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知的ボランティア「プロボノ」は今や働き方のひとつ。人のためだけではなく、自分の専門性のブラッシュアップにも。はじめる前に知っておくべきメリット・デメリット

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今、社会人を中心に注目され、広がりを見せている「プロボノ」。社会貢献の新しい形だけでなく、個人の生き方・働き方にも影響しています。そもそもプロボノとは何でしょうか?

プロボノとは何のこと?

「プロボノ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「ボランティアをしています」という人は周囲にもいますが、「プロボノしています」という人には会ったことがない…ということの方が多いかと思います。

 プロボノのメリット・デメリットも含め、詳しくご紹介していきます。後半では、実際にプロボノを経験された方に、やってみて知ったプロボノをやってみて良かった点・良くなかった点、プロボノをはじめるにあたっての注意点を教えていただきました。

プロボノとは専門知識を活かしたボランティア

 「プロボノ」とは「公共善のために」を意味するラテン語「Pro Bono Publico」を語源とする言葉です。仕事を通じて培った専門知識やスキル、経験を活用して社会貢献するボランティア活動全般を指します。

 プロボノは、アメリカやイギリスにおいて弁護士費用を払うのが困難な人に対して無償で法律相談に応じたり、非営利組織の法務支援を行ったりするなど、様々な形で法律の専門スキルを活かした社会貢献活動を行うという動きがありました。1980年頃から急速に広まり、2000年代、それまで法律関係の業務を中心としたプロボノの動きが様々な分野の多様な人材を指す方向性に変わっていきました。これ以降、プロボノは法曹界のみならず、様々な業界に広まっていきます。

プロボノとボランティアの違い

 プロボノも社会貢献活動という意味ではボランティアと共通しますが、単純な作業や肉体的労働が必要な場面など、人数や頻度などの量的資源を要する「人的ボランティア」と異なり、プロボノは社会人の専知識や技能(スキル)を活かす「知的ボランティア」とも言えます。自分のスキルを活かした無償奉仕というところに特徴があります。

 具体的に言うと、例えば環境整備や植林のボランティアがあったとして、植林地を美化したり、植林したりするボランティアは、基本的には専門的なスキルを必要としません。その一方で、植林に関する発信や支援の呼びかけを行うための戦略策定、広報、ウェブサイト制作、プロジェクトが円滑に進行するようなマネジメントという場合には、経験や知識が必要となります。どちらも無償で行うボランティアですが、後者には経験や知識が求められるためプロボノ活動と呼ばれるのです。

プロボノの仕事内容

 プロボノに限らずではありますが、プロボノを受け入れている団体は多様な人材を求めるようになってきています。また、プロボノを必要とする団体やセクターの課題感やニーズによって仕事内容は大きく異なります。

 例えば、ウェブサイトやSNSを活用した情報発信の支援をおこなう場合。広報、ソーシャルメディアマーケター、クリエイティブディレクター、コンテンツクリエイターなど、情報発信1つ取り上げて考えうる範囲でも、専門性が発揮できるポジションがこれだけ挙げられます。

 また、プロジェクトそのものを統括、遂行するリーダーやPMのような人材が必要な組織もあるでしょう。その他にも、業務の改善や事業計画の立案など団体の根幹を担う依頼もあるため、団体やセクターによっては自分が培ってきた知識やスキルが十分発揮できそうな活躍の場があります。

プロボノは今や働き方のひとつ?

写真/Canva

プロボノ参加者は年々増加傾向にあり、また一部の企業ではプロボノ活動をする自社社員に対して積極的に支援をしている状況も見受けられます。2015年に国連総会で採択された、持続可能な開発のための17の国際目標、SDGsを企業として目指す機運も高まり、社会貢献分野と企業の連携が進んでいるようです。

参考:一般社団法人経済団体連合会 企業行動・SDGs委員会 2020年9月15日

増加するプロボノ参加者

 2009年ごろ、日本のプロボノ活動もイギリスやアメリカと同様に法曹界から広がり、2011年の東日本大震災では、士業を初めとする、様々な専門知識やスキルを生かしたプロボノの貢献がありました。現在では様々な分野の人材が活躍するようになりました。

 プロボノの受け皿としては、NPOを中心に、行政機関、公共施設など非営利の組織が挙げられます。自身のスキルを無償で提供してもいいという人と、そうした人の支援を受けたい個人と団体とのマッチングを行う中間支援団体も存在します。

 中間支援団体の一つ、認定NPO法人サービスグラントに参加するプロボノ登録者の実態調査では、プロボノ参加登録者数の推移として2016年から2020年の5年間の累計登録者が3153人から6363人と約2倍になっております。

また、プロボノ参加登録者の社会人経験年数も11〜20年の人が43%と経験や知識を培った人材の登録が最も多いということからも、自身の専門知識・スキルを社会に活かしたいと考える人が多いと言えるのではないでしょうか。

弁護士事務所や大手企業も受け入れているプロボノ

弁護士会の取り組み

日本の法曹界でも、一般的にプロボノ活動が行われています。弁護士法において、「弁護士は基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」(第1条)とされており、

第一東京弁護士会では、2000年に所属弁護士が公益活動を行うことを義務化しています。

また、2007年には、会則でプロボノ活動を公益活動に位置づけており、2021年には、会員が広くプロボノ活動に取り組んでいけるような環境を作るべく、会規を改正しています。

参考:第一東京弁護士会「プロボノ活動」

NECの取り組み

日本電気株式会社(NEC)では「企業市民活動」として、様々な社会貢献活動を実施しています。2010年に認定NPO法人サービスグラントと協働で「NECプロボノイニシアティブ」というプログラムを開始し、日本の国内企業として初めてプロボノを実施しました。

社員が専門知識やスキルを活用し、自治体やNPO、社会起業家などが抱える課題に取り組んでいます。2020年には社内有志による「NECプロボノ倶楽部」が発足しています。

の制作、マーケティング調査、COVID-19の影響下では、オンラインイベント・Zoom使い方講座の開催等を支援しました。

社員が社会課題の現場へ参画することで、生活者視点の感覚を磨き、社会課題を起点とした新たなサービスやソリューションを創出することを目指します。

出典:NEC「NECプロボノイニシアティブ」

プロボノ募集先の探し方・はじめ方

写真/Canva

プロボノをやってみたい!とは思うけれど、実際にどうやって初めて良いかわからないという人も多いのではないでしょうか。どのような非営利団体が日本に存在しているのか。その中でも、自分のスキルが活かせそうな分野は何か、自分のスキルを必要としている団体はどこか等、プロボノ先を選ぶ基準もなかなかわからない方の人が多いと思います。

①マッチングサービスを利用

 プロボノに興味がある人は、まずはマッチングサービスを利用したり、情報を閲覧するだけでも、ご自身の専門知識やスキルをベースに、どういった団体からどういったスキルが求められているのかを知ることができます。こうした求人や募集のプラットフォームがあると情報が一元化され、網羅的に知ることができ、プロボノに参加したいと思っている人にとってはとても便利です。

 求人募集タイプのマッチングサービスもあれば、プロジェクト単位で複数人で取り組むためのマッチングサービスもあり、それぞれに特徴があります。また、オンラインで遠隔からも参加できるものを中心とした求人を取り扱うものもあり、ご自身の状況や環境に合わせて柔軟にサービスを選んでいけたらいいですね。

認定NPO法人サービスグラント

2005年に任意団体として活動を開始し、2009年に法人化したNPO法人です。「プロボノの進化」をミッションに掲げています。チーム型のプロボノプロジェクトを主に実施し、期間限定のコミットメントが求められます。調査・分析・戦略立案系、デザイン・映像 クリエイティブ系等、現在求められているポジションと具体的な人物像など自分の経験やスキルをベースにプロジェクトに立候補することができるようです。

ShareWorks

「成長につながるボランティアを手軽に」という専門スキルのボランティア・マッチングサイトです。実践的な業務を通して経験と実績を獲得したい人、場所や時間に囚われずに参加したい人などにおすすめのマッチングサービスです。ディレクション業務から、このテキストをフランス語に翻訳して欲しい!といったピンポイントな依頼まで掲載があり、ご自身の専門性により近いものを選ぶことができそうです。

Activo

activoは国内最大級のNPO・社会的企業のボランティア・職員/バイトの募集サイトです。全世代向け、ジャンルを問わず、ボランティアから社員まで様々な募集が探せるという特徴があり、まさに「どんな団体が存在して、どんな募集があるのかまずは網羅的に知りたい」という人におすすめです。エリアを絞ることもできるので、住まいや勤務先に合わせて選んでいくことも可能です。

②NPO・団体に問い合わる

 すでに興味がある、特に応援したいNPOや団体がすでにある場合は、ご自身のスキルや経験を添えて問い合わせをするということも可能です。多くの場合、プロボノの募集の有無がウェブサイトに掲載されているので、チェックするとよいでしょう。

 また、募集の掲載がない場合でも、多くの非営利組織が限られたリソースの中で活動しているため、人材不足の課題がある可能性が高いです。「マッチングサービスサイトなどに募集を掲載するほどではないけれど、こんな人材がいてくれるなら嬉しい」ということもあり得ますので、まずは問い合わせてみるということも良いかもしれません。ただし、プロボノを受け入れる体制や環境が整っていない場合もあるので、自分の希望や相手の希望がマッチするかご自身で見極める必要があるでしょう。

プロボノをはじめる前に知っておきたいメリット

 プロボノを通して得られるものは一体どんなものがあるでしょうか。社会貢献として満足感を得る…という気持ちの問題だけではないようです。自分が年月をかけて培ってきた知識やスキルを提供することは、寄付をはじめとする他のあらゆる支援と同様にNPOにとっては非常に貴重な支援です。プロボノを始めるまえに、双方がWin-WInとなるよう、ぜひそのメリットを考えておきましょう。

メリット①スキルアップやポートフォリオとして

プロボノ参加への最大のメリットは、「実践ができること」ではないでしょうか。スキルアップや実績作りができます。たとえばご自身が日頃「自身のこういうスキルをもっと伸ばしていきたいが、社内に機会がない」という場合にプロボノを行うことで、そのスキルを磨く機会を得ることができます。

 また、実務を任されるため、例えばクリエイティブの技術を取得したばかりでポートフォリオがないという人にとっては、実務としての経験を掲載することができ、ご自身のスキルにより説得力を持たせることができます。今後の転職や営業活動などにも、プロボノの経験を有効に活用できるのではないでしょうか。副業禁止の企業に勤められている人にとっても、ボランティア活動にあたるため、パラレルキャリアを進める第一歩としても可能性があります。

メリット②新しい人、価値観との出会い

 プロボノは「実施する仕事内容は一緒だけれど普段とは違う環境で行う」ということでもあります。それは普段は出会うことのない、異業種、異業界の新しい人との出会いや新しい価値観との出会いにも繋がるのではないでしょうか。異業種のメンバーでチームを組んだり、あるいは非営利組織で働く人と深くコミュニケーションをとっていく中で、異なる価値観に触れていくことが新鮮な経験となり、本業で新たなアイディアが生まれる、なんてこともあるかもしれません。また、利害関係を超えた活動になるため、活動の中での出会いによって社外に頼れる仲間ができる、ということも期待できるのではないでしょうか。

プロボノをはじめる前に知っておきたいデメリット

デメリット①報酬がない

当たり前のことではありますが、プロボノ活動には報酬がありません。交通費などの経費や謝礼があるケースもあるようですが、特に謝礼金が出るケースは限りなく少ないのが現状です。基本的には、普段の仕事では給与が発生したり、売上がたつものを無償で提供することになります。その成果は報酬として分かりやすく目に見えて得ることができないので、人によっては自分のモチベーションを保つためにコミットする時間量や精神的切り替えなど、バランスを上手くとっていく必要があるかもしれません。プロボノに参加するまえに「なぜプロボノをやりたいのか」という目的をご自身でしっかりと考えておくのも重要かもしれません。

デメリット②情報の取り扱い

 プロボノのメリットとして挙げた「新しい人との出会い」がありますが、一方で場合によっては同業他社の人と一緒に活動をする可能性もあります。無報酬とはいえ、一緒に「仕事をする」ことには代わりありませんので、保有しているノウハウや技術が漏れる可能性もないとは言えません。例えば、自分が培ってきたスキルや知識の中に所属する会社の重要な情報が入っていないかどうか、他の人に共有してもよい部分とそうでない部分はあるのかなど、気を付ける必要がありそうです。受け入れ団体とは、プロボノで得た情報についての取り扱いについてや、情報漏洩についての取り交わしを行ったり、情報管理を徹底するなど、トラブルにならないよう注意が必要です。

〈プロボノ経験者に聞く〉良かった点・良くなかった点

 プロボノとしての経験、さらにはご自身の活動の中でプロボノを受け入れたご経験のある「親子の学び場マゼンタ」代表のひがしみちこさんに、実際に感じた「良かった点」「良くなかった点」について、プロボノをする側、プロボノを受け入れる側の視点で教えていただきました。

写真/Canva

プロボノをして良かった点

かけがえのない経験ができた事はなにより良かったです。

①人との交流

 最も良かった点としては「人との交流」です。まさに、普段知り合えない人と出会えるということが一番良かったです。2団体でのプロボノ経験がありますが、1つめプロボノの内容としては、ある団体の立ち上げに協力するということでした。立ち上げイベントに関する事務全般を担当し、集客、受付、プレゼンテーションの準備などを行いました。業界の有名な活動者やキーマンとの人脈を作ることができ、自身の今後の活動にも活かせるため非常に大きかったです。

②かけがえのない仲間

2つめのプロボノでは、1つめの経験から、自分のやりたいことやできることにフォーカスをして団体に関わったため、とても充実していました。だからこそ、そのプロボノで一緒に活動したメンバーはかけがえのない仲間となり、今でも連絡を取り合っています。その団体は現在は活動を中止中ではありますが、「また新しいことをそのメンバーでやりたい!」という気持ちでいます。

プロボノをして良くなかった点

良くなかった点としては、3点あります。

①経費負担

一点めは、経費負担についてです。受け入れ団体にもよると思いますが、1つめのプロボノ活動では、例えばイベント会場を下見するための会場までの交通費、イベント協力者に会いにいくための交通費など、小さくも積み上がる経費が徐々に負担になっていきました。

②時間負担

2点目は、自分の時間を大きく割くことになったということです。深夜まで作業をしなければならないこともしばしば。心身への負担が大きかったように思います。

③仕事内容

3点目は、仕事内容です。1つめのプロボノでは、とにかく様々な業務、特に他のメンバーがあまりやりたがらない雑務を多く抱えていました。これらの経験から、組織と自分の関係が対等でないと、負担を感じることが多くあるのではないかと思い、2つめのプロボノでは、「自分がやりたいこと」でしか関わらないように調整や交渉を行いました。一見、ドライに思われるかもしれませんが、やはり有償スタッフと無償スタッフの違いはあるため、対等にWin-Winな関係性で行うことで、お互いに気持ちよく活動できるのだと思います。

プロボノの受け入れを通して見えた課題

 プロボノの経験を経て、現在運営している団体ではプロボノを受け入れています。プロボノで関わってくれる人がいるおかげで、新しいチャレンジができたり、事業を拡大したりと、団体としてできることが広がりました。

「なんとなく」より「やる気と責任感」が必要

 しかし、プロボノを受け入れる側として言えることが、「何かやりたいなぁ」という軽い気持ちの人は責任感がたりない場合が多く、仕事を任せるまで至るのが難しく感じています。プロボノ希望者はご自身のスキルを気にされることが多いのですが、むしろ「やる気と責任感」を重視しています。何度か話し合いを通じて、理念・ビジョンを納得していただき、団体の根底に共感していただく方の中で、信頼関係を築ける方に参画していただいています。

はじめる前も後もコミュニケーションが必要

 広く募集をかけ、プロボノを募ることもありますが、多くは講演会等や情報発信を通して「何かお手伝いできることはありませんか?」と声をかけていただくことが多いです。もし、プロボノに興味関心がある方は気になる団体へ声をかけることも一つの方法としてご検討いただいたらよいのではないでしょうか。

 団体側へ行動力を示すことにもなりますし、実際に面談するまでのコミュニケーションの中でレスポンスの速さなどでも団体が判断する材料となります。

 とはいえ、プロボノに限らず、組織のメンバーはそれぞれのライフステージの変化もありますから、流れがあって当然です。最初にコミットする期間を明確にすることや、ご自身やご家族が体調がわるい時などの緊急時にどのようにフォローし合えるか、助け合いができるかどうかなどを事前にコミュニケーションしておくことが重要です。

〈まとめ〉知的ボランティア「プロボノ」とは?

いかがでしたでしょうか。個人の働き方やキャリアが多様になっているなか、プロボノという社会との関わり方を活用することで、仕事だけでなく、ひいては自分の人生においても新しい道を拓いていけるチャンスがありそうです。新しい挑戦をしてみたい人の中には、副業が禁止されていたり、いきなり起業や独立をするハードルがあるなど、制約が多い人もいるかと思いますが、その一歩目として、プロボノをやってみる選択肢をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

文/小杉真澄

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この記事を書いた人

I am 編集部
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「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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