YouTuber の知られざる「孤独感」。女性フリーランサーが子育てしながら好きを仕事にする方法〈文学 YouTuber ベル/第 2 話〉
小説の書評を中心に「読書の楽しさ」を魅力たっぷりに伝え続けている、文学YouTuberベルさん。彼女はいかにしてYouTuberになったのか? 成功の秘訣は? 育児をしながらチャレンジする準備・心構えは?
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文学YouTuber文学YouTuberベル
好きなことを YouTube で発信し、フリーランスとして独立したい!
小説の書評を中心に「読書の楽しさ」を魅力たっぷりに伝え続けている、文学 YouTuber ベルさん。彼女はいかにして YouTuber になったのか? 成功の秘訣は? 育児をしながらチャレンジする準備・心構えは? など、YouTuber になるためのノウハウを伺ってきました。
全 2 話。今回の第 2 話では、女性フリーランサーの妊娠・出産・育児期の不安をどう受け入れて行けば良いのかについて、ベルさんの体験談を交えながらお伝えします!
*第 1 話はこちらからどうぞ。
目次
YouTube を継続するには、パートナーの存在が大事!
ベルさんの Instagram を拝見していると、1 歳のお子さんとの触れ合いが投稿されていて、とってもかわいいですね! フリーランスの YouTuber にとって、育児と仕事を並行していくのは不安を覚えるかと思います。どう乗り越えると良いですか?
そうですね。パートナーの存在がとても大事です。これは私に限ったことではなく、有名どころの YouTuber さんも同様です。チャンネル登録者数 100 万人レベルの方の話を聞いても、たとえば弟さんが編集をやっていたり、幼い頃からの親友が泊まり込みで協力していたり。相当理解があってサポートしてくれている方がそばいらっしゃいますね。
一人じゃないんですね。
もちろん YouTube は一人で運営できますよ。一人で全部できるんですけど、私は一人で続けるのは厳しいと考えています。なぜなら、再生回数など毎回数字で評価が返ってくるので、それを孤独に受け止めて次のコンテンツに活かし続けて行くのは作業面だけでなく精神的にもキツいからです。そこで、家族、友人、恋愛、さまざまな関係がありますが、信頼し合えるパートナーがいるというのは、すごく心強いと思います。
それは、育児・子育てに関わらず大切なことなのですね。
やっぱり全部を一人で抱え込んじゃうのはキツいと思うので、一緒に喜んでくれたり、苦しみを理解してくれたり。そうした関係性がひとつあるだけで、長く続けられる秘訣になると思います。
全部を一人でやっていると、状況が変わったときに対応できなくなってしまいますもんね。
そうなんですよね。YouTube は属人性が強いので、「代わりに誰か」というのは難しいですからね。
思うように働けなくなる妊娠・出産・育児。フリーランサーは何をしたらいい?
女性フリーランサーの場合は特に、妊娠がわかったときに嬉しい反面、「この先、仕事が続けられるのか」と不安になりませんか。
フリーランスには産休や育休がないので、不安はありますよね。あと、「育児中にお仕事を依頼したら迷惑になっちゃうんじゃないか?」みたいに配慮していただいた結果、企業からの依頼が減るというのもあると思います。これは、身を持って感じているところではありますね。
どう対策されていますか?
企業勤めだと、休んでいても誰かがカバーしてくれます。でも、フリーランスだと「自分が動いてなんぼ」の働き方をしがちです。そうすると結構限界があるんだなっていうのは感じています。今後のビジョンとしては、自分が動き回って稼ぐ以外のスキームも考える必要はあるし、それを今チャレンジしている状況ではありますね。
動きづらいときは逆にそれを活かして、新しいことを考えたり、実行したりするということですね。
そうですね。やってみたいと思っていたけど、普段のルーティーンで忙しくて後回しになっていたことを、考えたり準備したりする期間になりました。
そんな中、新たにアパレルブラン『Runovel』も始めました。これも他の方を交えて進めています。まだ挑戦中の段階ではあるのですが、マネタイズという視点では今までとは違った回り方ができたらと考えています。
妊娠、出産、育児で停滞すると思いきや……。すごいですね!
もちろんすべて上手くいく訳ではないですけど、アイデアがあれば新しいことを始められる。これはフリーランスの良いところですね。
好きを仕事にする秘訣は、「好きなこと×○○」
たとえば本が好きな方にとって、それを仕事にして行くにはどういう考え方をすれば良いのでしょうか。
たとえば、「本が好きだから出版社に入りたい」となると、就活で狭き門をくぐらないといけない。でも今は、インターネットを活用して本に関わることもできる。それこそ、育児中の方でも何とかチャレンジできるようになりました。
そこで、本が好きという想いを仕事にしようと考えるとき、「本 × 〇〇」と自分の好きなものや苦じゃないものを掛け合わせると面白い企画が生まれると思います。私の YouTubeは「本×動画」ですし、先程の「本 × アパレル」では、出版社さんに「モデルは作家さんにお願いしたいんです!」と情熱を伝えたら、いろいろあたってくださり、「作家の〇〇さんがこういう風に言ってくれていますよ」みたいな感じで協力してもらえたんです(*1)。
*1. 松本清張賞受賞作家・波木銅さんがモデル「Runovel スタイリッシュスフレ・プルオーバーパーカー」
「そんな企画を持って行っていいの!?」と尻込みしてしまいそうですが、熱意を伝えるのは大事なのですね。
本は長く続く文化ですし、出版社としても変えられない矜持があると思いきや、新しいことをやろうとしてくれている人に対して応援してくれることもある。新しいことにチャレンジすれば、「おっ、すごい」と感じてもらえるかもしれないですね。
SNS を活用してファンと交流!優しいコミュニティつくり
ベルさんの YouTube チャンネルには文学マニアのような方も視聴者としていらっしゃると思います。ターゲットを文学ファン全員にするのは難しくはなかったですか。ベルさんはターゲットを決めているのでしょうか。
まあたしかに、「文学って、すごい名前つけちゃったな」とは思っています(笑) ターゲットに関しては特には決めていません。「読書って楽しいよね」「これ面白かったよ」みたいなのを共有しながら、それに共感してくれる人が見てくださったらいいなと思います。評論家のような格式ばったものではなく、「読者だけど、みんなに本の楽しさを伝えたくて頑張っています」、と。
ベルさんは、ファンとの交流も上手いですよね。YouTubeのコメント欄だけだと ベルさんと視聴者さんとの交流が基本になると思いますが、Twitter のハッシュタグを絡めることによってコミュニティ化していて「楽しそうだな」と見ていて感じます。
Twitter では「こんな本を探しています。#のベルズ」みたいな感じでツイートして、「こんな本がありますよ」リプライをもらったり、つながれたり。Instagram でもライブ配信中に視聴者さんに上がってもらって、その方のおすすめの一冊を教えてもらったりとか、何か質問をもらってみんなでいっしょに答えたりとか。そういうのがすごく楽しいですね。
そういえば先日も、Instagram のライブ配信で「癒される本ないですか?」という視聴者さんのコメントに対して、みんなで考えて本をおすすめしていて楽しそうだなと感じました。コミュニティの雰囲気が優しいですね。
以前、「中学 2 年生の頃から見ています」っていう高校 2 年生の方が上がってきてくれて、「ベルさんが紹介していた本、読んでいます」みたいに言ってくれました。嬉しかったですね。
「I am な人」になりたい方へのおすすめ本
I am 読者に、ベルさんから何か一冊おすすめの本をご紹介いただけないでしょうか。
私も好きな本で、さくらももこさんの『ひとりずもう』(集英社)というエッセイをおすすめします。小学生から漫画家になるくらいまでの、さくらももこさんご自身のエピソードが綴られた本です。前半はぐうたら過ごしていて「無駄なことをしているなぁ」と笑いなから読めるのですが、途中で「漫画家になりたい」って気持ちに火が付く瞬間があって、そこから一心不乱に頑張るんですよ。家族から何を言われようとも。
後半は夢に向けてのエッセイになっていて、特に女性だと共感できる部分はいろいろあると思います。
まさに「好きを仕事にしたい」方は必読ですね
あとは、「夢の調整」がテーマにもなっていて。もともと少女漫画を描きたかったんですね、さくらももこさんって。でも、絵柄や内容的に少女漫画が向かなくて、そこからエッセイ漫画にしてみたら上手くいった。「“夢を思い続けていればきっと叶う” みたいなことは言えないけど、自分には少しムリかもとか合ってないかもと感じたら微調整を考えてみるのが大事」といったことが、あとがきの方とかでも書かれていて。なんかそれってすごく大事な考え方だな、と私は読んでいて思いました。
エッセイなので、ひとつひとつのトピックは短く、忙しい方でも読めると思います。私自身、とても感動したので、ぜひよかったら。
妊娠、出産を経て、今後の活動について教えてください!
去年(2021 年)は妊娠・出産というところで、あまり動けなかったので、その分やっぱりやりたいことが溜まっています。今後は、新しいことにどんどん挑戦して行きたいし、あとは今見てくださっている方との交流も深めていきたいですね。昨今はコロナ禍で思うようには企画できませんが、読書会コミュニティのようなコミュニティも作ってみたいです。
すでにやりたいことがいっぱい! 今後の活動も楽しみにしています。今日はありがとうございました。
はい、ありがとうございました。
第1話はこちらからどうぞ。
取材/I am 編集部、北野啓太郎
文/北野啓太郎
写真/田尻陽子
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この記事を書いた人
- 文章、写真、動画を駆使したWebコンテンツ制作が得意なフリーランサー。会社員時代に始めたブログがきっかけでヘッドハンティング。レゲエ専門メディアの編集長を経て、独立しました。強み:初対面の方と何時間でも話せる。インタビューも好き。弱み:打たれ弱い。