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実は中高年も多いキャリアブレイク。想定外の事態にはこう切り抜けよ

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勤務先を辞めて中長期の「キャリアブレイク」を体験する人は意外と多く、若い世代に限りません。実例をもとに、キャリアブレイクの期間の過ごし方について、識者からヒントをいただきます。

一時的な離職・休職によるキャリアの中断を意味する「キャリアブレイク」が、今注目されています。この言葉には、単なる「無職期間」ではなく、1つの転機と捉え、その後の人生を実りあるものとする意味合いがこめられています。

キャリアブレイクは欧州発祥の概念・文化ですが、これを日本に紹介する取り組みをしているのは、北野貴大さん。一般社団法人キャリアブレイク研究所の代表理事として啓発活動を行い、今年1月には著書『仕事のモヤモヤに効くキャリアブレイクという選択肢』(KADOKAWA)を上梓しています。今回は、日本におけるキャリアブレイクの実情と、もし自分がキャリアブレイク当事者となった場合の心構えなど、北野さんに解説いただきました。

さまざまなかたちがあるキャリアブレイク

総務省によると、毎年約150万人がキャリアブレイクをしており、決して稀有な存在ではありません。私は、500人以上のキャリアブレイク経験者に会って話を聞ききましたが、妻もその1人です。

自分をすり減らしながら商社に勤務していた妻は、「私が私じゃなくなる」と心の悲鳴を感じて、「少しのあいだ無職になってみたい」とキャリアブレイク宣言をしました。

その間は、やりたかったことをやり、行きたかった場所に行き、次の人生を選択するための感性を充電し、納得のいく形で転職を果たしました。

キャリアブレイクを経て転職というパターンはやはり多いですが、最終的に元の会社に復職した人も結構います。例えば、テレビ局の報道の分野で働いていた女性ですが、激務で体調を崩して休職。「もう、絶対に戻らない」つもりでしたが、体調が回復していくにつれ、各界で活躍している人を取材したり、世の中に必要なニュースを届けることが好きであったことを思い出します。結局、半年ぐらいして復職しましたが、また体調を崩さないよう、上司とも諮ってバランスの取れた働き方をしています。

この女性のように、それまでしていた仕事に納得感をつかんで復職するパターンを「パーパス型」と呼んでいます。また、離職中にやりがいのある趣味や小さな仕事を見出し、それを携えて復職するパターンもあって、これは「スラッシュ型」と呼んでいます。「医者/プロレスラー」「事務員/アクセサリー作家」というふうにですね。復職してもそうした活動を継続することで、自分を心地よく保てるバランスを得ています。

少なくない中高年のキャリアブレイク

事例を収集し始めた頃は、キャリアブレイクを経験する人は自由度の高い20代から30代がメインかなと想定していました。ですが、実は中高年も多かったのは少し意外でした。

中高年がキャリアブレイクをするきっかけは、本当にいろいろな理由からです。体調を崩して休職という人もいれば、子供の教育に注力したいとか、家族と過ごす時間を増やしたいとった気持ちで、退職ないしは休職する方もいます。

50代でも、世界一周とか挑戦的な辞め方をする方もいますね。勤続年数が長いと、社内の特別休暇制度など利用しやすくなるというのもあります。実際にその制度を活用して、地方議会選に出馬した方もいます。

キャリアブレイクをした人の境遇・年代はさまざまですが、転機と捉えて前向きに過ごした人は、キャリアブレイクの後の人生に良い影響を与えていますし、当人も「キャリアブレイクをしてよかった」と語っています。

ただ、私としては、年代を問わず離職・休職を推奨するというスタンスではなく、いざというときは「キャリアブレイクという選択肢があるよ」という位置づけでとらえています。本当にキャリアブレイクをするかどうかは、最終的にはご自身でゆっくり考えて決めることだと思います。

想定外のキャリアブレイクは気持ちを落ち着けるのが先決

先に述べたように、キャリアブレイクをする人は毎年約150万人もいます。あらかじめ計画したうえで離職し、留学やスキルアップなど何らかの活動に没頭したいと決めている人ばかりではありません。

心身の不調や会社の問題で、準備なくキャリアブレイクに突入した方も多くいます。そういう方は、最初は辛いはずです。肉親からきついことを言われるのではないか、周囲の人からどう見られるのだろうか、貯金も減っていくばかりだし、新しい職場が見つかるのかもわからない……。いいようのない焦りや不安がたくさんあると思います。

そういう人こそ、離職期間をキャリアブレイクと認識し、この「文化」に触れてほしいと思います。特に、キャリアブレイクを経て、人生をいい状態に持っていった人のエピソードを聞くことは大事です。経験者に実際に会ったり、情報を提供してもらうなどして、気持ちを落ち着けるのです。そうやって足元を固めていき、ゆっくり考えられる環境を何とか自分で作っていくのも大切だと感じます。

そこまでくれば、「ちょっと旅でもしようかな」「講座を受けてみようか」「旧友に会ってみようか」などと、やりたいことが湧き上がってくると思います。その思いを実行に移すと、どんどん選択肢が広がってくるし、助けてくれる人との出会い、本当にやりたいこととの出合いなどがあるでしょう。

新しい道が見えてくると、希望が湧いて、心も前向きになります。不測の事態でキャリアブレイクをしてしまったら、キャリアブレイクという旗を探してみてください。そこには同じような状況の人やヒントが少しはあるかもしれません。

この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

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