を驚かせるだろう 現代アートの巨匠たちに学ぶビ […]

現代アートはビジネスマンの教養として必須科目とされています。でも「現代アートの見方がわからない」「作品のどこが優れているのかがわからない」という人のために、『君はリンゴで世界を驚かせるだろう 現代アートの巨匠たちに学ぶビジネスの黄金法則』(飛鳥新社)の著者、ニューヨークで活躍するアートディレクターのARISAさんに、ビジネスマンに役立つ現代アート入門を聞きました。

頭蓋骨にダイヤモンド8601個で120億円

ダミアン・ハースト。彼の名前を知らない人は多いかもしれませんが、作品は見たことあるという人は多いかもしれません。頭蓋骨に8601個のダイヤモンドをあしらった《神の愛のために》(2007年)は当時、120億円で落札されました。

桁違いの値がつくダミアン・ハーストに学べる法則はあるのか、ARISAさんに聞きました。

ハーストに学ぶ3つの付加価値

ダミアン・ハーストは、現代アートの世界で「時の人」となっています。そして、一言で言うと「高値。しかも非常に高値です。数百億円クラスです。

ハーストが今最も高値の現代アーティストとして活躍しているのは、3つの付加価値をつけたからです。

  • 死というタブーをアートに昇華した
  • ギャラリーに所属しなかった
  • 一見して理解しにくい作品名をつけた

これらの共通点は「新しさ」の一点につきます。

生と死をお金に変えるハースト

ハーストの作品の特徴は一言でいうと、生と死をお金に変えるというものです。

120億円という落札価格が話題になった《神の愛のために》(2007年)は、頭蓋骨という死の象徴に8601個のダイヤを散りばめた作品です。

ハーストの代表作ともいえるサメをホルマリン漬けにした作品があります。サメは死んでいるのですが、見た目から強い恐怖を感じさせる作品に仕上がっています。

普段、人があまり手を触れないような、あまり見たくないようなものを作品にしています。ゆえに注目もされますが、アンチも多い。

《一千年》という作品は、穴の空いたガラス板でガラスケースの空間を仕切り、片方にウジ虫を培養する箱を、もう片方には牛の頭部と殺虫灯を配置し、ウジ虫が羽化して死骸となるまでの生命の循環を表現しています。

見たくないって思いますよね。ハーストはこの一連の動物の死を扱った作品で、動物愛護団体からも訴えられています。

余談になりますが有田焼の有名な窯元にお話を伺ったことがあります。その窯元で一番売れているのは、なんと骨壷だそうです。

自分で売って、自分で稼ぐ

ハーストはギャラリーに所属していません。通通常、現代アーティストはギャラリーに所属し、ギャラリストがコレクターに作品を売るという共存関係を持っています。当然マージンは支払いますが、アーティストはギャラリーが作品を売ってくれるので、作品作りに専念できると言うメリットがあります。

でも、ハーストは自分自身でコレクターを見つけて、売るということをしています。120億円の作品を作りながら、学生でも買えるような作品を作りたいって言ってみたり。

つまり、彼のやること自体が新しいんです。というか彼自身が新しいとも言えます。

秀逸な作品ネーミング

他にも彼の特徴としては作品のネーミング。哲学的すぎて覚えられない。

サメのホルマリン漬けの作品名は《生者の心における死の物理的不可能性》です。タイトルを見ただけで「なんだろうこれ」となって、作品を見てみたいと思わせる効果があります。

このように、現代アートとはアウトプットされた作品よりも、そのコンセプトや制作の過程そのものが作品になる。コンセプトが作品とも言い換えられます。現代アートは「誰が作ったか」が価値そのものになるといえます。

簡単にまとめると、誰もやらなかった新しいことをハーストはやりました。

現代アートとはコンセプトそのもの

現代アートの代表作ともいえるマルセル・デュシャンの《泉》。これは「レディメイド」といわれる表現方法です。

レディメイドとは、既製品を使ったアート作品のことです。レディメイドも、大量生産された既製品をアートにするというコンセプトです。

マルセル・デュシャンもハーストも前例がないことをやりました。デュシャンは既製品を作品に、ハーストは死を作品に。コンセプトそのものが作品と言えます。

二人に共通するのは「前例がないことをやった」こと。だからこそ、それがコンセプチュアルアートになりうるのです。

写真/編集部

この記事を書いた人

長谷川恵子
長谷川恵子編集長
猫と食べることが大好き。将来は猫カフェを作りたい(本気)。書籍編集者歴が長い。強み:思い付きで行動できる。勝手に人のプロデュースをしたり、コンサルティングをする癖がある。弱み:数字に弱い。おおざっぱなので細かい作業が苦手。

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