Interview
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会社を辞めたくなったら、自分の人生の「企画書」を書くといい?〈ゆるスポーツ協会・澤田智洋/第3話〉

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会社を辞めずに働きかを変えていく新しいデザイン思考。

プロフィール

世界ゆるスポーツ協会代表/コピーライター澤田智洋

幼少期をパリ、シカゴ、ロンドンで過ごした後、17 歳で帰国。
2004 年、広告代理店入社。映画『ダークナイト・ライジング』などのコピーを手がける。
2015 年、誰もが楽しめる新しいスポーツを開発し「世界ゆるスポーツ協会」を設立。著書に『マイノリティデザイン』(ライツ社)などがある。

いきなり会社を辞めなくても、自分のやりたいことはできる。でも、どうやったら「自分だけにできる仕事」を手にすることができるのか?
障がいのあるを持つ人たちや運動が苦手な人たちが主役になれる「ゆるスポーツ」を生み出し、メジャーに押し上げた澤田智洋さんに「自分だけの仕事を見つけ出す」方法を伺いました。

*全3話、第1話はコチラ/第2話はコチラ

経験値はキープしつつ10年ごとに転生したら最強!

ライター顔写真

コピーライターで大活躍、「ゆるスポーツ」、書籍出版と、澤田さんは常に変化されていますね。

インタビュアー顔写真

僕は、10 年ごとに新しい人生を生きたほうがいいと思っているんです。

ライター顔写真

10 年ごとに新しい人生を生きる?

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20 代のときは広告をやってきた。30 代でスポーツに復帰して、去年 40 歳になりました。これからの 10 年を何をやるかというの、はすでにいくつか方向性を考えてスタートさせています。

ライター顔写真

10 年ごとに人生をリセットという感じですか?

インタビュアー顔写真

いや、10 年ごとに、生きながらにして転生を繰り返す感じでしょうか。コロナ禍もそうなんですが、世界は常に転生していっているので、人がそのままでいると置いていかれます。

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「転生」……。今、転生ものは確かに流行ってます(笑)

インタビュアー顔写真

転生っていうのはゼロからのリスタートではなくて、これまでの経験値は受け継がれるからチートなんです。何かの師範がその経験値を持ったまま別の分野で素人として新たにはじめるような感じでしょうか。

ライター顔写真

経験値を付けて転生。どうやったらできますか?

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とにかく自分と向き合うことですね。ただ、自分のことを静かに見つめる機会は、自然には生まれてきません。だから、ちょっと不自然ですが、自分に対して企画書を書いてみることをおすすめしています。

ライター顔写真

自分への企画書!これからどう仕事をしていくのかを提案するんですね。

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まず、企画書のタイトルは、自分がどう生きたいのかを示唆するものをつけてみてください。僕が自分に対して作った企画書でつけたタイトルはストレート。「澤田智洋がよりクリエイティブに働くためのご提案資料」でした。

ライター顔写真

自分に、次の 10 年の生き方を提案するんですね。

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企画書を書くための自分を知る一歩として、自分のこれまでの人生で、一番喜んだこと、起こったこと、悲しかったこと、楽しかったこと、つまり喜怒哀楽を可視化するのをおすすめします。

ライター顔写真

自分の「人生の棚卸し」ですね。

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この4つの因子によってあなたの人生が姿を現します。楽しかったことや喜びから「この経験をもっと伝えたい」と考えたり、悲しみや怒りから「こんな思いをする人を減らしたい」と考えたりしてみる。そこには必ず、新しい仕事を生み出すヒントがあります。

ライター顔写真

自分の喜怒哀楽を土台にして、企画にしていくわけですね。澤田さんのご著書『マイノリティデザイン』(https://amzn.to/3ve09Wo)に自分への企画書の出し方が細かく書かれているので、参考にしていただけたらいいですね。

インタビュアー顔写真

はい

会社は辞めずに、感動を追加

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澤田さんは自分のやりたいことを仕事にするのに、会社は辞めなくてもいいというお考えですか?

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もちろん。実際僕自身、何もやめてません。何かをはじめるっていうことは、何かキャリア捨てて……ということかというとそういうことじゃない。

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新しい道に進むときに、何も終わらせずに進む?

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僕は、新しいことをいろいろ始めるので既存のものを壊す「破壊者」というふうに思われることがあるんですが、自分自身のキャリアも含めて、何も壊してないんです。
「こういうのもあるよ」っていう追加プランでしかない。

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すべてのキャリア、スキル、アイディアを既存の自分に追加していくのが良いと?

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重ね書きしていくという感覚です。新しいことを始めるために、以前のことをやめて、いきなり足場がなくなるような話ではないんです。

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自分の経験の良い部分は残し、新しいものを追加するということですね。

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むしろ、年々複雑化させようと意識しています。僕、実は、矛盾が大好きで、広告会社にも勤めていながら、1人の「困った」に寄り添うっていう、一貫性がないのがいい。

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一貫した自分にならないようにしている?

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矛盾こそが人間だと思っているんです。働くっていうことって、いかに矛盾を作るかでもあると思っています。

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矛盾が大切なのはどうしてなんでしょう?

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そもそも世界は複雑で、矛盾していていますよね。それをシンプルにしようとする必要はないと思っています。回り道だって大切。自分のスタイルも、シンプルにしていくと、「あの人ああいう人だ」という定義される人になってしまう。僕は、定義されたら終わりだなって思ってるんです。

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だから、常に変化しつづけ、回り道もすると。

インタビュアー顔写真

広告の出世街道から一回外れて、道無き道をひとりで歩いていたら、いつのまにかいろんなものをたくさん拾って、仲間ができて……結果的に直線よりも、曲がりくねってすごく遠くに来ることができました。だから、やりたいことに一直線でたどり着けなかったからと言って落ち込む必要はまったくありません。

人に力を借りて、お互い様で生きていく

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重ね書きしてどんどん新しいことをやる。でも1日24時間しかないのに、どうやってこなしていくんですか?

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僕の場合は、大元の企画とコンセプトや計画を立てる役割が多いので、それを作ってしまったらあとはチームをつくってやってもらう。それは、僕のスタイルなので、応用が効くかはわからないのですが。

ライター顔写真

なるほど。全部自分ひとりで頑張る必要はないということですね。

インタビュアー顔写真

はい。僕ひとりでは限界があります。だから、大勢の仲間に頼る。仕事って、迷惑を掛け合うこと。お互いが培ってきた力を交換すること。それが「働く」ということだと思うんです。

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肩書きに囚われず、自分らしい仕事を見つけたい人に、エールを送るとしたら?

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自分を後回しにしなくてもいいと伝えたいですね。特に、優秀な人ほど、自分のことを後回しにしがちです。もう、「他者のために」ではなく、「自分のため」にその才能を使って生きていいと思うんです。

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だからこそ、自分の弱みが解決するためのアイディアを仕事にするのですね。

インタビュアー顔写真

そうです。限りある人生の時間を人のために使いすぎたり、他人からの期待に応えたりするのではなく、自分の中にある弱さと共に働けたら、社会が自分の居場所になるし、働きやすく、そして、生きやすくなりますから。

▼第1話はこちら▼

▼第2話はこちら▼

取材/I am 編集部
文/MARU
写真/YUKO CHIBA

この記事を書いた人

MARU
MARU編集・ライティング
猫を愛する物書き。独立して20年。文章で大事にしているのはリズム感。人生の選択の基準は、楽しいか、面白いかどうか。強み:ノンジャンルで媒体を問わずに書けること、編集もできること。弱み:大雑把で細かい作業が苦手。

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