Interview
インタビュー

人生を大きく変える種銭の作り方、使い方 土井英二インタビュー第1弾

Amazon元カリスマバイヤーの土井英司さん。小学生時代から培ってきた“土井流金銭哲学”を伺いながら、よりよいお金との付き合い方を考えます。

土井英司

プロフィール

有限会社エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役土井英司

ブックコンサルタント。有限会社エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役。日刊書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」編集長。1974年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。ゲーム会社を退社後、ビジネスパーソンのキャリア構築に興味を持ち、編集者・取材記者・ライターを経て、Amazon.co.jp立ち上げに参画。27歳で同社の「Company Award」を受賞「アマゾンのカリスマバイヤー」と呼ばれる。30歳で独立し、有限会社エリエス・ブック・コンサルティングを設立、こんまりこと近藤麻理恵氏のプロデュースなどを手掛ける。現在は長崎に移住、地方創生に取り組んでいる。『20代で人生の年収は9割決まる。』(日経ビジネス人文庫)『一流の人は、本のどこに線を引いているのか』(サンマーク出版)など著書多数。

「人生100年時代」と言われ、定年や年金支給が後述べになり、いつまで現役世代なのか、その境界線が見えづらくなっている昨今。金融庁が試算した「老後資金は3000万円必要」という発言が物議を醸し、現在だけでなく未来にも不安を感じざるを得ない時代になっています。「いくらあったら満足できる老後を過ごすことができるのか」「サラリーマン人生38年で貯められるものなのか」「どうやったらお金を増やすことができるのか」。
そんなお金にまつわる様々な疑問に、独自の考え方を提案してくれるのが、Amazon元カリスマバイヤーの土井英司さん。小学生時代から培ってきた“土井流金銭哲学”を伺いながら、よりよいお金との付き合い方を考えます。

人生初の種銭体験は小学生の時

僕はAmazonでエディター、書籍バイヤーを務め、近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』や横山光昭さんの『年収200万円からの貯金生活宣言』など、ベストセラーを仕掛けた経験を持って、独立。現在、『エリエス・ブック・コンサルティング』という出版のコンサルティング会社を経営しながら、ビジネス書評のメルマガ『ビジネスブックマラソン』の編集長も兼任しています。

仕事に対する僕の考え方については次回お話することにして、今回は『人生に必要な種銭』ということで、お金に関するテーマに絞ってお話しします。

僕の人生における種銭体験は、小学生のときに戸棚で見つけた、母親のへそくりから始まりました。「これは内緒の金だ」と思ったのと同時に、その有意義な使い方を考えついたんです。それは、「バレないように少しずつ抜いて、それを使って友だちと一緒に遊ぶ」ということ。小学生ぐらいだったら10円、20円の駄菓子をおごったら、みんな喜んでついてくるでしょう。そうやって母親のへそくりを種銭として、フルに活用することによって“人脈”を作っていったんです。

だから、空き地にゴルフ場やラジコンコースを作ろうと計画をしたときも、いつも遊んでいた友だち20〜30人に声をかけると、みんな放課後になるとダッシュで空き地に行って、雑草を抜いたり、コース整備をしたり。3ヵ月ほどで完成させることができました。

きっとあの時、種銭としてではなく、自分の喜びのためだけにあのお金を使っていたら、今の僕はいないでしょう。人と違うことをするために、友だちのネットワークを作るための原資として使うことができたから、みんなで遊び場を作り上げたという成功体験につながったのです。

もちろん、自分で種銭を作り出すことも経験しました。家の近所のおもちゃ屋に飾ってあった、大きなガンダムのおもちゃは子どもたちの注目の的で、それがとにかく欲しかった。当時の僕のお小遣いは1日100円で、そのおもちゃが4800円。単純に考えれば48日間、お小遣いを使わなければ買えますが、我慢が難しい子どもにとっての1ヵ月半はとにかく長い。でも、そこをぐっと我慢し続けて、最上段に飾ってあったおもちゃを下ろしてもらって、48枚の100円玉を支払った時の優越感は、それは異常なものでした。誰も持っていないそのおもちゃを手にした時に、「俺はヒーローだな」と思ったんですが、そういうくだらない成功体験の積み重ねがすごく大事だったと思っています。

我慢で人生が変わることを示した『マシュマロ・テスト』

我慢で得をするといえば、スタンフォード大学で行われた「目の前に置かれたマシュマロを15分間我慢できた子は、もう1個もらえる」という『マシュマロ・テスト』が有名です。が、その後、追跡調査をしたところ、我慢できた子どもはみんな経済的に成功していたという結果が出たんですね。ちなみに、このマシュマロ・テストに参加していた女の子のひとりが、今のYouTubeの社長です。要するに、欲しい物、自分の叶えたいことのために我慢することができれば、種銭、原資を作ることができる。それを元にして、自分の理想を実現する可能性が広がるということが実証されたわけです。

土井英司
写真/shutterstock

では、現実的に今どうやって種銭を作ったらいいか。例えば、飲みに行って3000円支払ったとします。これは一般的な金額で、普通の飲み会です。でも、その3000円の飲み会を10日間我慢すると、3万円になる。この3万円があれば、いいレストランで食事できますね。しかも3万円の食事は、普通の人ができる体験ではない。その差はたった10日間。9日間我慢すれば、10日目には一流の人の食事が手に入るわけです。

この我慢を1年間続けたらどうなるか?

12ヵ月×3万円で36万円。この36万円を種銭として、自分に投資することができた人は成功する、と僕は思います。例えば30万円のスーツを着ていたら、周囲の人に注目され、只者ではないと思われます。スーツって金額で格みたいなものがはっきりと分かるようになっていて、30万円を超えると異常なオーラが出てくる。いいスーツを着ると、いい人と付き合えるようになる。出向いたお店の人も一目置くから、一銭も使わなくてもいい客だと思われる。だから30万円のスーツと6万円の靴を身につけて行けば、お店でもパーティーでも一目置かれる人間になれるわけです。人ってなんだかんだ言っても、結局そういうところを見ているものだから。

だから、『マシュマロ・テスト』は核心をついているんだと思います。日常のちょっとした浪費を我慢するだけで、種銭を作ることができ、それによって人生が大きく変わる。僕は小学生のときに4800円のガンダムを手にすることでそれに気づき、その後も種銭を作っては自分に投資し続けた。

逆に言えば、ほとんどの人はそれに気づかず、惰性で使っている消費を止められないから、“自分の人生に不満を持ちながらも変えられない”ということなんです。

節約したお金を何に投資するかが大事

僕は中学時代から、自分の時間をより有効に使うために、家から3キロ近く離れた親の職場で一人暮らしをしていました。ただ、この時は、朝ごはんと昼の弁当は母が出勤時に持ってきてくれ、夕飯は作りおきしてくれていたので、半一人暮らしといった状態でした。その数年を経て、高校進学を機に本格的にアパートでの一人暮らしを始めました。親からは生活費ということで、月に5万円もらっていました。

この5万円を僕は、「極限まで節約したら、全部自分のものになる」と考え、自炊してコストを下げまくって、月の食費を1万2000円まで削りました。1カ月で3万8000円貯められるわけです。これを3ヵ月続けて、当時10万円ほどしたパラボラアンテナを買いました。言い方を変えれば、

将来の自分に投資するためにパラボラアンテナを買った。

ここで大切なのは、「節約した金を何に投資するか」です。その投資する物によって人生が変わります。おしゃれな服を買うこともできたけれど、僕の強みはファッション系ではないから、そこにお金をかけてもただの贅沢品になってしまう。それよりもCNNなどの海外番組を見ることによって、僕の得意な英語を聞きながら、まだ見ぬ世界を知ることができることの方が、僕の未来に役に立つと思った。さらに、僕以外の高校生は自由に衛星放送が見られる環境にいないから、この分野では勝てると思ったわけです。

だから3ヵ月生活を切り詰めても、パラボラアンテナを買う価値は十分にあったんです。

人々を悩ませる「貯金はいくらあったらいいのか問題」

ただ、社会人の場合、種銭を作るために、まず毎月の収支や貯金とのバランスを考えたくなるもの。ここで生じる「貯金はいくらあったらいいのか問題」は、本当に人を悩ませます。なぜなら、お金はいくらあっても不安なものだし、まとまったお金を持ったとしても、今度は「そのお金をどうするか問題」で悩むことになる。さらに運用をしくじると一発でなくなってしまうという側面も持っている。

実際に僕の周りには相当額の貯蓄を持っている人がいっぱいいますが、それでも本を書いたり講演をするなど、絶対に仕事を辞めません。

なぜなら、人は大した金額でなくても安定して入ってくるフロー収入の方が、億もあるストック収入より安心するから。逆に言えば、毎月きちっと入るフロー収入があれば、それほど貯金を持つ必要はないと、僕は思っています。

僕が考える貯金の現実的な最低ラインは、給料の6ヵ月分プラス引越し費用。何らかの理由で収入がなくなったとしても、6ヵ月あれば転職活動ができる。さらに、収入源によって居住地を移す必要が出てくるかもしれないという可能性を踏まえての数字なので、一人なのか家族がいるかなどで変わってきますが、基本、貯金はこれだけあればいいと考えています。

例えば未婚の一人暮らしで、月収が20万円の人だとしたら、引越し費用30万に加えて給料6ヵ月分の120万で、150万円。基本的にこの金額があれば、それ以上貯金を持つ必要はないと考えています。

この条件で、それ以上のお金が貯金できているのであれば、それは自分の投資に当てた方がいい。逆に、それができなければ、絶対に“普通の人”から抜け出せない。なぜなら、この貯金の理由のほとんどは、使う目的がはっきりしない、何かあった時の生活費だから。

貯金に安心レベルなんてない

例えば、年収400万円の人が毎年100万円貯金したとします。仮に定年が60歳と考えると、ほとんどの人にとってサラリーマン生活は38年しかない。すると38年×100万円で3800万円。年収400万円の人が毎年頑張って給料の25%貯めて、3800万円の貯金ができるわけです。

でも、この人って1年間に貯金以外の300万円を使っちゃう人ですよね。すると、3800万円で一体何年過ごすことができるでしょう。もちろん年金も入ってくるでしょうが、それでも生活レベルが落ちるのは、一目瞭然です。

土井英司
写真/shutterstock

逆に、同じ条件で給料の半分の200万円を貯金できる人がいたら、同じ年数で7600万円貯まり、しかも定年前と同じ生活を続けることができる。その人は低コスト体質ということで、定年後も年金だけで生きていけるんです。低コスト体質になって、満足を得るという方が絶対にいいと思うし、もし幸いにして地方で生活コストの安いところに引越すことができたら、収入が増えたのと同じだから、後半の人生はQOLを上げることができる。

でも多くの人が、今までの生活から抜け出せないんです。収支のバランスを変えて、生活を見直さない限り、年収が1000万円だろうが、1億円だろうが、貯金額に安心レベルなんてないんです。これはどんな金持ちや高給取りであろうと、低コスト体質でない限り、いくら稼いでも足りないという、底なし沼のようなワナなんです。

しかも、幸いにして3800万円貯めたとして、この3800万円から毎年300万円ずつ減っていくことを考えてみてください。預金通帳の残高が毎年減っていくのをただ見ているのって恐怖じゃないですか。

だから、貯金というものは絶対に使っちゃいけないものと考える。使うのではなく、3800万円で資産を買って、その資産が稼いだ分だけを使うんです。

大きな原資がなければ金融商品は儲からない

「資産を買う」と言うと、多くの人は“株”を思い浮かべます。確かに株は企業の成長によって上がっていくのでギャンブルではありません。でも、100万円で株を買ったとしても、その利回りってそれほど大きくなりませんよね。例えば利回りが10%であれば10万円になりますが、1年間で10万円。例え100万円になっても、それだけで食べてはいけません。

基本的に、株や債券といった金融商品は、大きな原資を持っている人だけが恩恵を受けるようにできている。資産家でまとまったお金があるなら、投資してもいいという話なんです。

そもそも、損益計算書の一番最後の残りカスを株主に配っているのが株主配当だから、そんな金額を受け取っても金持ちにはなれません。ファンドマネージャーが金持ちなのは、皆さんからお金をかき集めて、多額の金で運用したところから利ざやを抜いて自分のポケットに入れているから。だから人からお金を集めるという機能なしに、株で金持ちになるということはほとんど不可能なんです。

さらに今の大きな組織は、粉飾決済したり、何を隠しているか分からない。そんなところに対して、自分のなけなしのお金を突っ込んでゼロになる可能性があるのは、株でも起業でも一緒ですよね。そうであれば、自分でやることの方がずっと確実だし、自分で起業した方が絶対に安全だと僕は思います。

それに、昔は安定企業というものがあって、NTTや東京ガスの株を買っておけば安心と考えられていましたが、今はいつどこが倒産してもおかしくないような時代。なぜ今、人の会社の株を買うのかと不思議に思います。

目指すべきは経営者

僕は株に投資するというマインドがあるのなら、経営者を目指した方がいいと思っています。なぜなら、経営者は100円で作って1000円で売ることができる。言い換えれば、100円のものが1000円になるという投資をしているんです。だから元手がないけれど大きく儲けたいと思うなら、経営者しかチョイスはない。

そもそも経営者になると、サラリーマンと同じような物を購入しても、必要経費で落とすことができるようになる。例えば一緒に定食屋に行って同じ1000円の定食を食べても、経営者がその食事代を経費として計上したら、4割引になる。同じものを頼んでいるのに、600円で食べているということです。

だから、エリートサラリーマンが高級外車を新車で買っているのを見ると、「めっちゃ金持ちだな」と思ってしまう。経営者はだいたい高級車を買うにしても中古で買って節税するし、ガソリンや高速代も経費になる。そうやって安く買って安い経費で回しているけれど、サラリーマンはすべて満額支払っているから、経営者以上に金持ち行動をとっていることになるんです。

しかも、ベンツやBMWはランクに比例して数字が上がって、それが偏差値のような役割をする。それにプライドがくすぐられて、ついつい買い替えてしまい、その度にディーラーにお金が入る。そのシステムから降りることができなくなって、自分のお金がどんどん失われているのに気がつかない。

これって本当に巧妙に仕組まれたワナなんです。例えば年収1000万円のサラリーマンがいたとして、月収は約80万円。そこから税金が引かれて、手取りが60万円とする。そこから家や車のローンを払い、子どもの塾代や外食費と引いていくと、本当に何も残らない。

せっかく高額の給料をもらっているのに、こういう消費行動をとっていると、間違いなく貧乏になってしまう。世の中の商売のほとんどは、そういう人をターゲットにしているから、そこから抜け出すことも難しい。

だからこそ、同じ金を使うのであれば、その金を原資にして一発当てにいく方法を考えるべきです。目指すべきは浪費者ではなく経営者だと、僕は思っています。

お金とよりうまく付き合うために

お金は人生には欠かせないもので、生活を豊かにしてくれるものである反面、自分らしさを奪う最大の敵にもなりうる存在です。お金自体に価値を見出すのではなく、自分が実現したいことに対して、お金をどう使ったら効果的かを考え、実現したことに対して価値を見出す。それが最もお金とのうまい付き合い方であり、その一つの考え方が“種銭”だと考えています。

新しいチャレンジの前は不安になるもの。お金はそこに漬け込み、あなたを従属させようとしてきます。その不安に立ち向かい、成功をつかむためには、

お金をどう作り、どう使うか。

この2つが重要なポイントになります。ぜひ実現したい目標のためにお金を作り、それを有効に使って、あなたの可能性を広げてください。

取材/I am 編集部
文/岡田マキ

この記事を書いた人

岡田 マキ
岡田 マキライティング
ノリで音大を受験、進学して以来、「迷ったら面白い方へ」をモットーに、専門性を持たない行き当たりばったりのライターとして活動。強み:人の行動や言動の分析と対応。とくに世間から奇人と呼ばれる人が好物。弱み:気が乗らないと動けない、動かない。
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