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絶対に失敗するカフェの作り方カフェ経営。新規客とリピーター、どっちが欠けても確実に潰れてしまう!? 潰れない人気カフェの作り方

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横浜で土日の行列の絶えない喫茶店「珈琲文明」のマスターがお伝えする、小さなカフェの立ち上げ方と長く続ける方法。今回は、小さなカフェを運営するために大切な「潰れないカフェの作り方」について伝えます。

マスター1人で経営する小さなカフェを立ち上げて、長く続けていく方法をお伝えしていくこの連載ですが、驚くほど具体的に、かつ「絶対に失敗する方法」をお伝えしながら、逆張りをすることで成功へと導くメソッドを公開しています。今回は、個人店、マスター1人の小さなカフェを運営する上で大切な「潰れないカフェの作り方」を大公開。

珈琲文明店主・赤澤智がお伝えします(写真:珈琲文明提供)

新規とリピーターはどちらかが欠けると「死ぬ」

さて、そろそろ、「新規とリピーターはどっちが大事論争」に完全決着をつけたいと思います。最初にお伝えしたいのは、「リピーターがいない(大都市駅前などではない立地の)個人店は確実に潰れる」ということです。

しかし、このリピーターというのは須らく、例外なく、最初は新規だということ。

これを忘れてはなりません。そんなリピーターも「固定客」ではなく「流動客」であるため常に新規を迎え入れなくてはやはり潰れてしまうという話は前回お伝えしましたね。

ここまで読んで、多くの人はきっと「なんだ、つまり結局どっちも大事ってことか、普通だな」と思いましたよね。ただ、「どっちも大事」というこのなんともフワっとしたニュアンスをもっともっととんでもなく重く捉えてほしいんです。

なぜかというと、店が潰れるのを店の死と捉えるならば「どっちかが欠けると死ぬ」んですよ? どうです? どっちも大事レベルの域ではないですよね。

新規にせよリピーターにせよ「顧客というのはお店にとっての血液である」と言う表現をするとピタっとハマります。

出血が多いと死んでしまうということだけではなく、常に体内(店内)を血(顧客)は循環していて、常に新しい血を作り出さなくてはならず、体内にとどまっていた血もいつかは全てが一掃されて、全て入れ替わります。

つまり「出血(リピーターの流出)は最小限にして、かつ常に新鮮な血(新規)を作り出すべく栄養素(クオリティ、サービス、クレンリネス)を取り入れ続ける」ことが出来なければお店は死んでしまうのです。

大袈裟な話でも何でもない事実ですのでどうか「新規&リピーター」いずれかが欠けても死ぬということをオーナーは頭の片隅ではなく中心に置いておいてください。

リピーター重視が新規軽視になっていないか

さて、その中でも「新規」に対する思い入れが甘く、軽く考えている人が、とりわけ個人店オーナーの人に多いように感じます。

だからといって、必死に新規客を集めろと言っているのではありません。ましてや、「広告宣伝をせよ、駅前でチラシを配れ、新規の方○〇円引きをせよ」ということでもありません(これらは逆に赤澤メソッドのNG集です)。

ここから、新規客を大切にするというのはどういうことか、これについてお伝えしていきます。

例えば「コーヒー2杯目は半額」といったお店があります。
このお店の狙いはもちろん「客単価を上げる」ことにあると思います。
大箱で座席に余裕のあるチェーン店ならこれも一理ある話だとは思いますが、小規模個人店でこれをやるのはNGであると私は考えます。

コーヒーを2杯飲み、そこに居続けるお客さんと引き換えに失っているものがあります。

それは、そこに座るかもしれなかった新規のお客さん(=未来のリピーター)の来店チャンスです。ここで大きなロスをしていることに気づいていないオーナーさんががあまりに多いと思います。

「いや、でも完全に満席ならまだしも席は空いているんだから、新規の人は空いている席に座ればいいわけで……」と思った方、その考えはぜひとも改めてほしいと思います。

満席でなくとも、すぐ隣の席に人がいる時点で、居心地という点では新規来店動機の弊害になる可能性は大です。

珈琲文明の外観(写真:珈琲文明提供)

お客さんは常に不特定一般の人を前提とすべし

こういう一見わかりにくいのですが「リピーター重視(新規軽視)」のスタンスの個人店はかなり多く見受けられます。

「新規獲得は既に顧客である人への営業の5倍のコストと労力が要る(「イチゴの法則」などと呼ばれます)」と言われているからといって易きに流れてしまうオーナーさんや、既存客へのサービスだけに注力し、お客さんを大切にしている「気になっている」オーナーさんたちがなんと多いことか。

お客さんに対するオーナーの向き合い方はズバリ、「お客さんは常に不特定一般の人を前提とすべし」なのです。

マインドセットとしてまず「お客さんは知り合いじゃない人」ということを常に頭に入れて日々営業をしてほしいのです。

もちろん、友人や知人が来店することだってあるしそれはそれで嬉しいことですしありがたいことでもあります。

さらに、最初は新規だったお客さんが何度か来店されてリピーターとなり、やがて常連さんと呼べるようになると、ある意味では知人や友人のようになります。場合によっては営業を離れたプライベートでも交流したり遊んだりすることもあるかもしれませんし、それはそれでハッピーなことです。

しかし、あくまでもそれは結果論としてそういうお客さんになったということで、日々の営業の中で「常連さん相手の営業」を頭の中心に据えて営業するというのは絶対良くないと思うのです。

「お客さんは常に不特定一般の人」という意識を常にもっておくことだけでも相当違うはずです。 まずはとにかく意識の問題です。

常連さんばかりの店は入りづらいもの

こういう意識で運営していればきっと、「カウンターにいるのは常連さんばっかりで世間話に花が咲き、カウンターに新規のお客さんはあまり座らない」ということにはならないはずです。

仮に、常連さんばかりのカウンターに入ってくる新規のお客さんは、元々人恋しくて出逢いを求めていたり、会話のキャッチボールをそれこそ不特定多数の人と楽しむのが好きな人だったりするかもしれませんね。

スナックやクラブやバーではそれもいいのかもしれませんが、カフェのような業態ではシラフですし、常連さんの中に飛び込んでもらうのは、なかなか難しいのが実情です。

とにかく!私が声を大にして言いたいのは、意識すべきは常連さんだけではダメだということ。お客様は「全年齢、性別、所得層、国籍、そして全時間帯」全てが対象となるものであり、またそうでなければ単価の低いこの商売を続けていくことはできません。

まずは脳内であなたのお客さんはあくまでも「知らない人」であるということを、脳のど真ん中に置いて運営していってください。

ある意味、自分がどこかで買い物をする時に接客をしてくれる店員さんとか、近所の駅の駅員さんとか、日常で関わるすべての人が「お客様予備軍」だということです。

そういう感覚で運営していると、自ずと、不特定多数のお客さんが来る日も来る日も押し寄せる繁盛店になっていく可能性が生まれます。

満席ではないものの、満席感。この状態で入っていくのは新規客にはなかなかのハードル(写真:珈琲文明提供)

新規顧客は生まれ続け、リピーターも生まれ続ける

ところで、長きに渡って営業するとなると、「さすがにリピーターばかりになって、新規のお客さんなんて、飽和するんじゃないだろうか?」と思っている人は多いと思います(かつて私はそう思っていました)。

前回の記事で「リピーターとは流動客である」とお伝えしたのですが、「引っ越した、転勤した、卒業した」という理由で来なくなってしまったリピーターがいるというのとまったく同じ理由で、「引っ越してきた、転勤してきた、入学した」という理由で常に新規の人は必ず、現れます。必ずです。

実際、珈琲文明(私の店)も、創業から17年近く経った今でも、毎日新規のお客さんが来店されます。

それについては心配ご無用です。

新規のお客様がリピーターになり、リピーターがいなくなってまた新規が現れるという循環こそが、「カフェ(喫茶店)が生きている」ということ。カフェの生き様がそこに現れますよって話です。

前回と今回はいわば「集客」の話をしてきました。
これはカフェや飲食店全般のみならず多くの企業にとっての永遠のテーマであると思います。
あまりにも重要なことなので繰り返しておきますね。

「顧客(新規&リピーター両方)=血液」であり、どちらが不足しても死にます。

そして、個人店主の方は「お客さんは常に不特定一般の人を前提とすべし」というマインドセットでいてくださいね。そしてこの連載を読んだ方は、死なない店を作ってくださいね。

珈琲文明・赤澤智でした。

この記事を書いた人

赤澤智
赤澤智珈琲文明店主
脱サラ後40歳でカフェ経営を始め16年。
強み「しっかり腹落ちしたことならば成果が出るまで粘り強くいつまでも続けられる」。
弱み「人見知りが激しく、興味のない物事(人含む)にはまったく関心がない」

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