Interview
インタビュー

演技から噓くささを削り取り、作品に自らの「内臓」を出す。「腸で考える」という斎藤工の仕事論

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斎藤工さんがスクリーンで躍動するため大切にしているのは、演技から噓臭さを削ること、作品に自らの「内臓」を出すこと。たどり着いた答えは「頭ではなく腸で考えること」でした。

プロフィール

俳優・映画監督斎藤工

1981年8月22日生まれ、東京都出身。2001年に俳優デビュー。映画『シン・ウルトラマン』(22)に主演。2023年は、1月より出演作が続々公開。9月には最新長編監督作 映画『スイート・マイホーム』の公開が控える。

斎藤工さんがあこがれる故・松田優作さん。生命力あふれるその演技を体現しようと斎藤さんが立ち至ったのが、「頭ではなく腸で考える」境地でした。噓臭さを削り落とすための演技論も語ります。

日常で感じた「本物」で噓くささを削る

表現の世界は正解が一つではない。だからこそ、自分の嘘臭さと向き合って、いかに対処していくかということを、繰り返しすることしかできないということに、いつの日か気づきました。それには自分がこれは本物だなと僕の感覚で思ったものを、自分に採り入れるっていうことが、嘘くささを少しでも削り取る作業になるのかなって。それは芸術だけじゃなくて、食べるものとかそういう日常にある全てがそう。自分の表現に繋がらないものほど、そこに結実していくんじゃないかなと思っています。

役者は作品に「内臓」を出してこそ

浅野いにおさんの『零落』を読んだとき、浅野さんはちゃんとご自分の中にある「内臓」を描いていると感じました。役者としての僕は時々、内臓が出てないときがあるんです。現場で撮影をしていると、監督からOKが出たけれど、自分では足りないと思うこともあって、仕事が作業的に進んでしまうことがあるんです。

一方で、やり切ったと思った作品でも、それが、映像に映らないこともあります。コントロールしきれない部分が、面白さでもあるし、難しさでもある。一番怖いことは、側だけで成立してしまうものに、不安を持たなくなること。撮った写真で、選ばれなかったもの。消去されてしまう写真に映っている自分の中に、もしかしたら向き合いたくない本当の自分がいるのかもしれないということを常に考えています。

全身で表現するため「腸で考える」

俳優は頭の中で考えたものを表現するっていう仕事のようで、意外とフィジカルが物を言うと世界。僕が好きなATG(日本アート・シアター・ギルド)の頃の映画は、画角として人間を動物的に捉えていました。寄りではなく、俯瞰して人間という生命体を追いかけるようなカメラワークがあった。松田優作さんの映画を代表として、それが魅力的でした。僕はその輪郭の躍動みたいなところが、実は一番大事なんじゃないかなと思うんです。

そして、人が自身の輪郭を躍動させるには、「内臓」が大事。時代劇をやるときに、なぜ切腹をするのかを考えてみると、一番大事な丹田、正中線を自ら切る。腸の部分です。人類の最古の祖先ともいわれるミミズのような生物は、脳みそがなく、3つの腸で構成されている。これらのことからも、思考は腸から始まるのだと考えるようになりました。腸に意識があると、頭にも足にも意識が届く。「いい場所にストーブを置いたな」という変化がありました。

周囲に良いきっかけ与える存在に

発酵と腐敗は同じ現象でありながら、前者は人間にとっていいもので、後者は悪いもののように思われがちです。でも自然界で見ると、腐敗したものは土になるなどの役割を持っていますし、発酵することによって、元の栄養価を上回ることがある。それはやっぱり素晴らしいし、人間もイコールだなと思います。僕がいることによって周囲に良いきっかけを与えられているのか、一方で気付きづらいんですけど、自分が存在していることでネガティブな方に進んでいるのか。発酵に向かっているか腐敗に向かっていないかということに気を配っていきたい。社会の中には「無自覚の腐敗」という状態があまりにも多いので、緊張感持って見定めていかなくてはいけないと考えています。

「自分が存在することによって、発酵するか、腐敗するか。見定めていきたい」


スタイリスト:三田真一
ヘアメイク:赤塚修二
取材・文・写真/翡翠
編集/MARU

©2023浅野いにお・小学館/「零落」製作委員会

公開情報

『零落』
日時:3⽉17⽇(⾦)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー
製作幹事・配給:⽇活/ハピネットファントム・スタジオ
出演:
斎藤⼯
趣⾥ MEGUMI
⼭下リオ ⼟佐和成 吉沢悠 菅原永⼆ ⿊⽥⼤輔 永積崇
信江勇 佐々⽊史帆 しりあがり寿 ⼤橋裕之 安井順平 志磨遼平 / 宮﨑⾹蓮
⽟城ティナ / 安達祐実
原作:浅野いにお「零落」(⼩学館 ビッグスペリオールコミックス刊)
監督:⽵中直⼈
脚本:倉持裕
公式サイト:https://happinet-phantom.com/reiraku/#modal
公式ツイッター:https://twitter.com/reirakumovie
公式Instagram:https://instagram.com/reirakumovie

この記事を書いた人

翡翠
翡翠執筆・写真
音楽や映画、舞台などを中心にインタビュー取材や、レポート執筆をしています。強み:相手の良いところをみつけることができる。弱み:ネガティブなところ。

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