白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりません独立するその一歩を踏み出す勇気がなりません…
読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー
【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】
++ 今回のお悩み ++
コロナでリモート勤務になり、時間に余裕ができたため以前より興味のあったWEBデザインの勉強を始めて1年。
今では定期的に仕事を頂けるクライアントと出会い、夜間休日を返上し案件をこなすまでになりました。
そんな矢先、会社からリモート勤務を解除する通達が…。
通常勤務となるとクライアントからの案件を一部断らなければ回りません。
せっかく私を信頼し、お仕事を依頼してくださったクライアントさんとの関係を壊したくないと思っています。
私は独身で実家住まいのため、いい年して親に頼るのも情けないですが…、最悪食うには困りません。
それもあって、これをきっかけに会社を辞めてフリーランスになろうかと考えています。
とは言え、まだWEBデザインの仕事の収入は本業を超えておらず、
まだまだ実績を残していくという段階ですし、親から理解が得られる自信もありません。
このまま一生独り身で自活する可能性も考慮すると、
会社員という安定(給与や年金など)を捨てることが怖く、一歩踏み出す勇気がありません。
白川先生から背中をおしてくれるような助言を頂ければ幸いです。
(40代女性)
目次
白川先生からあなたに贈る言葉
「一念発起」
両方のパターンがあるだけに、難しい
こんにちは。なかなか悩ましいお悩みですね!
というのも僕の知っている人でも、やはり少し関連する状況の人が複数いるからです。ある人はフリーランスのデザイナーです。作品には自信があるけれど、収入は安定せず、どこか不安を抱えていたようでした。しかし作品を目にした人からの声がけで、ある会社に入社し落ち着いた心で、今まで以上にやり甲斐のある仕事をするようになり、収入も安定したようです(フリー→組織というあなたとは逆の形ですね)。
別の人は、組織の中で働いていて、「もっと自分の力を活かせる場所があるのでは」と独立したところ、水を得た魚のようにやり甲斐を感じ始め、収入もあがったとのことでした。この2人はたまたま、「うまくいった」パターンですが、フリーになって後悔している人、独立の機を逃して悔しい思いをしている人も知っています。
会社にいるのもリスクがある
ですから、急いで結論を求めるよりも、少し色々な側面から考えてみようと思います。ずっと働いてこられたあなたに、僧侶の僕がお話しするのは「釈迦に説法」ですが、今の時代、会社にいるのもリスクがありますね。ずっと安定して存続する組織というものは、存在しないでしょう。どうしても今までのマインドセットの中で「会社=安定」という図式で考えるとは思いますが、「フリーになって金銭的に助かった」という未来のパターンも頭には入れておいてもいいかな、と思います。このあたりは、親ではなく当事者の自分だからわかることも多いと思います。
ワクワクするかどうか
僕の経験から思い出すことがありました。本を出し始めた時、若い住職が、メディアに出る機会が少なかったからか、テレビの出演依頼が続いたことがありました。その多くは、経験させて頂いてうれしいものでしたが、住職と執筆業を並行して続けるだけでも忙しい中で、「この出演は自分には必要だろうか?」と首をかしげる企画があったのも事実です。それを素直に、出版社の方に相談すると、「わかりました。密成さんが、ワクワクするものだけ、受けたらどうでしょうか」という答えでした。それ以来、テレビに限らず仕事を受ける大切な基準のひとつが、「ワクワクするか」というものになりました。もちろんこの相談の場合、「ワクワク」だけでは決められない要素も多いとは思いますが、もしそのことをあまり要素に入れていないとしたら、「どちらかがワクワクするか?」ともう一度、問いかけてみるのもいいなと思いました。
どちらにしても一念発起
今回、お贈りする仏教語は、「一念発起」(いちねんほっき)です。今でもよく普通に使われる言葉ですが、「すぐに心を起こして、仏教信仰の道に入ること」が元々の意味でした。それが転じて、現代の「決心して、あることを成し遂げようと心に決めること」という意味としても使われます。
すこしお悩みを拝見して思ったのですが、「どちらの道を選んでも、こうしよう」という共通コンセプトを持っておくと、少し気が楽に決心できるかも知れません。それは、あなたにとって「一念発起」のような気がしました。つまり会社に残るにしても、かなりギアをあげて、今の仕事に取り組み、「会社の中にいても、こういう人生が可能なんじゃないか」というビジョンや情熱をかけて構想してみるとどうでしょうか。もし独立する場合も、言うまでもなく「一念発起」が求められるでしょう。
独立と、会社に残ることを、単純な対立軸にするのではなく、「どちらにしても、一念発起しよう。どっちの道もありなんだよなぁ」と迷った方が、悩みがクリアになるように感じられました。
あなたの中でも何度も、「失敗したらどうしよう」という想像が頭を駆け巡っていると思います。でも会社の中で、あるいはフリーの道を選んでも「あそこで一念発起したなぁ」という手応えは、それだけで私たちの人生にとって大切な感触です。そして、それを「見てくれている人」はいるということを、どこかで僕は信じています。
どちらの道にもワクワクとリスクはありますが、あなたの選んだ道が楽しい道であることを祈っています。
今日のまとめ
- 成功、失敗、両方のパターンがあるのは言うまでもない。
- 会社もゼロリスクでないことは、認識する。
- 「ワクワク」という基準も加える。
- 「どちらにしても」一念発起する。
【直感・運気アップ】―音楽や美術にふれる時間をー
なんであれ、1日、少しの時間でも構わないので自分の好きな音楽や映画、美術、本などに触れる時間を作ってみてはどうでしょうか?「自分」という枠を超えてみることにヒントがあるかも知れません。
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この記事を書いた人
- 「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。
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