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独立起業の先輩たちからノウハウを学ぶ〈起業家・宮崎晴美さん/前編〉フリーランス広報・PR。自ら「売り込んだことはない」のに仕事が途切れないわけは?

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10年前、出産・育児をきっかけに独立した「STORIES Inc.」代表取締役の宮崎晴美さん。当時は珍しかったフリーランスの広報・PRの道を選びました。自分から売り込んだことはないのに、仕事が途切れないワケを聞きました。

 自分の「好き」やスキルを生かして独立するためには、会社員時代にどのような準備や努力が必要なのかーー。
企業の広報コンサルティングやPR業務サポートを手がける「STORIES Inc.」代表取締役の宮崎晴美さん(46)にお話をうかがいました。

 宮崎さんは2013年、長男の出産を機に当時はまだ珍しかったフリーランスの広報として独立し、2019年に設立した同社は毎月の売上高が100万円を超える好調ぶりです。

 現在は小学生の2児を育てており、2015~2017年には、当時ワーキングマザー向けサイトだった「LAXIC(ラシク)」の編集長も務めました。会社員時代の2005年に日本PR協会の「PRアワード」を授賞した宮崎さんですが、ビジネスを成功に導いた最大の要素はそんな経歴よりも「人脈」だったといいます。

 宮崎さんに人脈作りの秘訣を尋ねると、そこには今すぐ実践したくなる目からウロコのノウハウが詰まっていました。まずは宮崎さんの経歴と、人脈作りに役立つ一つ目のノウハウを紹介する前編です。

プロフィール

PR・広報宮崎晴美

(みやざき・はるみ)新潟県上越市出身。STORIES株式会社代表取締役社長。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業後、外資系テレビ局であるブルームバーグテレビジョン入社。その後、国内大手PR会社プラップジャパン、就職人気ランキング常連のTAKAMI BRIDALを経て、2013年よりフリーランスに。2019年、STORIES株式会社(ストーリーズ)を設立し、オウンドメディア編集を含めた広報戦略構築を行う。
先輩起業家Profile

宮崎晴美(みやざき・はるみ)新潟県上越市出身。STORIES株式会社代表取締役社長。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業後、外資系テレビ局であるブルームバーグテレビジョン入社。その後、国内大手PR会社プラップジャパン、就職人気ランキング常連のTAKAMI BRIDALを経て、2013年よりフリーランスに。2019年、STORIES株式会社(ストーリーズ)を設立し、オウンドメディア編集を含めた広報戦略構築を行う。

「一緒に仕事した人」が人脈になる

 宮崎さんは2013年、広報部門のマネージャー職を務めていたウェディング企業のタカミブライダルを退職し、当時はあまり前例のなかったフリーランスの広報として独立。2019年には「STORIES Inc.」を設立し、現在まで30社以上の広報サポートやオウンドメディアの支援を手がけてきました。現在は7社の広報サポートなどを手がけており、毎月の売上高は100万円を超えるといいます。

 独立してから、次男の出産でいったん仕事を打ち切った時期以外は、仕事の依頼が途切れたことがないという宮崎さん。その理由はどこにあるのでしょうか。

「実は、自分から企業に仕事を売り込んだことはあまりなくて。以前一緒に仕事をしたことがある人や、その人の知人といった人脈を介して仕事を依頼されているケースがほとんどです」

社会人としてのスタートは外資系テレビ局

 2度の転職を経て独立した宮崎さんですが、これら3度の転機も、人脈に導かれたものでした。宮崎さんの強力な武器となっている人脈作りのスキルはどこから生まれたのか。まずはその経歴を振り返ってみたいと思います。

 宮崎さんが新卒で就職したのは「ブルームバーグテレビジョン」という外資系のCSテレビ局で、仕事内容は広報とは全く無関係でした。当時の社長が子育て、大学院生、社長という3足のわらじをはいて活躍していたことにあこがれ、すでに得ていた大手企業への内定を蹴ってインターンを志願し、同社に就職しました。

「結婚や出産という具体的なイメージはまだありませんでしたが、当時から自分はずーっと仕事を続けていきたい人間だという思いは強く持っていました。社長の著書を読んで、『これだ!』と思ったんです」

広報との出会いで人生が転がり始めた

 ただ、外資系特有の新人研修の乏しさや夜勤も多い多忙さから「このままで自分の将来は大丈夫なのか」と疑問を持つようになり、次第に転職を意識するように。入社から約1年後に会社を辞める際、当時の上司から大手PR会社「プラップジャパン」の社員を紹介されたことが、広報という仕事との出会いでした。

 上司から紹介されたプラップジャパン社員とのカジュアルなランチ会で、宮崎さんは会食した2人のうち1人から「私の下で働かない? いつから来られる?」と熱い誘いを受け、転職を決意します。

「当時、女性の広報担当者が活躍している姿がメディアなどでしばしば伝えられており、おぼろげに興味は持っていました。お話を聞いた先輩が活躍していることからも、この仕事なら長く続けられるかなと考えました。自分の意思というよりは、出会いで人生が転がったという印象でしたね」

ピル啓発のプロジェクトで知った魅力

 転職した宮崎さんは「つらくてつらくて、辞めたいと思ったことは数知れずでした」と言いつつ、広報という仕事にのめり込んでいきます。

 当時まだ「性に奔放な人か、病気の人が使うもの」といった偏見が強かった低用量ピルの認知度を高める製薬会社4社共同のプロジェクトに参加すると、産婦人科医のインタビューを女性誌に掲載したり、都心にピルの情報を伝えるカフェを開設して座談会を開いたりといった取り組みを次々に打ち出しました。その結果、男性読者も多いビジネス誌「日経ビジネス」に低用量ピルの記事が載るという、当時としては画期的な成果も実現したといいます。

「現代の女性と戦前の女性では、出産回数の違いなどで生理の回数が全然違う。そんなデータを示すことで、現代の女性にとって低用量ピルが必要な理由を理解してもらえました。今では生理痛対策などとして女性がかなり気軽にピルのことを話せるようになりましたが、あの時の取り組みが少しは役に立ったのかなと思っています」

 この経験が、広報という仕事の魅力に目覚めるきっかけになりました。

「世の中をガラッと変えられるとまでは言わないけれど、人々の考え方にちょっとした変化を与えたり、小さくても確実にいい方向に向けて波を起こしたりできる。それが広報という仕事の魅力ですね」

「全力」と「率直」の両立で信頼を得る

 宮崎さんのビジネスを支える「人脈」作りのノウハウの一つ目は、この時期に確立しました。それは「常に全力で仕事に取り組むこと」と、「その場を繕わず、思ったことを直接相手に伝えること」の両立だといいます。

「与えられた仕事はめちゃくちゃ一生懸命にやります。仕事をする以上は、自分が出せる最大限のパフォーマンスを出す。それしか考えていません」

 同時に心がけているのが、「思ったことを直接相手に伝えること」です。

「相手に合わせてその場を繕っても、信頼を得ることはできません。安易に妥協して落としどころを見つけるのではなく、自分が感じたことをしっかりと伝え、意見が食い違ったとしてもなんとか新しい打開策を見つけていくという姿勢を大切にしています」

PRアワードに輝いたファイバーデトックス

 「ファイバーデトックス」という新しいコンセプトを打ち出し、日本PR協会から2005年の「PRアワード」を授賞されることになった食物繊維のPRプロジェクトでも、この二つの姿勢は存分に発揮されました。

 新聞や雑誌を読みあさり、興味を持ってくれそうな記者の署名を書き出しては片っ端から電話して取材を持ちかけ、新聞の夕刊1面や人気雑誌「Hanako」に記事が掲載されたり。テレビの情報番組や健康バラエティーの制作者に飛び込みでどんどんアポを入れて企画を売り込んだり。コンビニ大手のローソンと交渉を重ね、ナチュラルローソンの店内にファイバーデトックスをテーマにしたコーナーを実現したり--。当時、帰宅は午前1時、2時になることもあるほどのハードワークぶりでした。

クライアントとメディア、対立の先には

 また、広報という仕事では、しばしばクライアント(広報業務の依頼主)と、情報を掲載するメディアとで考えが食い違います。

「もちろん、広報はクライアントからの依頼で働いているのですが、私は当時、時にはメディア側の立場を優先させてでも、よりよい形で世の中に情報が発信されることを優先しました。結果的に世の中に情報を伝えたいという目標が実現し、クライアントからもほめられたのはうれしかったですね」

 このころ、あまりのハードワークがあだとなり学生時代から交際してきた恋人との別れも経験することになった宮崎さんですが、同時に、後にフリーランスとして独立するきっかけを作ってくれることになる人物とも出会います。それが、クライアント企業の社員としてプロジェクトに参加し、後に夫となる靖浩さんでした。

(後編に続く)

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この記事を書いた人

華太郎
華太郎経済ライター
新聞社の経済記者や週刊誌の副編集長をやっていました。強み:好き嫌いがありません。弱み:節操がありません。

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