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白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりませんSNSで自分と比較してしまい落ち込みます……

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読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】

白川密成

プロフィール

四国第57番札所栄福寺住職白川密成

住職。「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。

++ 今日のお悩み ++

【SNS で自分と比較してしまい落ち込みます…】

32 歳 女性 金融 事務職

10年近く、金融機関で事務職として働いています。20代の頃は、平日は仕事、週末は学生時代の友人と出かけて美味しいご飯を食べたり、小旅行に行ったりと充実した毎日を送っていたように思います。SNS も好きで、よく Instagram に旅行の様子やその日食べたものを投稿していました。
ですが、30 歳を過ぎて、結婚出産をしたり、転職や、好きな分野で活躍し始めたりと、新しいステップに進む友人が増えました。友人たちともなかなか会えなくなり、週末何をしたらいいかわからない日々。SNS を見ると、子供の写真を載せている人や、自分の活動について報告している人ばかりで、皆輝いて見えます。私自身は、仕事も代わり映えせず、結婚もしておらず、「1人でできることを」と始めた新しい趣味も続かない。だんだんと SNS を見ているとからっぽな自分を見せつけられているようで苦しくなってしまいます。こうして人と比べてしまう私に、何かアドバイスを頂けないでしょうか?

白川先生からあなたに贈る言葉
観察(かんざつ)

意外と真理に近づいている?

お悩みありがとうがとうございます。

「からっぽな自分を見せつけられているよう」とのことですが、『般若心経』で説かれることで有名な「空(くう)」には、あらゆる存在が「個体的実体の無いこと」「実体性を欠いていること」が説かれていますので、どうやらあなたは、悩ましい現実生活の中で、仏教的真理に近づかれているようです。

と、最初は冗談のように答え始めましたが、あなたのお悩みを通読しておりますと、結構、本気であなたの状況は、「仏教向き」かも知れません。

いかに「普段通り」でいるか

あなたは「1人でできること」を探されているようです。

近年、注目を集めることも多い、仏教の「瞑想」や「坐禅」、「マインドフルネス」などはグループで学ぶことが多いですが、実践は、日々、ひとりですることが多いものです。


今年、メジャーリーグで大活躍した野球選手は、「よくなってきているのは、経験からですか?」という質問に、「いや経験だけでは、できなかったと思う。瞑想を取り入れています」という意味のことを話していて、「お〜そうなんだ!」と思いました。

「特別な状態になる」というよりも、「いかに普段通りでいるか」ということに効果があったと、インタビューに答えられていました。(そもそも「勝ち負け」から自由になろうとする仏教が、「勝負事に役に立つ」というのも、ちょっと変かもしれませんが)

「身体に帰る」

私が、海外に住んでいる僧侶から、瞑想の指導を受けた時に、その先生がキーワードとしてお話しになっていた「Return to the body」という言葉も胸に残っています(これも記憶です)。

「身体に帰ろう」という意味でしょうか。

人の「思い」というのは、時に暴走をして、コントロールが効かなくなることがあります。

そこで、今、自分の抱えている生身のボディーに「じっくり帰る」そんな技法が、仏教には今でも豊かに残っていますので、指導を受けたり、本(たくさん出ています)を読む機会があれば、まずは週末の趣味のように仏教瞑想に取り組まれたりするのもいいかな、と思いました(今回はなんだか布教みたいになってしまいましたが)。

SNS は難しい

SNS についても悩みを書いてくださっています。

ひとことで言うと、「気になりすぎる」ということでしょうか。

悪く言えば、莫大なコストを投下して、人が「気になる」ことを日々、研究しているのが、SNS のひとつの側面でしょうから、やはり「ほっとく」と気になると思います。


私の尊敬する僧侶は、記念写真を取りながら、「俺は今、Facebook のために生きているから!」と冗談半分で言っておられて、みんなで大笑いをしたことがあります。

このように、あまり深刻に捉えず、便利に使いながら、ユーモアをもって、付き合うのが最善でしょうけれど、それがなかなか難しい。

回数を決める

一般的な回答は、「1回 SNS をやめてみたら?」となるのでしょうが、わりと「気にしい」の私が、とっている方法が、「SNS をみる回数」を決めることです。

例えば、朝、昼、晩の1 日 3 回しかみない。

言うはやすしで、実行は難しいことですが、決死の覚悟(!)で 3 週間ぐらい続けてみれば、おそらくそちらの方が、快適と気づくでしょう。

ポイントは、

①「今日はアリ、今はアリ」というような謎の例外を作らないこと。

②「自分の書き込み直後」は、反応が気になるので特に注意する。

の2点です。


あと、ネガティブな気持ちになりやすいのは、「キラキラ系」というか、いかに自分が輝いているか、というジャンルで勝負しようとしているからではないでしょうか。

もう少しコンセプチャルに、自分の好きな物、例えば、電車を永遠にアップし続けたり、ずっと好きなスポーツや音楽ネタを続ける、変な看板を溜めておいて披露するなど、「キラキラ系」から、しぶい、そして自分本位の「ダーク系」への移行もお勧めします。

白川先生からあなたに贈る言葉

観察(かんざつ)

わずかな客観性が余裕に繋がる

あなたに贈る仏教語は、「観察(かんざつ)」です。

一般的には、「かんさつ」と読まれますが、仏教では「かんざつ」と読むことが多いです。

「澄みきった理知のはたらきによって様々な対象を正しく見極める」という意味があります。
仏教瞑想においても、身体を感じて、心を感じる「観察」の精神が大事になることがありますが、今回のご相談にあがっている SNS にも、この「観察」的な気分を大事にしてみてください。

人々の姿に、呑み込まれるのではなく、“人間ウォッチング”をするような気持ちで SNS を見つめ、“自分ウォッチング”するように書き込んでみるのは、いかがでしょうか。

そのわずかな客観性が、意外と心の余裕に繋がるものです。キーワードは、観察(かんざつ)です。

<今日のまとめ>

・ひとりでやる仏教瞑想もおすすめ。
・SNS はそもそも「気になる」ように設計されている。
・「観察(かんざつ)」という言葉をヒントに客観性を身に付けよう。

直感・運気アップ

寝る時は、手の届かない所で、携帯電話を充電しよう。

目覚ましは、アラーム音ではなく、好きな音楽に変更!

この記事を書いた人

白川密成
白川密成四国第57番札所栄福寺住職
「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。

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