経験を仕事“偶然”のきっかけから子育てを楽しめるように。それを“偶然”ではなく、仕組み化したい!(社会起業家[子育て支援分野]/森祐美子さん)
多様な働き方のリアルを聞きました!どうやって自分の仕事を確立したのか。言葉にならない孤立感を抱いた子育て経験から、自分が体験した状態は社会に埋もれ続けてきた課題と認識。子育て中の一人ひとりが抱える課題を、子育てやまちを豊かにするアイデアに変えるべく、「対話と出番があるカフェ型居場所」づくりなどの事業を展開する、社会起業家の森祐美子さんにお話をうかがいました。
プロフィール
NPO運営、起業家森祐美子
仕事内容と自分らしいビジネスアイデアの見つけ方
どんな仕事をしていますか?
孤独感を感じやすい子育て環境をなくし、まちで子育てをすることが当たり前になる社会をつくっていく仕事。具体的には、2つのカフェの運営、ウェルカムベビープロジェクトといった出産祝いをまちから無料で届ける事業などを展開しています。
今の仕事のキャリアは?
2012年に始めたので、現在12年目。
なぜ、今の仕事を「自分の仕事」にしたのですか?
孤立した子育ての状態を次世代に引き継ぎたくなかったためです。その思いに至った背景には、自分自身の孤立した子育て経験があります。言葉にならない孤立感(同じ子育て中の親子と出会いたい、天気以上のことを話したい、ぽっかり穴があいた気持ち、社会からの隔絶感など)を感じていましたが、「もっと大変な人はいっぱいいる」「みんなはできている」「自分は甘えている」と思うと、相談するという発想にまで至りませんでした。
育休中に親子サークルで手遊びや勉強会参加などを通して、自分自身の感じてきたことは「自分の課題だけではない」ということに気づきました(=社会の課題として認識)。子育て支援拠点の立ち上げに関わり、20~80代までの幅広い年齢層の支援者や当事者と知り合うなかで、意識と行動が変わってきました。
たとえば、
●子どもを会議のたびに連れて行き、いろんな人たちに抱っこしてもらうことで、家族以外の「まち」の人に頼れるようになった。
●多様な価値観を知ることで、自分のなかの「ねばならぬ」がなくなっていった。いろいろな「OKなんだ!」に気づいた。
●参加することで社会の一員という感覚を取り戻せた。自分の社会での役割を実感。多くの仲間を得られた。
・・・など。
渦中にいるときには声をいかにあげられないかを痛感しました。自分自身が体験したことは、社会に埋もれ続けてきた課題だったと気づいたので、その状態を自分の子どもたちの世代には引き継がないようにしたいと思うようになったのです。
今の仕事は好きや得意なことですか?
得意で好きなことでもあり、自分の困り事でもありました。不得意な事も含まれていましたが、それは誰かと一緒に創ろうと思いました。
なぜ、今の仕事がビジネスとして成り立つと思ったのですか?
家賃21万円の場所に引っ越し、スタッフに最低賃金以上を払えるようになったとき。
それは2年目のことです。きっかけは2つあります。1つは、その前の物件が再開発で取り壊されることになったので出なければならず、物理的に新たな場に移らないといけないという外的な要因。もう1つは、整備費500万円を得られるコンペ期間中に、組織内やまちの方々とたくさん意見交換・議論をし、アイディアをもらい、持続可能な事業構想をつくれるようになったことでした。
「自分の仕事」としてやっていくと決めてから、やったことはなんですか?
やりたいことをノートにまとめ、企画書と収支計算を行い、他人の意見を聞きました。
あなたの「強み」「弱み」は?
「強み」は、瞬発力、臨機応変力、話を聞くこと、人のいいところを見つけられる、言語化、感性と理屈をいったりきたりするところ、協働する力。
「弱み」は、コミュニケーション力、計画することが好きではない、単純計算、デザイン、同じことをずっとすること、没頭しすぎる、突っ走る。
自分の強みをどう仕事に活かしていますか?
すべてに活かせています。「強み」は今の組織における自分の役割そのものなのです。たとえば、「経営・組織運営の仕方:面談や毎月お店を閉めてミーティングをするスタイル」「様々な協働事業:自分たちだけで事業をやらないスタイル」などの部分に強みが活かされていると思います。
自分の弱みをどう克服していますか?
その力がある人と一緒につくる。同時に自分自身がコンフォートゾーンにいようとしていないか、その外側に意識をむける。
ビジネスを立ち上げる時の最大の壁は?
考えて練っても最終的にはやってみないと分からない不安。やってみないと分からないから覚悟してスタートを切ることで乗り越えました。最後はやりたいが不安を上回っただけだと思います。
ビジネスを立ち上げる前に何を準備しましたか?
類似の活動を行っている場所を訪ね、良いと思うところをメモし、事業計画書をつくり、その先行事例をつくっている方からアドバイスを受けました。
ビジネスを立ち上げてぶつかった壁は?
組織運営。仲良しでいることや嫌われることへの恐れにとらわれるのではなく、「実現したいことは何か」としっかりと向き合うことを学びました。
1人社長ですか? それともチームですか?
チーム運営、約50人のスタッフ雇用とたくさんのボランティアの方々(登録人数300人以上)と一緒につくっています。
仕事に求める優先順位は?
どんなビジョンに向かって進めるか、大事にしたいことを大切にできているか、誰と一緒にできるか、関係性、収入。
法人化していますか?
法人化しています。
会社員を辞めてから今の仕事をはじめましたか?
辞めてから独立。収入がほぼなくなったため、経理を学ぶため週1副業しつつ、個人事業主として開業届、1年後法人化。
はじめての仕事はどのように獲得しましたか?
育休中のボランティアでのネットワークや受けていた講座の講師から声をかけられて。
最初に自分の力で稼いだお金を得たときの感想は? また、その額はいくら?
1か月で3000円。心底、嬉しかったです。
価格はどのように決めましたか? 価格設定で悩んだことは?
価格設定は、持続可能性とものがたり(コンテンツ)を踏まえて検討。常に悩んでいます。
ビジネスが軌道に乗るまでの期間とその間のやりくりは?
2年間。トライアンドエラーをやめないことで耐えました。