Interview
インタビュー

《咲妃みゆの仕事論》宝塚歌劇団時代に培った「自己プロデュース力」を生かしながら、力を抜いて自然体であることを重要視する理由。

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2023年7月9日(日)から開催される新劇場「THEATER MILANO-Za」オープニングシリーズ『少女都市からの呼び声』に出演する咲妃みゆさんが、仕事への想いについて語ってくれました。

宝塚歌劇団を離れて舞台や映像、歌など幅広いジャンルで活躍している咲妃みゆさん。新たな挑戦を重ねる咲妃さんが未来の自分を輝かせるために行なっていること、好きなことを好きでい続けるために大切にしていることなどを伺いました。

徹底的をやめると新しい視点が手に入る

歌劇団時代、自己プロデュース能力を徹底的に鍛えられました。自分のウィークポイントと向き合い、それを強みにできるように。演者として生き切ることができるよう、役作りも徹底していました。歌劇団を離れて、ミュージカルなどの現場で経験を積ませていただくようになってからは、歌劇団特有のクセが自分に染みついていることを感じて、それを抜いていく作業にエネルギーを使った時期もありました。こうでなければという凝り固まった思いは、体も心もガチガチにしてしまう。徹底的を追求していた私にとっては、言うは易しでとても難しいことなのですが、常に呼吸をして前に進めるように、力を抜いて自然体でありたい。こうあらねばという思いを手放すことによって、新しい視点に気付くことも多いと思います。

自分の感覚だけに頼らず周囲の目や声を大切にする

役をいただいて舞台に立つときは、準備に準備を重ねて本番を迎えるのですが、「力が抜けた瞬間がいい」と言っていただくことが多くありました。最初は自分では物足りないように感じていたのですが、自分の体感と周囲の感想に誤差があることに気が付いて、自分の感覚だけに頼ってはいけないと考えるようになりました。表現は自己満足ではいけない。周囲の人が「いい」と言って下さって初めて、場をいただくことができるので周りの方の目や声を大切にしたいと思っています。

人の想像する先を見せる

「同じ役者とは思えない」と言われることが、何よりの誉め言葉だと感じます。「咲妃みゆは、こういう役者だよね」と言っていただいたときは「ふむふむ」と受け止めますが、みなさんが想像する先を見せたい。これは私が仕事をする上で、続ける上で大切にしていることです。

原動力は「野球」 オリックスを箱推し

私にとって大変重要な原動力は野球観戦です。2年ほど前から、オリックスバファローズを応援するようになり、野球の面白さと、応援する喜びを知りました。いまでは大切な生きがいです。野球に目を向けるきっかけは、ストレートが美しいピッチャーの山本由伸選手でした。ご出身は岡山県なのですが、野球に専念するために、宮崎県にある都城高等学校に進学され、そこからオリックスに入団されました。私は宮崎県出身なので、それを知ったときにとても親近感が湧きました。私のような素人でも理解できる素晴らしいピッチングに魅了されています。試合を観るときは、球団を率いている中嶋聡監督のタオルを掲げて応援しています。いまの言葉で言うと“箱推し”しております。

WBCでも気づかされた 「心をひとつに」

「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」では普段はライバルチームである選手が、同じ目標に向かって、優勝を達成する姿に心うたれました。感動以外の何物でもありませんでした。大会が開催されていたとき、私はミュージカル『マチルダ』のお稽古中でした。お稽古にはもちろん集中していましたが、お休みの時間になると、試合経過を見守りました。日本中が選手を応援している空気に、勇気をもらいました。選手たちが心を一つにして、果敢に挑戦していく姿は、私の仕事にも通ずると感じました。思いを一つにして、舞台を作り上げていく。選手の奮闘は、教訓になることばかりでした。

やりたいこととはかけ離れていることでも経験してみる

教師だった両親には「自然に触れさせる」「芸術に触れさせる」「礼儀作法を身につけさせる」「それ以外は好きなことをやらせる」という4つの教育方針がありました。実家がある宮崎には自然がたくさんあり、幼い頃から自然にたくさん触れて育ちました。舞台で森などの設定があったときには、幼少期に経験した「香りの記憶」などが表現をするときの頼りになっています。舞台という作り上げられた世界で、自分が何を表現できるのか。日常、経験してきたことが表現につながると感じるので、自分がやりたいこととはかけ離れているように感じることでも、経験だと思って覗いてみることは未来の自分の役に立つと思います。

好きと思う感覚を研ぎ澄ませておく

私は野球とおいしい食べ物をいただくことが大好きです。野球でいいプレーがあったときは、立ち上がって見ず知らずの人とハイタッチをすることだってあります。うれしい、悲しい。自分の心が動いたとき、どんな行動をするのか常に客観視するようにしています。これは悲しみを表現する場面で、どんな悲しみが合うのかなどにも役立ちます。好きだという気持ちを研ぎ澄ませておくことは、好きなことを持続していくための力になっています。

「こうあらねばという思いを手放すことによって、新しい視点に気付く」

取材・執筆・撮影/翡翠
編集/MARU

公演情報

©️THEATER MILANO-Za オープニングシリーズ COCOON PRODUCTION 2023「少女都市からの呼び声」ビジュアル

THEATER MILANO-Zaオープニングシリーズ/COCOON PRODUCTION 2023 
『少女都市からの呼び声』 
【作】 唐十郎
【演出】 金守珍 
【出演】 安田章大、咲妃みゆ、三宅弘城、桑原裕子、小野ゆり子、細川岳
松田洋治、渡会久美子、藤田佳昭、出口稚子、板倉武志、米良まさひろ、 
宮澤寿、柴野航輝、荒澤守、山﨑真太、紅日毬子、染谷知里、諸治蘭、本間美彩、河西茉祐 
金守珍、肥後克広、六平直政、風間杜夫
【東京公演】2023年7月9日(日)~8月6日(日) THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
【大阪公演】2023年8月15日(火)~22日(火) 東大阪市文化創造館Dream House 大ホール

この記事を書いた人

翡翠
翡翠執筆・写真
音楽や映画、舞台などを中心にインタビュー取材や、レポート執筆をしています。強み:相手の良いところをみつけることができる。弱み:ネガティブなところ。

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