松井玲奈「サイコロで1の目が出た裏には6の目」心の底から出たかった舞台で、人間の心の裏表を見せたい
3月10日からはじまる、劇団☆新感線の最新舞台『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』に出演する役者・松井玲奈さんに、舞台へ懸ける想いを伺いました。
プロフィール
役者・作家松井玲奈
――劇団☆新感線の最新舞台『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』への出演が決まりました。
松井:はい。舞台が好きでこの世界に入ったので、ヒロインに決まったと聞いたときは「夢がかなった」とうれしかったです。
――劇団☆新感線には、どのような印象をお持ちでしたか。
松井:はい。新感線の作品を最初に観たのは、2012年に上演された『シレンとラギ』でした。歌舞伎からインスパイアされたような殺陣、華やかな衣装。一瞬でその魅力のとりこになりました。主演の藤原竜也さんが汗だくになって演技をしている様子を目にして、「私も演技をすることで、自分を解き放ちたい」と感じて。それ以降、尊敬する人は藤原竜也さん。目標としていた舞台は新感線でした。
――新感線の舞台には何度も足を運ばれたと聞きました。特に心を動かされた作品は何でしたか。
松井:俳優として色々なものを吸収したいと、たくさんの舞台を観劇するようになりました。新感線は「シレンとラギ」以降、全ての作品を観ています。どの作品も素晴らしかったですが、『髑髏城の七人』(2017~18年)は驚きの連続でした。
――「花・鳥・風・月・極」の5シーズンを、キャストや演出を変えて上演された作品でしたね。小栗旬さん、阿部サダヲさんなどの演技も素晴らしかったですし、アジア初の360度回転する客席を導入した「IHIステージアラウンド東京」という場所も良かった。動く客席に合わせて、何度も全力疾走していた役者さんから「1公演で6キロ痩せる」と聞いたときは、大変だなと思いましたが、その努力もあり最高のこけら落とし公演になりました。
松井:そうなんですよ。斬新でとても面白かったので、「全部観たい!」と花鳥風月全てコンプリートしました。同じお話でも松山ケンイチさんは、一人で二役を務めていたり少しずつ違って、それぞれの世界観に浸らせていただきました。エネルギッシュな世界に「素敵だな」と憧れる一方で、「沙霧」という役については、同世代の俳優さんが務めていたので、「どうして、私は舞台ではなくて客席にいるんだろう」と強い嫉妬心も生まれました。「心の底から、出たい」と思っていたので、芝居人生の目標がかなったことを幸せに感じています。稽古は始まったばかりですが、ヒロインとしてしっかり務め上げたいです。
――物語は、英国の文豪、ウィリアム・シェイクスピアの「オセロー」が原作です。
松井:はい。青木豪さんが書かれた脚本では、時代は1950年代の関西の港町。任侠の世界に置き換えられています。私が演じる町医者である村坂の娘・モナは、オセロ(三宅健)の妻という役どころです。自分の意思をしっかりと持って生きている女性で、舞台に登場した瞬間から「オセロさん大好き!!」という気持ちを全開で表現している。私自身はモナほど明るくて活発ではないので、その場の空気を変えてしまうほどの情熱を持った女性を演じることで自分を解放できたらと思っています。
――毎回ご自身で舞台メイクをされていますが、モナはどのようなメイクを考えていますか?
松井:メイクさんと相談をしてから決めるのですが、「オセロさん!!」と足元にまとわりつく子犬のように。まん丸い目が印象的なメイクにしたいなと考えています。
――小説家としても活動されていて、「人間の多面性に興味がある」と明かされていましたね。
松井:多面性に興味を持つようになったのは、人前に出る仕事を始めたことがきっかけでした。サイコロで1の目が出た裏には6の目があって。人には色々な側面があるのに、その人の尺度で判断されることに違和感がありました。長く親しくしている友だちなら、お互いに色々な部分を知っているけれど、そこまで親しくない人は、私がしたふとした発言を「そんなこと松井玲奈は言わない」と否定したりもする。私が口にしたことなのに、「私らしくない」と言われることに窮屈さがありました。だから、どうしたら自分を認めてもらえるのかなと考えるようになったんです。
――今回演じるモナは、表向きは明るくて活発ですが、裏側にはどのような思いを秘めていると思いますか。
松井:実は、モナはまだつかめていません。ずっとサイコロが転がっていて、色んな目が出ている状況で、目が回りそうです。関西弁でセリフを言うのもとても難しいですし、これから馴染ませていきたいです。
ヘアメイク/白石久美子
スタイリスト/船橋翔大(DRAGON FRUIT)
取材・文・写真/翡翠
編集/MARU
公演情報
2023年劇団☆新感線43周年興行・春公演
Shinkansen faces Shakespeare
『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』
[原作] ウィリアム・シェイクスピア(松岡和子翻訳版「オセロー」ちくま文庫より)
[作] 青木 豪 [演出] いのうえひでのり
[出演] 三宅 健 / 松井玲奈 粟根まこと 寺西拓人 / 高田聖子 他
[上演スケジュール]
東京公演 2023年3月10日(金)~28日(火)(1月29日(日)から一般発売)
大阪公演 2023年4月13日(木)~5月1日(月)(2月26日(日)から一般発売)
[公式サイト]
http://www.vi-shinkansen.co.jp/othello2023
[公式ツイッター]
https://twitter.com/SHINKANSENtopic
関連記事
この記事を書いた人
- 音楽や映画、舞台などを中心にインタビュー取材や、レポート執筆をしています。強み:相手の良いところをみつけることができる。弱み:ネガティブなところ。