キャリアを再構築するための4つの手順。成功の秘訣は、自分と向き合い行動すること
今までの経験や実績をベースに、新しい環境でキャリアを再構築したいと考える人が増えています。「人生100年時代」といわれる今、キャリアの再構築を成功させる5つの手順を紹介します。
目次
キャリアの再構築は30代、40代、50代で異なる
長い期間、ひとつの企業で活躍してきた人にとって、「キャリアの再構築」という言葉は縁遠いと感じるかもしれません。もしくは切実さを感じている人もいるかもしれません。
キャリアの再構築とは、今までの経験や実績をもとに、新しいキャリアを作り上げる試みです。たとえば30代の方なら、キャリアの再構築で今のキャリア幅をどのように広げていくかを考えますし、40~50代の方なら、定年退職後の第二の人生をも見据えたキャリアの再構築が必要です。
自らのキャリアと向き合い、改めて今後を考えようとする人は増えています。しかしいざキャリアの再構築といわれても、何から手をつけていいのかわからないのが現状です。
本記事では、キャリアの再構築に悩む方に向け、失敗しないための5つの手順を紹介します。キャリアの再構築を成功させた3人の事例も紹介しますので、ぜひ今後のキャリアを考える参考にしてください。
キャリアの再構築が注目される2つの理由
キャリアの再構築が注目される背景にある理由は、以下の2つです。
- 働き方の多様化
- 仕事は「人生の一部」とする考え方の浸透
それぞれ解説します。
働き方の多様化
まず挙げられるのは、働き方の多様化です。
感染症の拡大による急速なリモートワークの普及は記憶に新しく、各種オンラインツールの導入により、働く場所だけでなく働き方そのものの選択肢も飛躍的に増えました。
国土交通省によると、令和4年度のテレワーカーは企業雇用型が26.1%、自営業型は26.6%。地域別に比較すると、雇用型・自営業型ともに首都圏の割合が高く、それぞれ雇用型の39.6%、自営型の37.9%が首都圏で働いています。
さらに企業規模が大きくなるほどテレワーカーの割合は増え、通勤時間が長くなるほど高い傾向です。雇用型テレワーカーの54.3%が通勤時間に1時間30分以上必要と答えていることからも、テレワークにより効果的に時間を使おうとする姿勢が伺えます。
参考:国土交通省報道発表資料「テレワーカーの割合は、昨年度からわずかに減少もほぼ同水準を維持!~令和4年度のテレワーク人口実態調査結果を公表します~」
仕事は「人生の一部」とする考え方の浸透
次に挙げられるのが、仕事は「人生の一部」とする考え方の浸透です。
働き方の多様化が進むにつれて、仕事とプライベートの両立を目指すワーク・ライフ・バランスが重視されるようになりました。就職活動や転職活動においても、ワーク・ライフ・バランスは企業を選ぶ重要な基準の1つになっています。
この流れを受け、厚生労働省は労働時間や勤務地、職務内容を限定して選択できる「多様な正社員制度」の普及事業を実施。
自由度の高い働き方で労働者のやりがいや生産性を高め、企業にとっては組織の多様化を目指しています。
「多様な正社員制度」を導入した企業からは、以下の声が寄せられています。
- 育児休業からの復職率がほぼ100%になり、女性の勤続年数の更新につながった。
- 本業以外で得た人脈やスキルアップにより、モチベーションの向上や業務への好影響があった。
このように仕事とプライベートは相互に影響しあい、適切なバランスが求められています。
どちらか一方のみを重視するのではなく、人生を構成する要素の1つとして仕事を考え、自らのキャリアを主体的に選び取る人が増えているのが、キャリアの再構築が注目されている理由です。
参考:厚生労働省「多様な働き方の実現サイト 多様な正社員制度の導入事例」より、株式会社リコーの事例
キャリアの再構築で失敗しない5つの手順
キャリアの再構築を成功させるには、いかに自分の経験や強み・弱みを正確に把握するかが大切です。
キャリアの再構築で失敗しないための、5つの手順を解説します。
経験をリストアップする
はじめに、これまでの経験をリストアップしましょう。
入社から今まで、どの職種でどのような経験を積んできたのかを時系列で書き出します。
育児や介護でブランクがあるなら、その期間も記しましょう。
大切なのは職務内容の充実ではなく、仕事を通じて得たスキルや、感情の振り返りです。
- 経験した業務の内容
- 評価されたときに行った工夫の内容
- 身についたスキル
- 自分の得意や、不得意を感じた業務内容
- 達成感を得た場面
経験を書き出せば自分自身のスキルを客観的に考えられますし、得意や不得意も把握しやすくなります。
特にどのような場面で達成感を得たかは、今後のキャリアの方向性を考えるのに重要です。
プロジェクトに参加し大勢から評価されての達成感と、目の前の1人から感謝されての達成感は、種類も異なります。経験のリストアップを通して、キャリアの再構築で大切にすべきポイントを探りましょう。
収入面の許容範囲を確認する
経験をリストアップしたら、収入面での許容範囲を確認します。
今の仕事をベースに、さらに専門的なスキルやマネジメント能力が必要な職種へステップアップするなら、収入は増えるケースが多いです。しかし異なる業界や職種で一からキャリアの再構築を目指すなら、ある程度の収入減は避けられません。
現在の年収から、何割までの減額なら許容できるのか。またその場合、どこまでなら貯蓄からカバーできそうなのか。キャリアの再構築は収入の増減に直結するため、自分の収入に対する許容範囲は、事前にシミュレーションしておきましょう。
さらに現在のキャリアで役職に就いているのなら、肩書を失うことについても十分な検討が必要です。特に家族と同居しているなら、収入の変化や肩書の変化は自分だけで判断せず、家族への相談も心がけてください。
情熱や「やりがい」を考える
キャリアの再構築を考えるときは、自分がいかに情熱や「やりがい」をもって進められるかも大切です。
今のキャリアを変えてまで、自分は何がしたいのか。どうしたいのか。ポイントを明確にしつつ、情熱を向けられるものや「やりがい」を感じる対象を探りましょう。
たとえばキャリアをいかして大きなプロジェクトに関わりたいのなら、他の企業への転職のほか、在籍企業でのステップアップによってキャリアの再構築が可能です。
一方で、自分の好きなものや興味を通して得られる「やりがい」を追求したいのなら、個人事業主として開業したり、店舗を運営したりするのも手段の1つ。
困難に直面したときの一番の原動力は自分自身の情熱や仕事の「やりがい」であり、キャリアの再構築には新しいことを進めていくエネルギーが欠かせません。
自分の情熱や「やりがい」を大切に、これからのキャリアを考えてください。
周囲の話を聞く
ある程度自分の中でキャリアの方向性と許容範囲が決まったら、身近な人に相談してみましょう。自分では気づけなかった指摘を得られますし、客観的な意見をもとに、これまでの考えも振り返れます。
周囲に知られずにキャリアの再構築を考えたければ、厚生労働省が運営している「マイジョブ・カード」の活用がおすすめです。
ジョブ・カードはキャリアプランや職務経歴書、職業能力証明書をオンラインで作成できる無料ツール。サイト内では自己診断一覧として、自分の興味診断やスキルチェック、価値観診断なども行えます。
自分自身の客観視に役立つので、キャリアの再構築を進めたい方はぜひ試してください。
業界や仕事内容について徹底的に調べる
キャリアの再構築で深めたい職種が決まったら、業界や仕事内容について、徹底的に調べましょう。
キャリアの再構築を実践した人によくある失敗例が、事前の情報不足でイメージと現実に差が生じてしまうケースです。各種キャリア支援の窓口や、実際に業界で働いている人から情報を集め、現実とイメージの差をできるだけなくしておきましょう。
たとえば希望する職種が自分に合うかわからない。もしくは業界の基礎知識を備えたい方には、「職業情報提供サイトjobtag」がおすすめ。
「jobtag」は厚生労働省が運営するサイトで、職業の基礎知識をはじめ、就労する方法や必要な知識・スキルを総合的に紹介。発生するタスクや就業者の平均年収・年齢も職業別にわかりやすく把握できるので、就業後のミスマッチを減らせます。
「職業興味検査」や「価値観検査」は、今の職場でキャリアを発展させたいと考えている方にとっても、状況の棚卸しに役立ちます。キャリアの再構築を考える方は、適切な情報を得るためにぜひ積極的に利用しましょう。
キャリアの再構築に失敗しやすい2つの原因
十分に準備して進めていても、キャリアの再構築に失敗するケースもあります。よくある原因は、次の2つです。
- 自己評価が適切でない
- 一度の失敗で挫折する
自己評価が適切ではない
キャリアの再構築では、新しい環境への期待と不安により、適切な自己評価ができていないケースもあります。「このくらいならやれるだろう」と自信をもちすぎていたり、達成できるか不安で自己評価を低く見積もっていたりすると、いざキャリアをスタートさせたときに現状とのミスマッチが生じます。自分だけで完結せず、周囲へも相談して、できるだけ客観的な評価を得るように努めましょう。
一度の失敗で座せるする
また一度の失敗で挫折してしまうのも、キャリアの再構築でよくあるケースです。特に今までのキャリアから大きく職種を変えた場合、本当は自分に合わなかったのではという不安からその後の判断が消極的になりやすく、途中であきらめてしまう人もいます。
失敗を次のチャレンジにつなげるには、リスクを最小限に抑えましょう。まずは副業やボランティアで挑戦し、自分にあっているか確認するのもおすすめです。自分の適正を見極めながら、着実にキャリアの再構築を進めてください。
【事例紹介】キャリアの再構築を成功させた3人の事例
ここからは、実際にキャリアの再構築を成功させた3人の事例を紹介します。
人脈を仕事につなげた人、自分の好きを追求した人、思いつきを形にした人など、入り口はそれぞれですが、共通するのは自分の情熱や「やりがい」を追求したこと。ぜひキャリアの再構築を考える参考にしてください。
【事例1】人脈を仕事につなげ、売り込まずにキャリアを続ける宮崎晴美さん
外資系テレビ局や、国内大手PR会社、さらにはブライダル会社での広報マネージャーを経て、2013年にフリーランスの広報として独立した宮崎晴美さん。2019年にはSTORIES株式会社を設立し、代表取締役社長を務めています。
宮崎さんが大切にするのは、「人脈」と相手の信頼を得る「即レス」の仕事スタイル。
広報という仕事の軸は貫いたまま、自分のライフスタイルとキャリアプランにあわせて柔軟かつ積極的に行動する宮崎さん。
その姿勢から感じるのは、キャリアの再構築における「自分軸」の大切さです。
【事例2】自分の好きを追求し、42歳でモロッコブランドを立ち上げた大原真樹さん
NHK番組「世界はほしいモノにあふれてる」に出演し、モロッコへの偏愛と新しい働き方が大きな反響を呼んだ大原真樹さん。
脱サラしたきっかけは、「好きじゃないことをやりたくない」から。胸を張って「これが私です」と言える仕事をしたいという思いから、42歳で『ファティマ・モロッコ』を立ち上げます。
軌道に乗るまで3年近くかかりましたが、「自分にとっての優先順位は何か」を常に考え、流行っているからという理由ではなく、自分が好きなことを貫いてお店を続けてきました。
- 好きなことは本当に長続きする
- お金は大切だけれど、お金が先に立ったら続かない
自分の「好き」を貫く大原さんからは、キャリアの再構築に欠かせない、仕事と自分の好きの在り方を考えさせられます。
【事例3】思いつきを形にし、失敗からのブラッシュアップを続けた青山沙織さん
沼津市の地域おこし協力隊への参加をきっかけに、深海魚の通信販売をはじめた青山沙織さん。日本で唯一の深海魚専門の地域おこし協力隊として、深海魚に関係するイベントの企画や、特産品の開発にも関わっています。
青山さんは、起業は「やるかやらないか」の違いであり、アイディアが浮かばなければ知識を持っている人に話を聞きに行くべきだといいます。
- やってみて、駄目ならやめて違うことをやればいい
- どうしてもやりたかったら、もっと頑張る
青山さんの「やるかやらないか」の姿勢や、無理をしてまでやる必要はないという意見は、キャリアの再構築で考えたい姿勢の1つです。
キャリアの再構築を成功させるカギは「自分の気持ちに向き合い行動する」
キャリアの再構築を成功させるポイントは、いたってシンプルです。
- 自分の気持ちに向き合うこと
- 行動すること
事例で紹介した3人は、自分がどのように仕事をしたいかを大切に考え、実現するためにひたすら行動を続けてきました。
人脈をいかす姿勢も、自分の好きを貫く姿勢も、失敗をブラッシュアップしていく姿勢も、すべての経験が新たな実績につながります。
これまでのキャリアを振り返りながら自分の気持ちとスキルを明確にし、キャリアの再構築に臨みましょう。
構成・文/渡邊真理
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この記事を書いた人
- 「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。