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白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりませんシンママの友人が絶望「仕事もお金も恋愛もうまくいかない」

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読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー
【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】

白川密成

プロフィール

四国第57番札所栄福寺住職白川密成

住職。「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。

今日のお悩み

仕事も恋愛もお金もうまく行かないシンママの友人が人生に絶望しています
50 代・女性・ライター

40 代後半の友人が自分の人生に絶望しています。彼女は離婚歴があり、発達障害の息子さんを抱えています。パート仕事では不安定なので、公務員試験も受けましたが落ちてしまいました。頼みの綱である副業も上手くいかず、思うように稼ぐことができません。またいい出会いを期待しても出会う男性は全て問題がある人ばかり。「仕事も恋愛も上手くいかず、お金もない自分に未来はあるのだろうか?」と SNS でキラキラしている人を見てはひどく落ち込んでいます。毎日人生に絶望している彼女を救うにはどうしたらいいのでしょうか?

白川先生からあなたに贈る言葉
「静慮」

力強さを持った人

ご相談、ありがとうございます。お友達の状況、ご本人にとっても苦しく、厳しい日々だと思います。しかし相談を拝読して、様々なことにチャレンジする気力を持った、力強さを持った方であるのだろうなと想像しました。
「もし自分が同じような相談を友人から受けたら、どう答えるだろう?」と思いながら、答えてみようと思います。

「ダメな自分」も一緒に連れて行こう

まず、最初のアドバイスです。多くの人が自分の現在の状況にしても、心の内面にしても「悪いところ」を“つぶして”、「いいこと」を加えようとすると思います。
今回の相談内容で言うと、「離婚歴」「脱出したい会社」「問題のある異性との出会い」などですね。
こういった、ともすれば「よくない自分(の境遇)」と、捉えてしまいやすいものを、あまり単純に「悪いこと」と捉える必要はないと思いました。平凡な言い方かもしれませんが、例えば離婚にしても、ご存じのように毎年、大量の夫婦が離婚しているわけですから、まったく特別なことではありません。むしろ悪い関係を我慢してずっと続けることに比べたら、良き側面もかなりあるでしょう。
また自分自身の能力や性格にしても、「ここが悪い、あそこが駄目だ」と指折り数えていても、誰にとっても、きりのない話です。

欠点も一緒に連れていく

そういった「欠点」に感じる存在、ついつい“ダメな自分”だと思っているものを、心の中で攻撃して、捨てようとするのではなく、あえて「一緒に連れて行く」ようなモチベーションでもいいのかなと想像しました。
そう思うのは、私自身がよくそう考えるからです。僧侶である私にも、ここでは書き切れないほど(!)の性格的な欠点、弱点があります。「あそこをこうしていたらなぁ」という後悔も少なくありません。かつては、そういったものを、「つぶそう」「なくそう」という気持ちがありました。
しかし今は、先ほど書いたように、自分の欠点も「一緒に連れて行く」感覚を大事にしています。こういう「心の持ちよう」は、根本的な生き方のコンセプトとして、意外に大事なような気がしています。

行政サービスにも注目

基本コンセプトを定めたうえで、もう少し具体的なことをアドバイスさせて頂くと、仕事のことについて、人との出会いについて、意外と行政のやっている公的な就労支援や、専門家の紹介などを、知らない人が結構、多いようです。
私もほとんど知りませんでしたが、行政関係から依頼を受けて講演をする時などに、色々な資料やイベント予定を見せて頂くと、無料や格安のビジネスに関した行政サービスやイベントが結構あり、内容やゲストも充実しているものが結構ありました。
これらは、もちろん「タダの無料」ではなく、税金によって企画されているものなので、「もっと多くの人が知ればいいのになぁ」と思うことが多かったです。
「灯台下暗し」ではありませんが、個人的な紹介やなどに加えて、市役所や労働局などのに足を運んで情報収集することも試してみるのも、意外に有用なことがあります。

「静慮」

今回、相談者の方に贈る言葉は、「静慮」です。普通に使う時は「せいりょ」と読みますが、仏教語として読む場合は、「じょうりょ」と読むことが多いです。

「心を静めて考えること」という意味があり、原語はパーリ語のジャーナで、音訳すると禅那(ぜんな)となり、「禅」という語は、それを縮めたものです。
「思い」は、妄想を含めてどんどんと広がっていきます。そこで「心を静める」ために、最初に書いたようにまずは、自分自身の過去や性格を、悪者として攻撃することをやめ、「つらいことも多いけれど、自分なりに力いっぱいやってきたよな」と自身にねぎらいの言葉をかけ、「私」に対して敬意を持った態度を取ってみてください。他者に対する敬意を持たない態度が、関係性を悪化させるように、自分自身に敬意を欠くと、「自分と自分との関係」が悪くなります。
そして「静か」ということも大切なキーワードになります。状況が悪いとどうしても、心がざわざわしてしまいます。「ずっと」は無理でも、まずは 1 日や 1 時間と時間の枠をつくって、「あえて」音や情報、人から距離をとって落ち着いてみる、ことを試してみてください。付け加えると、しっかり「自分」と向き合ったうえで、時々に「自分」から距離をとることも意識しましょう。

【今日のまとめ】

  • 自分の欠点や過去に「敬意」を持ち“一緒に連れて行こう”。
  • 意外に多い様々な「行政サービス」にも注目してみよう。
  • 「静慮」の言葉をヒントに、様々な方法で落ちついてみよう。

【直感・運気アップ】

市役所(公共行政機関)や図書館に 1 時間ずつ、滞在してみよう

この記事を書いた人

白川密成
白川密成四国第57番札所栄福寺住職
「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。

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