Interview
インタビュー

記憶と想いをつなぐ空想の喫茶店は、仲間と趣味からはじまった 喫茶トラノコクインタビュー

ノスタルジーな喫茶店、誰しも記憶の中にありそうな懐かしい佇まい。実店舗を持たず、自分たちの好きな世界観をSNSで発信する喫茶トラノコク。本業とは別のフィールドを持つメリットについてうかがいました。

トラノコク

プロフィール

空想喫茶店喫茶トラノコク

喫茶トラノコクは実店舗を持たず、自分たちの好きな世界観をSNSで発信する、同じ会社の仲間とその友人たちで構成されるクリエイター集団。メンバーはもうそう店長、7、Kon、ツッチー、ユーピケの5名。ノスタルジーな喫茶店、誰しも記憶の中にありそうな懐かしい佇まいで共感を集める。著書に『空想喫茶トラノコクのおうち喫茶レシピ』(ワニブックス)。

「子供のころ夢みたおやつ」「どこか懐かしいごはん」など、実店舗を持たず架空で自分たちの好きな世界観をSNSで発信する喫茶トラノコク。多くの共感を呼び、人気を集めています。
喫茶トラノコクはチームで構成。メンバーは美大や写真に関連する大学出身でアートに関連する方が多く、それぞれが持っているスキルを活かして運営されています。また、メンバーはそれぞれ別の本業を持っていると言います。本業とは別のフィールドを持つことにどんなメリットがあるのでしょうか? リアルなお話をうかがいました。

喫茶トラノコクのメンバーはどんな方たちですか?

喫茶トラノコクは「子供のころ夢みたおやつ」「どこか懐かしいごはん」といった記憶と味を結びつけるようなほっこりした世界観を写真や映像を通してSNSで発信しています。

本業の傍らの活動ですが、趣味の延長線で始めたものなので、そもそも副業にしたいという感覚はなくて。おいしそうな食べ物の写真や映像をとってSNSで発信したり、喫茶店の紹介をしたりしてみなさんを笑顔にできたらなというのが出発点です。

最初は3人で始めて、今は友人も加わって4人で活動しています。

もともとは同じ会社で、仕事終わりに一緒にごはんを食べに行ったりする仲で、共通していることは「美味しいものが好き」なこと。

メンバーは美大や写真に関連する大学出身で写真や映像を含めたアートに関連するものに関心のある人が多いのでそれぞれが持っているスキルを活かしています。それぞれの本業は広告会社の営業やメディア制作、映像ディレクター等の仕事をしています。またフリーのクリエイターもいます。

コロナ禍でリモートワークになったり、フレックスタイムの働き方にシフトしたりしたことで、柔軟にトラノコクに向き合えるようになりました。

喫茶トラノコクを始めたきっかけは?

トラノコク

SNSで配信しようと思ったのは、当時も今も僕たちにとってはSNSという存在がとても身近だったこと。毎日何かしらのメディアに触れ合っていました。顔も名前も知らない人たちが多い中で、目にする言葉はあたたかい言葉だけではなく、時に棘のように鋭い言葉も飛び交っていているのがインターネットという世界。

そんななかで、何気ない会話から

「もしどこか遠くにいる人たちともあたたかい世界を作ることができたらいいよね」

「SNSにも心の拠り所になるような喫茶店みたいなところがほしいなぁ」

そんな会話を重ねていくうちに

「僕たちの居場所を作ってみようか。そこが誰かの居場所になるかもしれないよね」と話したことがきっかけで、空想喫茶トラノコクを作ることになりました。

夏休みの自由研究をやっている感覚

発信していく中で「好き」という気持ちは何よりも大事にしています。

それは会社に勤めている中で思う「会社にとっての良いこと」と「自身が思う良いこと」は必ずしも毎回同じとは限らないということ。メンバーそれぞれが社会に出て感じた経験があるからです。

それなら、「トラノコクでは自分たちが思う良い世界、好きだと純粋に思うものを発信していこう。同じように好きと言ってくれる人が集まってくるかもしれないね」と、夏休みの自由研究をしているような感覚で向き合っていきました。

始めた当初も今でも趣味のような気持ちで活動していたので、そこから価値を生み出せるようになるとは夢にも思いませんでした。

一番嬉しいのは僕らが思う何気ない日常に共感してくれる人が思った以上にたくさんいたことです。

私たちが考えているのはビジネスが先行するよりも、「好き」という入り口から始めてみること。その気持ちが続けていく力になり、同じように好きと感じてくれる人が自然と集まってきます。

フォロワーさんも含めたみなさんと一緒に喫茶を築いていると言っても過言ではありません。

クリエイティブをノスタルジックな雰囲気やジブリなどの世界観に絞ったのはなぜですか?

トラノコク

「懐かしい感情」には共通する実体験が多く詰まっていると僕たちは考えています。「ふと香るどこかの家の夕食の香り」「夏休み前に荷物をたくさん持った帰り道」そんな何気ない経験を語りかけることで、同じような体験をした遠くにいる誰かとも気持ちを共有しているような感覚になれるんです。

だからこそ、その心をよりくすぐるノスタルジックな雰囲気はとても大切だったりします。

やっぱり世界観があると他の誰かに「らしさ」を知ってもらえることが良さなのかなと思います。(世界観を)絞りこんだ後に、好きなものが変わったり、やっぱり違うかも。と感じたときは引き返したり、広げて変わることもできるのが世界観なのかなと個人的には考えています。

流行り廃りといった点はあまり気にしていなくて、もちろん作風が変わっていくことや新しいことを始めたりすることはあります。古民家風の日本の懐かしい夏の風景のような写真を撮ることもあれば、アンティークのお皿に洋食を添えた純喫茶の写真も。

どちらも懐かしさというところでは同じで、僕らの考える良いものも少しずつ変化しているのだなと写真を見返すとよりいっそう感じます。成長を見守ってくれているみなさんの、いつもあたたかい言葉に励まされながらこれからもトラノコクを開店していこうと思います。

喫茶トラノコクの活動の中で大事にしている事とは?

同じ趣味を持った仲間としてトラノコクを始めているからこそ、「楽しくあること」に重きを置いています。

メンバーが持ってくるアイデアを雑談まじりに会話しながらすり合わせていくうちに、同じ方向をみんなでみているような感覚になれる瞬間があります。その時はチームならではの良さを感じます。

今後店舗を構えるのか、ポップアップかは定かではないですが、いつか何かしらの形でお店を開店させたいなとは夢みています。

今の時代、”お店”のあり方は多様化しています。ここだけにしかない実店舗を構える以外にも、僕らのようにSNSや移動式で場所を問わないあり方もあったりします。

今の僕らは、実店舗に足を運んでくれる人だけに価値を提供するだけでなく、はるか遠くにいる人たちにも喫茶店のあたたかさや良さを知ってもらえたらなという気持ちが強いです。

チームの活動では、皆一通りのことはできるメンバーですが、それぞれの得意なところで各々のスキルを発揮する形をとっています。料理をする人、撮影する人、投稿する人など。あとは本業が忙しい時は空いているメンバーで分担したりしながら作っています。

喫茶トラノコクの活動が本業に与えた良い影響はありましたか?

トラノコク

本業で写真や映像をメインにしているメンバーもいて、料理に関してはイチから学んでいたりするので、撮影者と料理を作る人両方の目線で捉えることができるようになったのはよかったなと思います。

そうして視野が広がることで、物事や考え方に選択肢が増えたのは本業でもトラノコクであってもよかったことかなと感じますね。

本業でも笑いが増えましたね(笑)

あとは、やっぱり積み重ねていけば積み重ねるほど、信頼も積み重なっていくような気がして、年齢とか性別かかわらず素直な気持ちでメンバーに向き合っていけるようになりました。それで新しいアイデアが生まれたり、実際行動に落とし込める環境になっていったりしているのかなと考えています。

喫茶トラノコクの今後の展開を教えてください!

2021年10月26日にトラノコクのレシピ本が発売されます(取材:2021年9月)。

SNSでも反響のあった料理の魅力をぎゅっと詰まった1冊になっています。

数年前の僕らはまったく想像もしていなかった未来が今こうして目の前にあることはとても感慨深いですね。

この本の発売をきっかけに喫茶店の良さを知ってくれる人やこの記事をきっかけに好きなものを伝え続けていくことで生まれる新しい可能性に気付く人が一人でも多く増えますようにと願っています。

創作する中でのポイントやモチベーションは?

トラノコク

そもそも「好き」から始めた事なので、ビジネスを意識したことはないですが、これから何かを始めようとされている方に僕たちがお伝えできることとしたら、自分たちが何かを手がける時はいつも頭と手の両方を動かしています。

またクリエイティブを作り上げる作業は、メンバーそれぞれの経験と学びの集積なので、「いつもこれだという最適解」はないということです。いつでもフレッシュな気持ちで向き合うので、これという正解はないのではないかと思っています。自分の好きに忠実に動くこと、それに尽きると思います。

ただいくつか約束事はあって、違うと思ったら引き返せる柔軟性、自分だけでは解決できないことはメンバーに相談することです。基本的には感じたことは素直に話せるようなチームを心掛けていますが、困りごとがあった時も基本的には提案ベースに話すようにと約束しています。

決めたらすぐ動くというのもなく、各々の心地よいスピード感やそれぞれが抱えている本業の仕事もあるので、メンバーの状況に応じて動ける人が動くという感じです。

モチベーションについて、トラノコクはYouTubeでもちょっとだけ語ったりしています。

会社以外のフィールドで活躍したい人にメッセージをください

SNSなどインターネットで発信すること関して、「何か言われたらどうしよう」「傷つきたくない」という気持ちは分かります。やっぱり勇気がいるなって思うので。

でもSNSのネガティブな部分ばかりに気を病むのではなく、遠くにいるたった一人だけでも共感してくれる人がきっといる。それを信じて発信してみてください。

今の自分たちが思うのは、怖さ以上に心をあたため続けてくれる応援してくれる人たちの存在が大きいです。

だからこそ、周りの顔色を伺って生きるよりも好きだと言ってくれる人たちを大切にしていく方が良いなと心から思うようになりました。

今楽しくあること、僕ら自身が心の豊かさに向き合っていくことが喫茶トラノコクを作り上げていく上で欠かせないことだと信じています。

【取材を終えて】全ては好きから始まった。そして楽しくあること

喫茶トラノコクさんは、ビジネスを意識するよりもまず、自分たちの好きを楽しむことに夢中です。その夢中が結果として多くの方に共感され、可能性を広げていく形になったと教えてくれました。

喫茶トラノコクさんが本業での変化として「笑いが増えた」と回答してくれました。

会社では自分の思うような仕事が出来なかったり、自由がきかなかったりすることは当然あります。でも会社を一歩出て、自分たちのフィールドで思いっきり楽しめたら、日々の仕事にも余裕が生まれる、そんな感じがしました。

出版の次は、実店舗が本当にオープンすることを楽しみにしています。取材のご協力ありがとうございました!

取材/I am 編集部
写真・文/喫茶トラノコク

この記事を書いた人

井坂 優子
井坂 優子副編集長
仕事、家事・育児に追われ、自分のことを後回しにした30代。40代に突入し、これからの働き方を模索中。強み:やると決めたらすぐ動く。営業一筋で培った断られても大丈夫なマインド。弱み:無趣味。営業マンだったのに口ベタ。
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