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絶対に失敗するカフェの作り方

絶対に失敗するカフェの作り方これをやると廃業する? 小さなカフェや飲食店経営でやってはいけないこと3つ。

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失敗するカフェ 47 メイン

マスター1人で経営する小さなカフェを立ち上げて、長く続けていく方法をお伝えしていくこの連載ですが、驚くほど具体的に、かつ「絶対に失敗する方法」をお伝えしながら、逆張りをすることで成功へと導くメソッドを公開しています。今回は、個人店、マスター1人の小さなカフェを運営する上で経営者として大切な「やってはいけない3つのこと」についてお伝えします。

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珈琲文明店主・赤澤智がお伝えします(写真:珈琲文明提供)

さて連載終了までのカウントダウン、今回も本来なら5話分くらいのモノを超凝縮圧縮でお話ししたいと思います。

カフェ開業で大きな厨房を作ってはいけない

小さなカフェは食器洗浄機を最初に導入するべし

厨房関連で1つだけ言っておきたいことがあります。
それは「食器洗浄機」をぜひとも最初から導入しておいてください。
「食器洗い」という作業は大袈裟じゃなくワンオペ店主にとっての全労働の2割以上は占めていると思います。

もちろん、高い買い物になるかもしれません。ですが、人件費と思えば創業から半年もすれば元はとれて、その後はひたすらにプラスでしかありませんのでぜひとも最初から買っちゃってください。

さらに、食洗機と製氷機は一般家庭用のものではなく業務用がおすすめです。性能が全く違います。

カフェの冷蔵庫は「作業台付きコールドテーブル」

冷蔵庫に関しては生鮮食料品を頻繁に出し入れするような飲食店ではなくカフェという業態であれば一般家庭用冷蔵庫でもことは足りるとは思うのですが、「作業台付きコールドテーブル(上で作業が出来て下に冷蔵庫がある)」というのを私の店でコックピット達成のためにはどうしても必要だったので私のお店では冷蔵庫も業務用です。

小さなカフェの厨房は小さなコックピットだと心得よ

駆け足盛りだくさんの最終回までのスパートなので、ここでいきなり「厨房まわり」のことに話が飛びます。
厨房というのは飲食店舗の心臓部です。
だからこそ、話したいことは山ほどありますが、ひとつだけキーワードを挙げるとするならそれはズバリ「厨房はコックピットであれ」ということです。

大きくて立派な厨房を作りたくなる気持ちもわかりますが、小規模個人店かつワンオペで重要なのは「全ての作業が1~2歩だけ動けば足りて、1~2歩動けばあらゆる物に手が届く」という状態が理想なのです。

コックピットはパイロットが座ったまま全て操縦できる装備がされてますよね?
大きければいいわけじゃなく「厨房=コックピット」ということだけまずは頭に入れておいてください。

カフェ立ち上げ前に顧客を生み出さなければならない

カフェの顧客は開店前から作っておく

まずは「開店する前から顧客を作っておく」という話です。
この顧客というのは、身内や友人知人を除きます。

「そんなことどうやって出来るの?」って言う人は「生まれも育ちも無関係で友人知人誰もいなかった横浜に店を出した」私がしてきた話を聞く価値があるかもしれません。

まず、私が行ったのは、創業前まだ物件も決まる前から「開業までのあれやこれやをブログで実況中継した」ということです。

今でこそ「プロセスエコノミー」なる名称までついているこの手法は、商品や作品、店舗などを生み出すプロセスを伝えることで、そのストーリーごと利益につなげる方法で、今は多くの人がやっていますが、間違いなく、効果はあると思います。

カフェを立ち上げるまでのストーリーを書いて伝える

具体的にどんな内容を書いたのかは私が主宰する「カフェラボ」内の「文明ロード」というものが全文無料で読めますのでぜひそちらを読んでみてください。

「でも文章書くの、めんどくさいんだよなぁ」という人にはこれから述べることだけでもよいので実践してみてください。それは「物件が決まったらそこから内外装工事で店舗が出来上がるまでの過程の写真をたくさん撮って自らのSNS(今ならInstagramやX等ですかね)で毎日のようにアップしていくことです。

え? 「SNSも文章じゃないか。めんどくさい」ですか?

いえいえ、お店が出来ていく様子を画像に収めて発信するだけで、大丈夫です。ここはぜひ「やる」と決めて、とにかくアップしてみてください。

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実際に珈琲文明店主・赤澤智が発信していたお店ができていく過程の写真(写真:珈琲文明提供)

カフェ開店前のSNS発信はいずれお客さんから喜ばれる

開店前の様子を逐一発信していくことで、「開店前からファンを獲得する」ことは可能ですが、実はさらにいいことが起こります。

開店後、結構な年数(5年や10年)が経って常連さんになった方が、SNSで開店前の様子を見て「へぇ~ここは昔こうなってたんだ!」「ああ、こうやってこの店はできたんだ」と胸熱になります。そう、お店への愛着を確固たるものにしてくれるという効果もあるのです。例えるなら、好きになった役者さんの下積み時代を調べたり、過去の出演作品を見て情報通になっていくような感じでしょうか。

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内装時、丸山珈琲の丸山健太郎さんが尋ねてきてくださった時の写真を発信(写真提供:珈琲文明)

何よりこれからお店を何十年も続けて行こうと思っているこの連載の読者さんは、「自分のお店の歴史を写真で残しておきたい」と思うのではないでしょうか。 思いますよね絶対!

小さなカフェはイベント三昧になってはいけない

小さなカフェでは中途半端なイベントを開催しない

さて、次は小さなカフェの教訓についてですが、「イベント頼みの店にしてはいけない」をぜひ心得て、実践してください。

斜陽カフェ店舗が辿る道として、通常営業の集客が芳しくないための苦肉の策として素人に毛が生えた程度の人の作品を展示したり演奏したりする場を多くしていく傾向があります。「誰それ(アマチュア)写真展」や「誰それ絵画展」「誰それ手芸作品店」「誰それライブ演奏会」などは、ごく普通のコーヒーを飲みにきたお客さんの客足はさらに鈍くなります。こうなるともう、作品出店者やライブ出演者のマンパワーに頼らざるを得ず、「そもそもこのお店は何のお店なの?」という負のスパイラルに陥ります。

「そうは言っても普通に営業していても、客が来ないんだから背に腹は代えられないんだよ!」という待ったなしの状態の店舗なら致し方ないとは思います。

しかし、少なくともまだどうなるかわからない、立ち上げたばかりのカフェや喫茶店が率先してイベントを仕掛けていくのは自身の店舗のブランディングを弱めていく一方です。だからこそ、イベント事は極力控えたほうが賢明です。

カフェでごく稀に開催するイベントは意味のあるものだけ

珈琲文明はロックミュージシャンである私が営む店ですから、店の立ち上げを聞いた知人友人からは当然のごとく「ライブカフェをやるの?」と訊かれたものですが、そういう業態にしてしまうとオーナーとして「集客力のある演者こそが正義」みたいなことになるだろうと容易に想像がつきました。私はそこに納得できなかったので、考えに考えた末にロックのニオイを敢えて消し、チェロが流れるレトロクラシカルなカフェにしました。

そんな私が手掛けている唯一のイベントとして「つわものたちの夜」という不定期(本当にごく稀にしかやらない)ライブイベントがあります。一般応募された中から私がとにかく「これは絶対凄い!」と思った人にのみオファーをし、その際にその人の集客力等は一切不要のイベントを開催するのです。つまり、演奏するのは、私自身が絶対に見たい、という演者さんだけ。1人もお客さんが来なくても、その人のパフォーマンスを特等席で見られるというメリットがあるので全然いいのですが、結果的にそのイベントは常に店内超満員になっていますし、開催を楽しみにされているお客さんもいます。

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珈琲文明が開催している唯一のイベント。「つわものたちの夜」(写真提供:珈琲文明)

ただし、私がそこまでして演奏して欲しい方なんて、滅多にいるものではないため、開催は平均すると2年に1度くらいです。実は、3年前にやったきりでその後はまだ「つわもの」は現れていませんし、現れなくてもこちらは全く構いません。通常営業していたほうが、利益が多いからです。

カフェで自分が本当にやりたいことをやるのはOK

ちなみに、私自身が、珈琲文明のマスター赤澤智としてではなく、ミュージシャン「あかざわさとる」として毎月第四金曜日の夜から弾き語りをしています。

でも、通常営業の時間ではなく、夜8時から、お店が閉店した後に開催します。入場も無料ですし、途中入出も自由。だからこそ、こちらも自由気ままに本当にやりたい音楽だけをやっています。

無料の中で有料レベルのものを披露している自負もありますし、毎回多くの人が見に来てくれており、創業当初から一度も土がついたことなくやり続けてまさに今月1/26(金)でちょうど200回目の弾き語りとなります。

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毎月第四金曜日の夜に開催している弾き語り(写真提供:珈琲文明)

友人知人でもないごく一般の人の前で演奏し、それを200回も続けてこられていることは音楽人として理想の人生だなぁと思っております。

そう、大好きなカフェを立ち上げて、お客様に満足してもらい、自分の長年の夢も叶える。これこそカフェの理想の運営ですが、やり方を間違えると、ほとんど、いや絶対に失敗するのです。だからこそ、この連載のタイトルのように「絶対に失敗する」の逆をやっていってほしいのです。

私にとって珈琲文明は、何のしがらみもなく純粋な意味での音楽が出来る喜びをもたらしてくれる、適切で正しい自分の居場所です。遥か昔からずっとやりたかった。そう、これがやりたかった。そんな城(珈琲文明)があり私は幸せです。皆さんも素敵な城を作ってくださいね。

珈琲文明店主・赤澤智でした。

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