Interview
インタビュー

移動式本屋「ruco-bon*(るーこぼん)」軽ワゴン車をカスタムし移動本屋をスタート。しかし収入はほぼゼロの2年間

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移動式本屋「ruco-bon*(るーこぼん)」オーナーのrucoさんインタビュー後編。トランク1つからはじまり、現在は車で移動販売。融資を受けてバンを購入し、カスタマイズ。自身で選書した良書を積んで、各地で販売しています。

ruco

プロフィール

移動式本屋ruco-bon*(るーこぼん)店主ruco(るーこ)

鹿児島県生まれ。福岡県久留米市を拠点に、赤いトランク一つの本屋さんを経て、ワーゲンバス仕様の移動式本屋「ruco-bon*(るーこぼん)」を2018年よりスタート。2児の母。栄養士・調理師・製菓衛生師(パティシエ)免許を持つ。

逃げるように職を変え、遂に見つけた自分らしい生き方! 育児・子育てをしながら、初めての借金で軽ワゴンを購入。移動式本屋へカスタマイズをし、自分自身で選書した良書をたっぷり積み込んで、各地へ販売に走っています。苦悩の転職を繰り返した前編「転職をしても、フリーランスになっても苦しい。私が理想の仕事を見つけた経緯」に続き、今回は2018年よりスタートした移動式本屋「ruco-bon*(るーこぼん)」の活動とは?

 

トランクで移動式本屋スタート! 2年間の収入はほぼゼロ

本屋開業を具体的に模索しはじめた時、女性起業家交流会にちょこちょこ顔を出していたんです。そこで「どんな本を置くんですか」と質問されたので、持っていった方が早いなと思い、赤いスーツケースいっぱいに本を詰めて持ち歩いたのが始まりです。スーツケースを選んだ理由は、ただ「重かったから」ですね(笑)

その時に、「トランクひとつの本屋さんなんですね」と言われて、「あ、それいいですね」って。それからは起業家交流会に行くときに本を紹介したりとか、あとは本を選んで欲しいという方に、その人に合わせておすすめの本を紹介したりしていました。大きな宣伝はしていなかったので、知り合いの人に頼まれてました。当時はまだ新刊の仕入れができていなかったので、自分が読んだ本を貸す形でした。だから利益はゼロ。本を貸して、感想を聞いて、お茶おごってもらってほっこりするところで終わってました。

それを2年くらい続けていました。ライターを完全に辞めたわけじゃなかったので、ライターでいただいたお金を全部つぎ込んでいました。

お金的なところで成果も全然出てないけど、その2年間でなんとなくできるなっていうところがつかめたんです。

もちろん「ほとんどボランティアで、私は何をやってるのかな?」と思ったこともありました。でも、そう思い始めたころから、「家で読書会していいよ」とか、「マルシェに出てください」って言ってくださる方が出てきました。さらに、これまでは自分が読んだ古本でやっていたのが、子供の文化普及協会さんから新刊も仕入れられるようになったんです。

融資を受けて軽ワゴンを購入・カスタム

2年間はスーツケースを引っ張りながら、「本屋さんやるならお店かな?車かな?」と思いながら過ごしていて、みんなからはこの人動かないのかよって思われていたと思います。

そんなある日、仲良かった方とのインスタライブで、「この子、来年ワーゲンバス買って移動本屋さん始めるから」って紹介されて、「あ、私来年ワーゲンバス買うんだOK」みたいな。その一言でやるしかないって思ったんです。ちょうど2人目を妊娠中で、大きなおなかで金融機関に行きました。

その年の3月に子供を産んで、6月には融資が下りて、軽ワゴン車を購入。工場にカスタムをお願いして12月に納車。1回目のマルシェがなんとその2週間後。

本棚どうしよう!ってなったんですけど、プロに頼む時間もないし、父が大工さんだけど遠くて呼べない。でも赤ちゃんいるし大変!ってなって、とりあえず子供を抱っこしてホームセンターに行って本棚を組み立てて何とか間に合わせました。

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移動式本屋ruco-bon*(るーこぼん)、遂にオープン!

この頃、私は2人目の子供が生まれたばかり。初めての借金でしたが、ガツガツ動いたっていう感覚は全然なくって、まわりの方に動かしていただいたっていう感覚が強いんですよね。

売っているものが自分が生み出したものだったら、多分自信なくしてたと思うんですよ。

でも、本って他の方が書いてて、素晴らしいからこそ世に出ているわけであって、それが売れないわけがないし悪いわけがないっていうのが自分の中にあったから、自信もって人に勧められた。

最初の選書は「読書のすすめ」さんにお世話になっていたので、その影響が強かったです。それもあって間違いないと自信を持てたんです。今はお勧めできる本だけでも、うちのクローゼットが満杯になっちゃうくらいはありますね。

気づいたら生まれていた、新たな人とのつながり

ワーゲンバスで本屋さんを始めてから、子供がちっちゃかったのもあって、おんぶしながらできる限界でやっていると、やっぱり普通の本屋さんと比べられたときに「どうせ主婦のままごとでしょ」みたいな感じで言ってくる人も来はじめたんですよね。逆にそれが、ここをこうしようとか、もっとこうしようという工夫につながったので、いいスパイスが効き出したなっていう感じでした。

それに本屋さんって全然儲からないんです。うまくいっても微々たるもので。本屋さんを始めてから一回も黒字になったことはないんです。でも楽しいからいいかなと思っています。

今のところ仕入れには自信があるので、儲けがなくても本は悪くないと思っているんです。これまでは、子供が小さくてブログが書けないけど、もっと時間できたら、いろいろできることがあるのでは?と思っています。

それに、ここまでくると、応援してくれる人が増えているんです。だからここでやめたら申し訳ないと思っています。出版社や著者とやり取りできる機会も増えている中で、私自身出版社や著者のファンになってしまって頑張ってしまうんです。

本を渡したい、応援したい。私の次の目標!

まだまだ本がガバッと仕入れて売ることができないから皆さんに申し訳ないなと思いながら毎日過ごしつつ、恩返しできてないからやめられないという気持ちで続けています。

私が本屋さんやめても、何も変わらないかもしれないけど、私から本を渡したい、応援したい人もいるんです。

本にかかわる人々に恩返しをしたいです。本に携わる人々がどれ一つ欠けても本って成り立たないことを身に染みて感じているから、まだ辞めたくないなと思います。

これからやりたいのは、今はコロナで難しいですが、キャンプをしながら全国を回りたいんです。長野県の栞日さんがやっているアルプスブックキャンプを九州でやるのが夢です。初めて知ったとき、あまりに素敵すぎて栞日さんに思わずメールしてしまいました。福岡で大きい本のイベントはあまりないので、どかんと本が楽しくできるイベントをやりたいと思っています。

本っていろんな可能性があると思っています。いろんなものとコラボができるし無限に幅があると思っています。

全2話、前編はこちらからどうぞ。

取材・文/I am 編集部
写真/本人提供

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