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白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりませんコミュニケーション能力が低いと独立は難しい…??

読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー
【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】

白川密成

プロフィール

四国第57番札所栄福寺住職白川密成

住職。「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。

++ 今回のお悩み ++

【コミュニケーション能力が低く独立できるか不安です】

昔から人と話すのが苦手で、人間関係が億劫だと感じてきました。

新卒で入社した会社では、営業部に配属になってしまい、成績不振が続きました。次第に会社に行くのがつらくなり、転職をするも、転職先での人間関係がうまくいかず、転職を繰り返しています。

これではダメだと自分の得意なWEB関連でクラウドソーシングで仕事をするようになり、すぐ会社を辞めました。案件は途切れないのですが、どうしても仕事の単価が低く、薄利多売といった状況に今は陥っています。

単価を上げて仕事の幅を広げるため、今はWEBデザインや動画編集なども勉強しています。しかしどんなにスキルアップしても、自分にはコミュニケーション能力が低く、人付き合いが苦手です。生きるためには身に付けなければならないのは理解していますが、こんな自分を変えることができるのでしょうか。

(30代女性)

白川先生からあなたに贈る言葉
「重々無尽」(じゅうじゅうむじん)

より深いコミュニケーションには卓越しているかも

 お悩み拝読しました。私自身は、なんとなくの直感で「コミュニケーション能力」という言葉をあまり使わないようにしています。おそらくコミュニケーションは「上手い」とか「下手」では語れないし、自分では「下手」だと感じていても、そういう人こそ「より深いコミュニケーション」に関しては、卓越した力を持っていたり(あなたもそうかも知れません)、なかなか一筋縄ではいかないからです。

 でも、仕事でもプライベートでも「人と人」の関係で、「うまくいかない」ことが続くと、どうしても気になってしまいますよね。僕にも、身に覚えがあります。また「いかに逃れようとしても」なにかと付いて回るのが、この「コミュニケーション」の問題です

コミュニケーションに注力するのをゆるめてみる

 どこまでお力になれるかわかりませんが、まず対策を大きく2つに分けてみます。ひとつ目は、「人間関係に関しては、ある程度あきらめる」ということです。もしかしたら、あなたの悩みは、「魚の“さんま”が苦手な人が、サンマを好きになりたい」と言っている悩みに近い可能性もあります。客観的に、冷静に考えてみると、「別にカツオもいるわけだし、さんまを好きになる必要もないし、そもそもとても難しい」ということがあり得ます。

 ならばいっそ「他のこと」を見ることにしよう、やることにしよう、と力をゆるめると、今まで考えすぎていた「コミュニケーション能力」が、結果的に自然なところに落ち着くこともあると思います。コミュニケーションに注目しすぎるのも、1回休んでみるのはどうでしょう。

違う部分もそのままにして「本音」と「正直」を増やす

 もうひとつは、「やはり、人間関係はどこまでいってもついて回るので、少しずつでもなんとかしたい」と具体的対策をとることです。コミュニケーションが得意ではないと感じる人は(僕自身も苦手な面があります)、「相手に合わせなければいけない」という思いが強い場合があります。人の考えは、本当に人それぞれなので、ある意味で違って当たり前です。考えや価値観の「不一致」に必要以上に敏感にならず、「なるほどー、そう思うのか…」と違う部分をそのままにする、という心の準備必も要です。

 そして人間関係で、少しずつでも「本音」や「正直」を増やしてみてください。そのうえで、より丁寧に伝えてみてください。時に内容よりも「言い方」は大事です(←これは意外に重要)。

 そして、そのうえで、「何を言うか」よりも、あせらずに今まで以上に相手の言うことを「聞いて」みてください。

方法を混ぜてみよう

 しかし、こんな声を聞こえてきそうです。「仕事では、そうもいかないよ〜」。たしかにそうですね。仕事で会う相手は、ある意味で「お客様」である場合も多いので、少々、意見が違っていても共感的に聞かなければ、ならない場合もありますよ。言うまでもなく、これは仕事以外でもそういうことはあります。

 そこでお勧めしたいのが、方法を「混ぜる」ことです。先ほどお話しした「あきらめる」ことと「対策をとる」ことも混ぜることができるでしょうし(心の中で「半分ぐらいあきらめながら、対策自体はとっていく」など)、特定の相手との付き合いや、会話の中でも、“すべて”ではなくても、心からの「本音」「正直」を混ぜてみる。

 それも「対決」のように力を込めなくても、「えーそうですか?私はこんな風に思うんです」と軽い感じで本音や正直をライトに小出しするだけでも、人間関係はずいぶん変わる場合があります。

 もちろん人によっては、逆に「正直すぎて、人間関係がいつもショートする」という方もおられます(こちらも結構多いですよね)。そんな場合は、なんでもかんでも言わず、「沈黙」も大事にしてみるなど、色々なアレンジは必要だと思います。

関係のないことをする

 あなたに贈る今回の仏教語は、「重重無尽」(じゅうじゅうむじん)です。この言葉をヒントにもうひとつのアドバイスをしてみます。この言葉は、華厳経というお経の思想で、とても大事にされ、「あらゆる存在がお互いに関連し合って、すべてが関係しあっている」というような意味があります。つまり一見、まったく関係のないようにみえる事柄も、どこかでしっかりと繋がっている、ということです。

 ですので、一見「コミュニケーション能力」「人間関係」とは、まったく関係のないように見える「動かせるもの」を動かしてみるのも方法です。そこで便利なのが日々の習慣を作ることです。

 「休みの日に、少しでも自然に触れる習慣をはじめる」「週に1度は書店に行く」「毎日、散歩してみる」「少し筋肉をつけてみる」「猫を飼ってみる」「月に1回は映画館に行く」思いつくままに乱暴に書いてみましたが、あなたも(時間があれば)考えてみてください。「変えられるものを、変えてみる」だけで、時間をかければ、少しずつ変化することもあるように思います。実験感覚で楽しんでみてください。「なにかを始める」時間がない場合は、「やめる」習慣を見つけてみましょう。これでも変化は起こりますし、時間が増えることが「やめる」ことの大きな利点です。僕は、時々テレビや動画をみるのを極端に減らして、「音声メディア」「文字メディア」に特化した生活を送ってみるのですが、ずいぶん、生活の風景が変わって面白いですよ。

今日のまとめ 

  • コミュケーションが下手と思っている人が、「深いコミュニケーション」が得意な場合がある。
  • コミュニケーションへの注目を休む。
  • 「本音」と「正直」を「丁寧」に伝える。
  • 今まで以上にじっくり「聞く」。
  • 関係がないものを動かす。

【直感・運気アップ】

新しい「習慣」を“ひとつ”しばらく続けてみてください。そして「やめる(減らす)習慣」も、ひとつ試してみましょう。

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この記事を書いた人

白川密成
白川密成四国第57番札所栄福寺住職
「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。
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