時間術

「時間がない」からリスキリングできない人にやって欲しい、未来のお金や価値を生み出す「時間の棚卸し」方法とは?

ログインすると、この記事をストックできます。

今話題の「リスキリング」ですが、そのための時間やモチベーションの確保に苦慮している人は多い―そう説くのは(株)プランノーツ代表取締役の高橋宣成(のりあき)さん。どうすればうまくできるのか、秘訣を伺います。

「新しいスキルを学び、新しい業務や職業に就くこと」を意味する「リスキリング」。今では誰もが知る流行語にですが、実際に取り組むとなると、そこにはさまざまハードルが待ち構えています。

【写真】『デジタルリスキリング入門』

例えば「時間の確保」。いくつかの調査結果を見ると、リスキリングができない理由として「時間がない」というのが上位にあります。日本のビジネスパーソンは、おしなべて時間的余力がないなか、どうやってスキル習得のための時間を捻出するか。この、多くの人が悩むポイントについて、リスキリングに詳しい(株)プランノーツ代表取締役の高橋宣成(のりあき)さんに伺いました。

プラスの気持ちに転換してモチベーションを保つ

リスキリングを始めようという動機として、危機感から出発するパターンが多いが、それだけだと長続きはしないと高橋さんは語ります。

「はい、『このままでは失業するかもしれない』という危機意識は持ってもかまわないのですが、それのみでは新たなスキルを身につけるまで気持ちが持ちません。モチベーションを保つには、どこかの時点で、自己実現の欲求や成長したいという意志に切り替える必要があるのですね。もっと具体的に言うと、世の中に貢献したいとか、組織内で役に立ちたいとか、そういったプラスの気持ちに転換する必要があります。

学校で嫌々やらされてきた記憶から、何かを学ぶことに抵抗を覚える人もいるでしょう。けれども、自分の意識を変えていけば、学ぶこと、働いて誰かの役に立つこと、働くことを通じて成長することが幸福感につながるのです。その事実に気づいてほしいというのが、僕の最終的な目論見としてあります。

それに、得たスキルを会社で生かして、現場が良くなり、お客さんも喜ぶという体験を味わっていくと、善循環するサイクルとなります。どんどんスキルも上がっていくし、周りもハッピーになっていくし、報酬面でも報われるはずです。」

時間がない人は「時間の棚卸し」を

リスキリングができない理由として、さまざまな調査結果を見ると「時間がない」が上位に食い込んでいます。働く日本人の永遠のテーマとも思えますが、ここはどう打破すべきかについて、高橋さんは意外な時間術を提案してくれました。

「まず、「リスキリングには、まとまった時間が必要だ」と思い込んでしまうと、頓挫しやすくなります。失敗する方々を見ると、「ある程度の空いている時間を見つけて学習しよう」という考え方が多いのですね。

最初のステップは、自分の時間の使い方を見直すことです。「時間の棚卸し」ですね。 Googleカレンダーなどを用いて、1日24時間という時間枠で、何にどれだけ使っているかを細かく書き込んでみてください。それを見て、時間を割く必要性がないと実感したものは、すみやかにやめてしまいましょう。やめる・やめないの目安となるのは、そのタスクが未来に積み上がる価値を生み出しているかどうかです。未来のお金、時間、信頼などの価値を生み出せそうであれば、それは立派な自己投資となります。そうではなく、せいぜい現状維持にしかならないものは「浪費」と呼んでいます。浪費と判定したら、それはやめられるか、やめられないけれど人に任せられそう、あるいはそれにかける時間が短縮できそうかを検討してください。」

意外だったのは、現状維持のための時間も浪費になるということ。やめるべきは時間の無駄になることと考える人は多いかもしれないが、現状維持のための時間も無駄になるという。しかしこの基準で「時間の棚卸し」をすればかなりの時間的余裕ができるかもしれない。

「そして、どのようなリスキリングであれ、極端に言うと1日5分でもできることあるはずです。それができたら10分に増やすといった感じで、まずそこからチャレンジしてみましょう。こうしたことを実行するだけでも、かなりの時間を生み出せるはずです。まずはそこから始めるのが1つ。

もう1つは、パソコンのショートカットキーを少しずつ覚えるなど、汎用デジタルスキルを会得して、時間的な余力を生み出すことです。1つ1つは小さなものですが、積みあがるとバカになりません。そうしたプロセスを経ることで、自己投資できる時間が増えていきます。その時間を、もうちょっと難易度の高いスキル習得に再投資していく。このサイクルをどんどん回していくのが、おすすめするやり方です。早ければ2、3か月で成果が出てきて、成長欲求を満たす機会も訪れます。」

お金を払ってリスキリングの効率を高める

高橋さんは著書の中で「モチベーション」と「時間」に加えて、「お金」がリスキリングの活動に必要な3種類のリソースとしています。リソースとしてのお金についてポイントを伺いました。

「リスキリングがうまくいかない人を見ていると、それにかけるお金を渋ってしまうという傾向が見受けられます。正直な話、日本のビジネスパーソンは、リスキリングに関して財布のひもを絞りすぎていると思います。

世の中には無料の学習コンテンツがたくさんあって、それだけでも学ぶことはできるでしょう。ですが、プログラミングをはじめとするデジタルスキルの自己学習は、初期段階からかなり大変なのです。

そこで、しっかりとできた有料講座を受ける、お金を払ってメンターをつけるといった選択肢を検討してみましょう。たしかに、それなりのお金はかかってしまいます。でも、よく考えていただきたいのは、効率の良くない学習にかけた時間をお金に換算したら、お金を出して教えてもらった方がお得ではないですかという視点です。

そうした、天秤にかけてコストパフォーマンスを計算することを、はしょる人が多いと思います。お金をかけるという選択肢は、ぜひ視野に入れておきましょう。

高橋宣成(たかはし・のりあき)
株式会社プランノーツ代表取締役/一般社団法人ノンプログラマー協会代表理事。東京工芸大学大学院非常勤講師。1976年5月5日こどもの日に生まれる。「日本の『働く』の価値を上げる」をテーマに、ノンプログラマー向けのデジタルリスキリング支援、越境学習によるDX人材育成、登壇、執筆、メディア運営、コミュニティ運営などの活動を行う。著書に『ExcelVBAを実務で使い倒す技術』『詳解!GoogleAppsScript完全入門』(秀和システム)、『パーフェクトExcelVBA』『Pythonプログラミング完全入門』(小社)などがある。

この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

ログインすると、この記事をストックできます。

この記事をシェアする
  • LINEアイコン
  • Twitterアイコン
  • Facebookアイコン