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月収数万円の苦境から脱出する秘訣とは? 月収100万円カメラマンに聞く独立のリアル

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カメラマンの坂口康司さんは、IT企業を退職してフリーランスのカメラマンに。しかし、ほとんど稼げず大苦戦。いばらの道を模索しながら、仕事を獲得するコツを会得し月収100万円へ。独立前後の初動にすべきことを聞きました。

カメラ機材の高性能化で参入しやすくなった職業に「カメラマン」があります。しかし、それで食べていくのは容易ではありません。独立前の準備や緻密なマーケティング戦略など、さまざまな努力なしでは、プロへの道はおぼつかない時代なのです。

そこで今回は、『カメラマンになっていきなり月収を100万円にする方法』(自由国民社)などの著書のある、カメラマンの坂口康司さんにインタビューを実施。カメラマンのみならず、独立して成功するための秘訣をうかがいました。

坂口さんのメインの業務は、レンタルスペースや民泊住宅の撮影。魅力的に撮られた物件の写真が欲しいというニーズに応える仕事です。

開業当初は月に数万円しか稼げなかった

学生の頃、「起業したい」という人が周りに何人もいて、実際に起業したり、フリーランスとして独立する人が結構多かったのです。そのおかげで、「起業って、そんなに大変なことではないのだな」という心構えができていました。大学卒業後はIT企業に就職しましたが、「自分もいずれは独立したい」という思いがありました。

カメラマンとして独立する前は、社内でマーケティングの業務に携わっていました。その一環で、写真や動画の撮影だけでなく、サイトの制作も少しできたりなど、スキルが積み上がっていました。

「これなら食いっぱぐれはしないかな」という安直な思いで独立したのが、本当のところです。発注してくれるクライアントが存在しない状況で、フリーのカメラマンになったわけです。コロナ禍前の2018年でした。

独立当初は、Facebookでつながっている知り合いに声をかけたり、クラウドワークスなどのクラウドソーシングのサービスを使って受注をしようとしました。

しかし、受注にはなかなかつながりませんでした。開業からしばらくは、月の売り上げが数万円台という状況でした。たまたまですが、会社勤務時代に株式投資をしていて、少ない元手ながら株価がかなり値上がりしていたため、それで救われました。

もともと営業するのが苦手だったというのもあり、これを打開する妙案はすぐには思いつきません。「なにか、やり方に問題がある」という激しい焦りを感じました。

結局、月々20万円ぐらいの収入を得られるまで約2年かかりました。それからあとは、マーケティングなど様々な工夫が実っていきました。そうこうしているうちに、コロナ禍がやってきました。この出来事は多くの人には逆風だったと思いますが、飲食店が一時休業したことで、レンタルスペースの需要が急増し、撮影の依頼がいきなり増えました。それが追い風になったというのもあります。

今では月に100万円を稼げるようになっています。

独立前に半年分の生活費と月収5万円の副業実績はマスト

著書でも力説しましたが、開業から半年間は、無収入でも生活していけるだけの貯金を確保しておいてください。

どんなに準備をしても、最初から思い通りにうまくいくことは、まずないからです。そして、月に5万円は収入が入る副業を独立前にしておくことです。月にそれだけでも副業収入を得られるのであれば、それを伸ばしていけばいいわけですから。

自分は、本当にゼロから独立してしまって、とても大変でした。独立するにあたって、お金の面でのリスクは、できるだけ減らした方がいいです。

また、開業前後に得た実績はないがしろにしないことです。自分の場合、レンタルスペース撮影の実績がそこそこあったから、そのあとでマーケティングを仕掛けて広げることができたという側面があります。0を1にしたら、それをもっと広げる視点を持つわけです。

技術の向上だけを頑張っていないか?

つくづく実感したのは、天才と凡人では攻め方は違うということです。自分の周りには優秀な経営者の卵が何人かいて痛感したのですが、彼らと自分とは全然違う。彼らがやることは、百発百中ですごく伸びている。他方、自分にはその才覚がありません。

では、普通の人はどうしたらいいのかといえば、地道にコツコツ頑張って、ささやかでも自分独自の強みをいくつか持つこと。そして、周りの人に応援される人間になることです。自分の力だけで進んで行くのは無理なので、周りの人に助けてもらうような人間にならなければいけません。

また、分野は問わず、フリーランスの方は、何かしら専門分野を持っていらっしゃいます。そして、その分野の技術を、より高めようと頑張っているかと思います。

ですがそれゆえ、他の重要なことに目配りができなくなっている面があるように感じます。それは、マーケティングであったり、お客様とのコミュニケーションであったり、フリーランスとして学んで活かすべきことはいろいろあるのです。

もし、独立後の仕事が順調ではない場合、技術の向上だけを頑張っていないか、自問してみましょう。そこから気づくことはあるはずです。

ところで、冒頭でクラウドソーシングサービスに触れましたが、独立の初期段階では絶対活用した方がいいです。仕事自体は取りやすいし、経験も積み重ねていけます。ただ、単価の安い案件が多く、やりがいも乏しいことが多いので、あくまでも軌道に乗るまでの間と考えておきましょう。

健全な自信のなさを持つ

稼げる人になりたければ、「一生懸命さ」、「誠実さ」、「素直さ」は必須のマインドセットと考えてください。そうした人徳がないと、人から愛されず、最初の依頼はあってもその後のリピートはなくなっていきます。

圧倒的な技術力があるとか、世間から天才とみなされている人であれば、ぶっきらぼうで自信過剰でも許されるかもしれません。ですが、成功した経営者のほとんどは、誠実さや素直さといった人柄を備えているものです。

そして、「健全な自信のなさ」も、独立間もない頃は特に大事なマインドセットとなります。自分はカメラマンとして開業した当初は、撮影技術に自信がなく、「実はもっと良い撮影の仕方があるのではないか」など悩みながら、腕を磨いてきて、今でも「もっともっと撮影技術を高めなければ」という切迫感を抱いて努力し続けています。

それとは逆に、駆け出しの段階で自信がありすぎる人は、その後は伸び悩んで大成していません。ただただ自信がないのはいけませんが、向上心へと結びつく自信のなさはあった方が良いのです。

坂口康司

株式会社トータルクリエイツ代表取締役。法政大学卒業後、東証プライム上場のITベンチャーに入社し、新規事業の開発に携わる。その後転職し、撮影サービスの立ち上げに伴いカメラマンとしてのキャリアをスタート。執行役員として撮影サービスや海外向けメディア事業の拡大に従事。独立後は、レンタルスペース運営者の売上を増やすカメラマンとして実績を上げる。著書に『堅実な資産運用をしたいならこの1冊!レンタルスペース投資の教科書』(自由国民社)と『カメラマンになっていきなり月収を100万円にする方法』(自由国民社)がある。

この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

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