Interview
インタビュー

「自分だけの仕事」をつくるために「コンプレックス」や「弱み」を仕事にするという逆転の発想【澤田智洋さん・第2話】

「できない理由」を探すのではなく、「できないからできる」を生み出す。そこから生まれた自分だけの仕事は小さくゆっくり育てる。スポーツが苦手な人のために生まれたゆるスポーツに見る、弱みを強みに変える術とは。

プロフィール

世界ゆるスポーツ協会代表/コピーライター澤田智洋

幼少期をパリ、シカゴ、ロンドンで過ごした後、17 歳で帰国。
2004 年、広告代理店入社。映画『ダークナイト・ライジング』などのコピーを手がける。
2015 年、誰もが楽しめる新しいスポーツを開発し「世界ゆるスポーツ協会」を設立。著書に『マイノリティデザイン』(ライツ社)などがある。

「やりたいことを仕事にしたい」と思うとき、多くの人は自分の「好き」や「得意」に目を向け、マジョリティ(多数派)をターゲットにしがちですが、この反対「不得意」や「マイノリティ(少数派)」に目を向けることで、自分だけにできる仕事を手にすることができる。
障がいのあるを持つ人たちや運動が苦手な人たちが主役になれる「ゆるスポーツ」を生み出し、メジャーに押し上げた澤田智洋さんに「自分だけの仕事を見つけ出す」方法を伺いました。

全3話、第1話はこちら。第3話はこちら

大切な人の困りごとの解決策は、仕事になる

自身もマイノリティの一人であるという澤田氏
ライター顔写真

マイノリティの生きづらさを解決することを考えていくと、仕事として成り立ちそうですね。

インタビュアー顔写真

マジョリティ(多数派)の人たちの中にいて、その世界
しか見えていないと視野が狭くなり、世界を見る視力も
悪くなるんです。そこから新しい何かを生み出そうとし
ても結局はマイナーチェンジの域を出ない。

ライター顔写真

だから、今の世界に困っている人たちに向けて、何ができるかを考える?

インタビュアー顔写真

そうです。だから、たとえば「今何が欲しいですか?」と聞くよりも、「今、何に困っていますか?」と聞くほうが答えが返ってきやすい。

ライター顔写真

誰かの「困りごと」に寄り添えば、アイディアが生まれてくるということですか?

インタビュアー顔写真

自分や自分の大切な人の「使いづらい」や「困っている」を解決する方法は、大なり小なり需要があるし、新しい世界を生み出すヒントはそこにあります。

斬新なビジネスモデルに反応するライターMARU
ライター顔写真

大きな市場を狙わなくてもいい、と。

インタビュアー顔写真

近年は「課題発見」「ペルソナ」が大事、と言われますが、大きすぎて見えない相手よりも、身近な大事な人に目を向けてみる。特に、個人で自分の仕事を生み出したい人はそこから世界が開けるのではないでしょうか。

得意と苦手をかけ合わせると、唯一無二になる

強みと弱みについて熱く語る澤田氏
ライター顔写真

自分の「強み」を見つけて、それを発揮し、仕事にするためには何が必要ですか?

インタビュアー顔写真

僕は自分の中にある「強み」だけでなく、「弱み」をフル活用して仕事をしています。強みだけで仕事をしていくのには限界があるし、弱みは自分らしさ。だから、無理に克服しなくてもいい。

ライター顔写真

自分の「弱み」を仕事にするというのは、新しい考え方ですね。

インタビュアー顔写真

強みだけでなく、弱み……つまり個人のコンプレックスと向き合うと、自分もまたマイノリティ(少数派)の当事者であることを自覚することができます。

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澤田さんのように「運動が苦手」などですね。

インタビュアー顔写真

はい。そうすると、自分を「クライアント」として捉えられるようになりますよね。「自分のために何ができるか」を考えられるようになるわけです。自分のコンプレックスを、既存の社会を変えることで解決する方法を考えるんです。これが、新たな仕事の創造につながります。

ライター顔写真

具体的にはどのようにして仕事を生み出すのでしょうか?

インタビュアー顔写真

たとえば、以前サイボウズさんとワークショップを開催したときに、ガーデニングが好きだという方がいたんです。その方は、精神疾患を患っていて、自分を癒すために植物を使っていろいろな工夫をしていていました。

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まさに「自分のために何ができるか」をやられているんですね。

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そう、だから、お花を使って自分を癒すためにやっていることが、同じように傷ついている人への提案になるのではないかと思い、「再生」をテーマにして、「アライブフローリストってどうでしょうか?」と伝えました。

目線の先には、今後やるべきことを見据えている⁉
ライター顔写真

すごい。強みと弱みで、新しい職業が生まれた!

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「好きなことを仕事にする」だけだと物足りないことがあると思っていて。
自分の弱みもちゃんと土俵に乗せるからこそ、それが人生の中で「本当にやりたい仕事」になっていくのではないでしょうか。
自分がやりたいことを見つけた人の人生は劇的に変わりますね。やるべきことがどんどん見えてくる。

ライター顔写真

好きな事を仕事にしないといけない!って思いこんでいました。

インタビュアー顔写真

あと、掛け合わせるときに「運命のキーワード」を見つけ出すこと。たとえば、「傷ついている人がいたら寄り添って涙が乾くまで一緒にいます」という人がいて、僕はその方に「あなたは調律師ですね」と伝えました。

広告マンのキャッチコピーのつけ方に興味津々の編集長・長谷川
ライター顔写真

自分にキャッチコピーをつける。これは広告マンならで はの発想ですね。

インタビュアー顔写真

ちょっと乱暴かもしれないけれど、いろいろな言葉を投げかけてその方がピンときた「運命のキーワード」を、パートナーにして生きていけばいいと思うんです。「調律師」がピンときたら、「心の調律師」「時間の調律師」とか、浮かんできますよね。

ライター顔写真

これこそ I am が求めている肩書です。I am の隠れテーマは「肩書なき私」なんです。会社や役職の肩書ではなく自分を大事にしたいんです。こうやってオリジナルの肩書を付けてあげればいいんですね。

インタビュアー顔写真

はい

仕事は小さく・ゆっくり育てる

握りしめた手に何をつかむのか?
ライター顔写真

新しいことをはじめるとき、流行に敏感になる必要はないのでしょうか?

インタビュアー顔写真

むしろ逆です。以前、僕が提案してきたのは、すばやくアイディアを出し、多くの人に知ってもらい、短い期間で役目を終えるというものでした。

ライター顔写真

いかにも広告業界のイメージですね。でもこれからの時代はそうではない?

インタビュアー顔写真

小さくゆっくり生み出して、時間をかけて育てていくと、持続可能なスタンダードになっていきます。

ライター顔写真

小さく、ゆっくりでいい、と言われると安心します。

インタビュアー顔写真

少しずつ人が関わって、新しいスポーツがどんどん生まれて、生態系のように育っていくのが理想ですね。僕は「ゆるスポーツ」の第一発見者ではあるけれど、逆にいえばそれだけでしかない。これからたくさんの人が介在して、僕も予想しなかった新しい世界が生まれていく。

人がたくさん集って勝手に育っていくしくみを生み出すことが、これからの世界を変えていくんですね。

▼第1話はこちら▼

▼第3話はこちら▼



取材/I am 編集部
文/MARU
写真/YUKO CHIBA

この記事を書いた人

MARU
MARU取材・ライティング
猫を愛する物書き。独立して20年。文章で大事にしているのはリズム感。人生の選択の基準は、楽しいか、面白いかどうか。強み:ノンジャンルで媒体を問わずに書けること、編集もできること。弱み:大雑把で細かい作業が苦手。
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