SNSはマーケティングそのもの〈SNS運用のプロに聞く〉個人事業主やフリーランスのためのSNS運用のはじめ方。押し売りではなく有益情報を!
スモールビジネスに欠かせないSNS運用。分かっているけど、どうやったら効果的な運用ができるかわからずSNS迷子になっている人も多いのでは? 個人事業主、フリーランスに絞った運用方法をお伝えします。
国内のSNSユーザーは8,270万人(株式会社ICT総研が発表した「2022年度SNS利用動向に関する調査」)。日本人の多くがSNSを利用していることになり、SNSが生活の一部から切り離せなくなっています。また商品やサービスに関する情報収集やクチコミの検索に、ユーザーの7割の人がSNSを利用したいと答えています(アライドアーキテクツ株式会社の調べ)。このことからもビジネスをするうえでは欠かせない存在になっているといえるでしょう。そこでSNS運用の具体的なノウハウがわからない人や、独学で運用していてもうまくいかない人に対して、SNS運用の進め方について解説しています。またSNS運用のプロフェッショナルである矢野麻衣さんに、運用のコツなどを聞いてみました。フリーランスや個人事業主でSNS運用に力を入れていきたい人は、ぜひチェックしてみてください。
目次
スモールビジネスに必要なSNS運用とは?
まずはSNS運用とはどういった意味かを解説します。つぎにSNSの役割や代表的なサービスの特徴についてふれています。現代においてSNSに力を入れるべき理由を理解し、運用目的にふさわしいSNSを選べるようになりましょう。
SNS運用とはマーケティングそのもの
SNS運用とはSNSを使って商品やサービスの宣伝や、SNSユーザーとの交流などによって売り上げUPを狙うマーケティング手法のことです。有益な情報や共感を呼ぶ投稿ができた場合は、ユーザーが主体的にサービスをシェアし、広げてくれる特性を持っています。いまやSNSから商品やサービス、口コミなどを検索し、購買につながる時代です。費用もかけずにはじめられることから、資金や人脈が乏しい傾向にあるフリーランスや個人事業主でも、SNS運用によって個人で活躍できる時代となっています。
SNSは一方通行ではなく双方向性
SNSが生まれる前までは企業のCMなどのように、企業側から一方向に情報を伝えるのみでしたが、SNSによって双方向性が生まれました。このことによって企業や消費者との距離が近づき、ユーザーの声がより企業側へも伝わることで、より良いサービスが生まれています。またSNSを日常的に投稿することで商品やサービスの情報を受け取るユーザーは愛着が深まり、ファン化していきます。このように一方的な情報伝達だけではなく、SNS運営側と利用側がより良い関係性を築くためのツールとしても役立っています。
文字、画像、動画ーSNS別の特徴
SNSの役割を理解したあとは、代表的なサービスの特徴を理解しましょう。テキスト主体か動画主体かによって投稿方法も異なりますし、ユーザー層も異なります。限られた時間のなかではすべてのSNSを使いこなすのは難しく、目的にあったサービスを選ぶべきです。
Twitterの公式アカウントによると、2017年の10月には国内ユーザーが4,500万人を突破し、国内では利用率が高いSNSとなっています。おもに140字のテキストでの投稿が基本となっており、RT(リツイート)などによる情報拡散性にすぐれたSNSです。メインユーザー層は10~20代ですが、手軽に投稿できる点からも幅広い年代に利用されています。
Instagramを運営するMetaによると、2019年3月にはユーザーが3,300万人を突破し、10~20代が中心に利用しているサービスです。Instagramでは画像や動画による視覚的な訴求がメインで、料理やファッション、コスメなど女性に向けた投稿も人気となっています。インスタ映えといった流行語が生まれるなど、おしゃれに敏感な人たちの利用が多い人気のプラットフォームです。最近では情報を集める際にGoogle検索から、Instagramのハッシュタグから検索する「タグる」という言葉も生まれ、情報の収集方法も変わりつつあります。
本記事で紹介するSNSのなかではもっとも歴史が古く、30~40代のユーザーが多いサービスです。ほかのサービスと異なるのは実名での利用となっているので、安全性が高いサービスです。ユーザー層がほかのSNSよりも高いことから、仕事で決裁権を持っている人も利用しており、Facebookからビジネスにつながることが見込めます。投稿内容はテキストや画像、動画など幅広くアプローチできる点もFacebookの特徴といえるでしょう。
YouTube
幅広い世代から利用されている動画共有SNSといえばYouTube。元々は娯楽として扱われていたところから、現在ではビジネス用途でも利用が増えています。YouTubeを使って商品の宣伝や商品が生まれた背景など、これまで伝えられなかったような部分も映像を通して伝えることが可能です。YouTubeは動画を見てもらえると接触時間が長くなるため、ファンになってもらいやすいサービスといえます。
TikTok
本記事で紹介するSNSのなかではもっとも後発のSNSですが、10~20代を中心にユーザーが増えているサービスです。縦型の短い尺の動画が主流で、若い層を狙った商品やサービスを検討している人に向いているSNSです。ユーザーが若い世代なのでビジネス上の決裁権があまりない層が多いともいえますが、若者に注目されると一気に認知が広がる可能性があります。そういった拡散性もふまえて、今後力を入れていくのもおすすめです。
SNS運用のメリット・デメリット
SNS運用を行うメリット・デメリットを理解しましょう。SNSはだれでも手軽にはじめられる特性がある分、運用方法を定めていないと炎上といったデメリットも。炎上してしまうと一気に信頼を失いかねないので、とくにデメリットには注意しましょう。
メリット①初期投資不要
SNSが流行るまでは商品やサービスの宣伝となるとCMや広告など、費用がかかるのが当たりまえの世界でした。ただしSNSの登場によってだれでも無料で発信ができる時代となっています。フリーランスや個人事業主になったばかりの人は、資金や人脈がないこともあるでしょう。そういった人でもSNSをうまく利用することで、加速度的にビジネスを拡大させるチャンスが転がっています。
メリット②認知拡大に有効
だれでも自由に発信し宣伝できることもそうですが、SNSを見た人がTwitterのRT(リツイート)などで拡散することで、大きく認知を広げられます。拡散されることでフォローされていないアカウントにもリーチができ、新たな顧客獲得にもつながります。どんなにすばらしい商品やサービスでも、認知してもらわなければ数ある商品やサービスのなかから選んでもらうことはできません。SNSは無料で開始できるうえ、個人でも1日数百円程度などの少ない金額からSNS上での広告を掲載できるため、活用次第で非常に有効な認知拡大ツールとなります。
メリット➂ファン化させることができる
数ある商品やサービスから選んでもらうには商品の機能性などの良さに加えて、ファン化させることが重要です。ファン化とは、食材を買う際や洋服を買うときなど、自分の好きな企業やブランドを優先的に買ったり、自分の愛着のあるものは、何年も同じものを使い続けたり、商品やサービスのファンになってもらうこと。
SNSは、ファンづくりにも有効です。方法としては日常的に商品の機能などの有益な情報を発信したり、商品の開発経緯などを発信したりするのも良いでしょう。また、ユーザーの人とフランクに「いいね!」やコメントなどでコミュニケーションのやり取りするのもひとつです。SNSによってユーザーと接点を持つことができ、より深い関係を築くことができます。
デメリット①炎上する場合がある
SNSは良くも悪くも拡散性が高いツールです。たとえば誤解を生むような投稿をしたとなると一気に悪評が広がり、イメージダウンにつながります。その際に多方面から批判を受けることもあり、そこで対応方法が悪いと、さらにマイナスの印象になることも。何気ない投稿でも一瞬で信用を失うリスクがあり、信用を取りもどすのは簡単ではありません。SNS運用する際には炎上するリスクがあることを念頭において、投稿内容に信憑性や一貫性を持たせる、誰かを傷つけていないか配慮する、など注意して取り組むことが重要です。
デメリット②SNS運用の負担がある
どのSNSを選ぶかによって負担の度合いは変わりますが、とくに動画投稿は一投稿だけでも多くの時間を要します。一投稿すれば認知が広がりビジネスで成果が出るわけでもなく、継続的に運用することが必要です。またSNS運用に取り組む企業や個人が増えているなかでは、投稿を続けてもうまく認知が広がらないことも多々あります。ただ投稿を続けるのではなく、投稿のたびにリアクションはどうだったのかを分析し、改善することが大切です。
効果がなかなか見込めないなかで投稿内容を考えたり、つくったりする作業の負担だけが増えて、運用をやめてしまう人もいます。大事なのはすぐに成果は出ないと考えて、長い目で運用することを心がけることです。
個人事業主やフリーランスのSNS運用のはじめ方
どのSNSを選ぶにしても、むやみに投稿を続けてもうまくはいきません。SNS運用をはじめるうえでは投稿前の目的やターゲット選定、投稿内容を定める必要があります。また投稿のあとも投稿内容を分析し、改善が大切です。ここでは、具体的にどういったステップをふんでSNS運用をはじめるのかを解説していきます。
ステップ①目的・ゴールを明確にする
大前提としてSNS運用の目的・ゴールを明確にすることが大切です。目的やゴールが明確でないと投稿内容にもブレが生じ、投稿を受け取る側も何をいいたいのかが理解できません。そこで目的やゴールの設定には、認知の獲得などが挙げられます。投稿を続けているうちに「いいね!」の数が増えたり、インプレッション(投稿がどれだけ表示されたか)が増えたりすれば、認知の獲得につながります。
SNSには分析ツールが備わっているものもあるので、具体的な数値に落とし込むようにしましょう。数値に落とし込むことで毎回投稿内容のふり返りや、効果があるのか検証できるためです。ほかにもファンの育成や関係性の強化、購買意欲の向上、売り上げUPなどを目的やゴールの設定にすると良いでしょう。
ステップ②ターゲットを定める
目的やゴールを決めた後はSNS運用のターゲットを定めましょう。ターゲットが決まっていない投稿は当たり障りのない内容になりがちで、受け取った側も自分に向けて発信されている内容かどうかがわかりません。
あふれかえった情報のなかでは自分事のように捉えてもらうことが大切で、そのためにもだれに向けて発信するのかを決めましょう。ターゲットは男性なのか女性なのか、年齢層、職業など、より細かく設定すると効果的です。ターゲットが男性か女性かだけでも投稿の中身が変わってきますし、より細かく設定するほど、深く刺さる投稿が作成できます。
ステップ③どのSNSするか決定する
ターゲットが決まればどのSNSにするかを決めましょう。先述したようにTikTokは利用している年代が若く、一方でFacebookは年齢層が高い傾向にあります。ターゲット層が若いにもかかわらず、年齢層の高いSNSを利用していると非効率で機会損失につながりかねません。
またTwitterはテキスト主体ですが、Instagramは画像や動画の投稿に適したSNSです。商品やサービスをもっとも効率的に伝えられる手段はどれかといった観点は大切です。投稿にかけられる時間も限られているなかで、負担の少ないSNSを選ぶのもひとつです。
ステップ④コンセプト・投稿内容を決める
どのSNSにするか決めたあとはSNS運用のコンセプトや投稿内容を決めましょう。コンセプトを決める際には商品やサービスの機能や価値をどう伝えるかや、ユーザーとどういったコミュニケーションを取るかを検討しましょう。
SNSの運用コンセプトを決めておくと投稿内容にも一貫性が出ます。そうすることで投稿内容にもブレがなく、想定した顧客層を掴むことができます。運営側の思いや考えがうまく伝わらないと、誤解を招く可能性もあり炎上につながるリスクもあるでしょう。またコンセプトや投稿内容を決めておくことは、投稿にかける時間の効率化にもつながります。
ステップ⑤ルール・体制を定める
SNS運用していると炎上するリスクがあることは解説したとおりです。炎上をさけるにはあらかじめそれぞれサービスのルールにそって運用する必要があります。また炎上が起きたあとに対処スピードも求められるので、すぐに対処できるように対応ルールや対応手順などを準備しておきましょう。
ほかにも投稿するテキストやビジュアルを合わせて世界観を守るようにしたり、投稿時間も決めておいたりするのも良いかもしれません。決められた曜日や時間に投稿されると、投稿を見るのがひとつの習慣のようになってファン化につながります。ユーザーとやり取りする際のコミュニケーションの取り方も、ルール化するのがおすすめです。
ステップ⑥インサイト分析でPDCAを回す
SNS運用までに多くの準備が必要なことがわかりました。ここで時間をかけてつくった投稿を終えて満足するのではなく、投稿後にはその反応を分析ツールなどを使って分析しましょう。効果の測定指標として「いいね!」やコメントの数、フォロー数などさまざまな指標があるので、良かった点といまいちだった点を分析し、傾向をつかみましょう。そして毎回改善していけるようにPDCAを回すことが大切です。
自分で投稿している内容を分析するのはもちろんですが、目標や競合としているアカウントを分析するのもおすすめです。成功しているアカウントからうまくいっている原因を探り、自分のアカウントに活かすようにしましょう。
〈SNS運用のプロに聞く〉たった2つの運用のコツ
ここではSNS運用のプロフェッショナルである合同会社Lionet(https://linonet.jp/)代表、矢野麻衣さんに運用のコツや、SNS運用に向いている人、向いていない人を尋ねました。これらの内容を把握しておくことで、ムダな失敗や回り道を防げます。それぞれの内容を理解し、SNS運用に取り入れるようにしてください。
SNS運用のコツは2つ!
SNS運用のコツを2つ紹介します。コツとはユーザーが知りたい情報を届けることと、コミュニケーションを考えた運用が大切です。これらは頭では理解していても、運用しているなかで忘れてしまいがちになる要素です。またコミュニケーションの取り方は一歩間違うと炎上のリスクもあるので、注意してください。それではみていきましょう。
コツ①ユーザーが知りたい情報を届けること
SNS運用でついやってしまいがちなのが、自分の商品やサービスなど、自分が伝えたいことを投稿してしまうことです。大切なのは運営側が伝えたいことよりも、ユーザーが知りたい情報を優先しましょう。ユーザーにとって有益な情報であれば「いいね!」やコメントなども増えて、拡散につながります。どういった情報が求められているかはSNSだけに限らず、普段からトレンド分析することも大切です。
コツ②ユーザーとのコミュニケーションを考える
SNSはユーザーとコミュニケーションを取ることで評価されるような仕組みも含まれているので、コミュニケーションは重要です。InstagramではDMやコメントをまめに返信することで、投稿の表示順位の優先度などがあがる傾向にあるといわれています。丁寧なコミュニケーションを心がけることで、ユーザーのみならずSNS自体からも評価されることがあることを認識しておきましょう。
SNS運用が向いている人って?
ここではSNS運用が向いている人を紹介します。変化が早い現代では、SNS運用が向いている人はトレンドを意識し、柔軟な対応ができる人です。また日々の投稿の結果を分析し、コツコツと継続できる人が向いています。それぞれ詳しく解説します。
①柔軟な対応ができる人
SNSでは、突然の規約の変更や、優先的に投稿がおすすめされる仕組み(アルゴリズム)が変わることがあります。そういったルール変更に柔軟に対応し、ときには発信内容を変更することも必要です。また世間で流行っているトレンドを意識するのも大切。世間から注目を集めているトレンドにそって発信すると、一気に認知が広がる可能性を秘めています。
②コツコツと継続できる人
SNSが普及した現代では、投稿をただ続けるだけでは数ある商品やサービスのなかから選ばれません。そこで大切なのが日々の投稿から得られる、データを分析し、改善していくことです。注意したいのが投稿することが目的となってしまうことです。日々の細かな分析や効果検証を繰り返し、コツコツと改善を継続できる人がSNS運用には向いています。
SNS運用が向いていない人って?
一方でこんな人にはおすすめしない、SNS運用が向いていない人を紹介します。向いてない人はすぐに効果を求める人や、変化を嫌う人です。たとえいま向いていなくても、これらの内容を知ることで対策し、SNS運用を進めていきましょう。
①すぐに効果を求める人
先述したようにSNSではすぐに結果は出ません。なかにはトレンドなどに乗って一時的に認知が拡大するケースもありますが、継続的に効果を出すのは簡単ではありません。長い目をもって取り組みましょう。バズを狙った投稿も認知が広がるだけで仕事の成約にはつながらないこともあるので、コンセプトにあった内容をコツコツと継続するのが大切です。
②変化が嫌いな人
変化が嫌いな人はSNS運用には向いていません。前述のようにSNSはサービスの規約やアルゴリズムの変更もあります。トレンドの移り変わりも早い現代では、変化に合わせられない人は致命的といえます。変化が嫌いで同じような作業を続けたい人には向かないでしょう。
〈まとめ〉〈SNS運用のプロに聞く〉個人事業主やフリーランスのためのSNS運用のはじめ方
本記事ではSNS運用の意味合いや効果について取り上げてきました。SNSといってもTwitterやInstagramなどさまざまなサービスが展開されています。それぞれの特徴を理解し、SNS運用の目的にあったサービスを選んでください。また投稿内容はユーザーが欲しい情報を届けられるようにコンセプトを決めて、投稿を続けましょう。すぐに効果は出ないと考え、投稿で得られるデータを分析し、コツコツと継続するようにしましょう。
文/藤田祐秀
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この記事を書いた人
- 「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。
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