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白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりません【40代直前!】何かを始めようと思いつつ気力がわかない…

読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー
【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】

白川密成

プロフィール

四国第57番札所栄福寺住職白川密成

住職。「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。

++ 今回のお悩み ++

【自分と向き合う時間が取れず、ついダラダラしてしまいます】

38歳女性 既婚(夫、小4、小1)出版社勤務 編集

40歳目前となり、コロナで自分を見つめ直すことで、これからの働き方や生き方について考える機会をえました。

まだこれといった答えはないですが、40歳を節目に自分のキャリアを真剣に考えたいと思い始めました。

しかし平日は子ども2人かかえ、仕事、家事育児とバタバタし、自分の時間を作ることが難しいです。

土日こそと思いますが、たまった家事をまとめてやったり、終わったらゴロゴロしてドラマを一気見したりと…有効な自分のための時間を過ごせていません。

何かやろうとしても気力もなく、気付いたら休みが終わっています。

そこで自分は何もできなかったと落ち込んでしまいます。

このまま現状維持で、あっという間に年を取ってしまうかと思うと少し怖いです。

白川先生からあなたに贈る言葉
「戒律」(かいりつ)

40歳前後という時期

 40歳前後というのは、色々あるみたいですね。と、他人事のように書いてしまいましたが、現在45歳の僕もその「真っ只中」という実感あります。身体面、精神面での変化、「今までやってきた」ことをふまえて、「このままでいいのか?」という疑問、「これからどうするのか」という思い、色々と山盛りで訪れるのが、この年代のようです。

 それだけ大事な時期でもあるのでしょう。「この時期どう過ごすか」によって、人生の後半戦が決まってきそうな予感もします。ある意味、「がんばりどころ」ですね。

力がみなぎる年代でもある

 「真っ只中」の僕たちには、なかなか見えないことですが、数年前にとても尊敬する90歳を超えられた僧侶から「何歳になりましたか?」と尋ねられ、年齢を答えると、「1番、力がみなぎる時ですね!」とニヤリとお答えになられ、「へー、そういうのものか」と新鮮だったのも思い出しました。それを、私淑する60代の僧侶にお話ししても、「そう、そう、40代って本当にそうなんだよ」とすごく納得されていました。この時期は、過ぎてみると「力がみなぎる時期」でもあるみたいですね。今までの経験と体力が、バランスよく混じり合う時期だからなのかもしれません。

あなたはよくやられています

 相談を拝読して、「よくやっておられるな」と素直に思いましたよ。僕とは仕事は違えど、平日は仕事と家事育児をバタバタとこなし、土日は家事をまとめてやったり、ゴロゴロして(大事なことです)、たまったドラマを観る。すごく、よくやっておられると思います。僕などは、ドラマは溜まっていく一方、ワクワクして登録した映画配信のサブスクも、お坊さんなので、大きな声では言えませんが、最近ではボクシングを観たことしかありません!

 まずもう少し、現状の自分自身の姿を肯定してもいいと思います。なにも休みだからといって、計画的に「なにか」をしなければならない、ということもありません。たぶんあなたは、とても大切な日常を過ごしているのだと思います。

「なにをやめるか」

 一方で、あなたの抱えている思いも僕なりに、想像できる気がします。今よりももっと、色々な意味で自分を向上させたいし、仕事柄(出版社にお勤めですよね)新しい分野への興味も開拓したい。わかります。僕もそう思っているからです。

 もうこれは、ひと言だと思います。「今、自分がやっていること」の「なにをやめるか」ということなのでしょう。時間を生むということは、そういうことです。二十代の頃、働きながら「京都広告塾」という広告の学校に通っていたことがあるのですが、そこで著名なCMディレクターの方に「プロデューサーがいるのに、ディレクターって何してるんですか?」と無知な質問をしたところ、ひと言、「ディレクターは、時間をディレクションしています」と答えてくださいました。今でもよく思い出す言葉です。「時間の整理法」というコツというよりは、時間を生むには、基本的に「何かをやめる」ということだと思います。

僕の執筆生活

 あなたは、何かを「やめる」ことは、思いつくでしょうか?僕は今、本の執筆をしていますが、本を書いている時は、基本的に友人と食事に行くこともほとんどありませんし、人との交わりを最小限にしています。そうでないと住職の仕事をしながら、本を書く時間がないからです。友人と会うのは楽しい、でも僕は、この生活を納得して選んでいます。後で後悔するかも知れませんが、それもまた人生です。

戒律のふたつの意味

 あなたに贈る仏教語は、「戒律(かいりつ)」です。なんとなく「お坊さんが守るべきルール」というような意味で、理解されていることの多い言葉だと思います。この「戒律」という言葉は、「戒(かい、シーラ)」と「律(りつ、ビナヤ)」との合成語で、それぞれ異なった意味があります。まず「戒」は、内容は様々ですが、「自律的」に自分の決心で始めることです。そして律は、修行者の集団生活の規則で、これは戒と比較すると他律的と言えるでしょう。この両面を仏教では大切にするわけです。

「やりたいこと」をやってみる

 今、あなたや僕に必要なのは、「戒」の精神のように思います。「やっぱりこのままじゃいけないな」と思っておられる。だから「今、やりたいことをやる」ために「やめてみる」ことを決めることなのだと思います。それを自分で決心する。もしどうしても「やめること」が思いつかなければ、まず「やりたいこと」をやってみて、なにが押し出されるか、みてみるのも方法ですね。

 でも、気楽に取り組んでください。「ついついやっちゃうこと」って、すごく大事みたいですよ。それに僕たちが、年老いて、ふと笑顔で思い出すことは、例えば、子供と草むらで寝転がっているような、何気ない時間のように思います。

 繰り返しになりますが、あなたはよくやっておられます。それを土台にして、少しシフトするような気分で、いいんじゃないでしょうか。

今日のまとめ 

  • 40代は色々ある。
  • それでも後から考えると、1番力が充実する時でもあるようだ。
  • 現状を否定し過ぎない。
  • 「やめる」ことを決めてみよう。
  • 「ついついやってしまうこと」も大事。

【直感・運気アップ】

「やりたいこと」を携帯のメモに溜めていって、それを1日のはじまりにみる時間を作ってみましょう。

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この記事を書いた人

白川密成
白川密成四国第57番札所栄福寺住職
「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。
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