Interview
インタビュー

《矢本悠馬の仕事論》「人間なんて、みんな変」背が低い、太い、声が高い−−短所は自分だけの個性

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映画「Gメン」に出演する矢本悠馬さんが語る、好きなことを仕事にするために必要なこととは――。

プロフィール

俳優矢本悠馬

1990年京都府生まれ。映画「ぼくんち」(2003年)でスクリーンデビュー。主な出演作に、映画「ちはやふる」(16・18年)、映画「アイネクライネナハトムジーク」(19年)、映画「破戒」(22年)など。ドラマ、CM、映画で幅広く活躍している。

30代になっても高校生役の依頼が来ることが多い矢本悠馬さん。10代を演じるために毎日していること、個性を磨くために行っていることなどについて伺いました。

「大人計画」の先輩たちを嫉妬させたい!

2003年にスクリーンデビューしたのですが、仕事があると学校に行けなくなってしまうことがイヤで中学生のときに1度、芸能界から離れました。ダラダラと学校生活を過ごしていたときに、「目立つことが好きだし、役者に向いてるんじゃない」と親とか友達に言われて、その気になって、専門学校を卒業した後、「大人計画」に研究生として参加させていただくようになりました。「夢をかなえてすごいね」と言っていただくこともあるのですが、まだ俳優として何も確立できていないと思っています。役者の先輩に「役が増えて良かったね」と言っていただくとありがたいなと思いますが、そんなんじゃダメだと思うんです。役者は役がこなければ、作品に関わることはできないじゃないですか。だから「大人計画」で共演した先輩たちを嫉妬させるような、「あいつがこの役をやっているなんて脅威だ」と思われるような怖い存在になりたいです。

役者って実は派遣社員みたい!?

学生時代に憧れたのは芸人やミュージシャン。俳優という選択はありませんでした。色んな現場に行って思うのは「役者は派遣社員みたいだな」ということ。作品の中での立ち位置は求められる役によって異なりますし、それって派遣された先の会社に合わせて仕事をされている派遣の仕事に似ているなって。あちこち“派遣”されたときに、僕が大切にしているのは、役が抱えているコンプレックスをユーモラスに演じることです。背が低い、太っている。声が甲高いなど、自分が短所だと思い込んでいるものは、自分にしかない個性。隠したいと思う部分をユーモラスに見せて行く平和さ。「人間なんて、みんな変でいいじゃん」という考えは、チャールズ・チャップリンや、「大人計画」の現場で学びました。

30代で10代を演じる秘訣は「冷凍保存美容法」?

ドラマ「水球ヤンキース」、映画「ちはやふる」など多くの作品で高校生を演じてきました。今年33歳になりますが、同じ場所で撮影した作品もあり「10回以上卒業したな」と思う学校もあります。最新作「Gメン」は高校1年生の設定。「どうしたら、若々しさを保てるの?」と聞かれて浮かんだのは、1日1回キンキンに冷えた冷水をかぶること。冷凍保存ってあるじゃないですか。あれと同じ原理で、自分を冷凍するわけにはいかないから、冷水を浴びて細胞をシャキッとさせています。効果は分からないけど(笑)。

興味の中に自分を成長させるヒントがある

「面白いマンガを描きたいと思うなら、ほかの現場を見ろ」という手塚治虫さんの言葉を大事にしています。「一流のマンガを目指すのなら、ほかの現場を見てセンスを磨け」ということですが、これは役者も同じと感じています。芝居をたくさん観ることも大事ですが、それだけではなく、大好きなロックのライブの中にも発見がある。このリズムは、セリフの言い回しに取り込めるなとか、この声の使い方は真似できそうとか。興味があるものの中に、自分を成長させるヒントがあると感じます。お笑いも表情とか、間とか勉強になります。

役者は「派遣された先の会社に合わせて仕事をされている派遣の仕事に似ている」

取材・執筆・撮影/翡翠

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