会社員、フリーランス、いずれにせよ日本人の9割は将来は不安。独立したら給料が0円になった元有名放送局ディレクターが収入の危機を乗り越えた画期的な方法は?
自分にできることを発展させて、増やしていく。これこそ理想的な収入の柱の増やし方だ。チョコレートジャーナリスト、市川歩美さんの場合は…?
目次
将来に不安を感じている人は、どのぐらい?
最近、明るいニュースが少ないのは気のせいだろうか。災害、コロナ、戦争、経済……なかなか明るい話題が見当たらない。この状況で、人々は将来についてどのように考えているのだろう?
8割以上の日本人が将来に不安を感じている
セコム株式会社は、20代~60代以上の男女計500人を対象に、「老後の不安に関する意識調査」を10年連続で実施している。2021年の調査の結果、平均で8割以上が「老後の不安を感じる」と回答し、特に女性は全世代で8割以上が老後の不安を抱えていることが明らかとなった。
老後の不安を感じる人に対して具体的な不安の内容を聞いた調査では、1位が「病気やケガなどの健康不安」が80.4%、2位「経済的な負担に関する不安(66.6%)」と、健康と経済、この2つが大きな不安要素であることが見て取れる。
コロナ禍が長引き、連日コロナの感染者数や後遺症についての報道がなされていることは、1位「病気やけがなどの健康不安」が昨年より増えていることと無関係ではないだろう。
年金だけじゃ足りない!老後、夫婦二人が必要な生活費は月22万1000円
この不安を助長するのが、総務省統計局による「家計調査年報(家計収支編)2020年」からわかる、高齢夫婦無職世帯の世帯収支だ。
生命保険文化センターの意識調査でも、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は月額で平均22.1万円となっており、それはギリギリ賄える結果となった。しかし、ゆとりある老後生活を送るのに必要な生活費は36.1万円。年間の不足金額は160万円を超えてしまう。
定年退職がないフリーランスになれば不安は解消できる?
年金だけでは足りない生活費を稼ぐためには働き続けることが必要になるだろう。しかし会社員は定年退職があり、年齢で収入源を絶たれてしまう。そこで、定年退職がないフリーランスになれば不安を解消できるのだろうか。
有名放送局ディレクター、思い切って会社を辞めたらどうなった?
現在チョコレートジャーナリストとして活躍する市川歩美さんは、もともとは放送局のディレクター。小さいころからチョコレートがとにかく好きで、本業の傍らチョコレートを食べまくり、チョコレートのあれこれについてブログで発信し続けていたら、いつのまにかそれがチョコレートジャーナリストという仕事になっていたという稀有な人だ。
そして市川さんにはチョコレートジャーナリストの他に、心理カウンセラーというもう一つの顔がある。
放送局時代は様々な番組を担当していた市川さん。やりがいはあるけれど、どうしても広く浅くが求められるため、「何かに深くじっくり向き合いたい」と思うようになった。心理学に目標を定めて退職を決意したが、辞めた後には思ってもいなかった感情が生まれたという。
給料が1円も振り込まれない!
当たり前だが、会社を辞めるとお給料は振り込まれない。会社員時代は、長年毎月必ず振り込まれていた。しかし、会社を辞めると、何もしなければ1円たりとも振り込まれないし、そのうえ「学ぶため」「生活のため」と、生きているだけでお金が減っていくことに愕然としたのだ。
「放送局時代にしっかり貯金はしていたので安心して辞めたんですが、”減っていく”っていうのはやっぱりメンタルに来るんですよね。増えずに減っていくだけ、っていうのは……。」
「お金をいただけない=私は無価値な人間」、という思いが常に脳裏をよぎっていたという。
会社を辞めたらただの人?
会社員時代は放送局名を名乗ればほとんどの人が歓迎してくれた。しかし、会社を辞めてその肩書がなくなったとたん、みんなが冷たくなった感じがしたそうだ。
「『すごーい、こういうところで働いてるんですか~』『これ、ぜひ試してください』『ご招待させてください』と大歓迎されていたのが突如、『ふーん、それであなた何者だったっけ』みたいに変わるんですよ(笑)」
もちろん変わらず接してくれるもたくさんいたし、肩書がなくなったことで今までと違う人たちとの交流も生まれたが、損得関係で関わっていた人は去って行った。今まで放送局の人間というだけで、いかにちやほやされていたかも分かったそうだ。
不安や恐怖を乗り越えるために大切なこと
会社を辞めると、お金が足りなくなるかもしれないという不安と、肩書を失い、他人からの扱いまでも変わるという恐怖が待っている。
それを乗り越える方法は、ひとつは目的を持つことだと市川さんは言う。目的がしっかり定まっていれば、そこに向かって進んでいける。当時の市川さんの目標は、心理学を学んで仕事にすることだ。
「人の心理や行動に興味を持っていたので、落ち着いて勉強してゆくゆくはそういう仕事をしようと。まずはそこを目標に定めて勉強し、様々な資格も取りました。」
ふたつ目はつなぎの仕事をいとわないこと。心理学を勉強している間、市川さんはこれまでの仕事と全く違う、メイクアップスクールで顔モデルのバイトをしていた。
金銭面での不安は消耗しかない。そんなとき、バイトで得られる収入は市川さんの心を軽くした。「お金をいただけるってありがたいな」と再認識するいい機会でもあったそうだ。
だからこそ、「市川歩美」に対して対価を⽀払って下さった、最初の心理カウンセリングのクライアントさんのことはとてもよく覚えているのだという。
そして3つ目は、好きを続けるということだ。続ければそれだけで価値になることもある。市川さんは子どものころから大のチョコレート好き。ブログという形で長くチョコレートについての発信を続けていたら、価値を見出してくれる方々が現れ、思いがけずチョコレートジャーナリストという仕事が生まれたのだ。
「わたしがカウンセラー・心理学という軸とチョコレートの軸、ふたつの軸を持っていたことは、わたしの場合、メリットしかありませんでした」
好きな事はひとつに絞った方がいいと思っている人も多いが、必ずしもそうではない。ひとつなら集中してスキルを身につけられるメリットもあるし、複数あれば片方がもう片方を補ったり、好きなもの同士が相乗効果を生むこともあるのだ。
自分の好きに得意を掛け合わせれば肩書に頼らない働き方ができる
好きなことを継続して、仕事にする
大好きなチョコレートについてのあれこれをブログで世の中に発信し続け、チョコレートジャーナリストという唯一無二の仕事を作り出した市川さん。こんな風に、趣味として続けていることを仕事にする、なんてことも実現できるかもしれない。
できることを発展させて、増やしていく
また、市川さんはチョコレートジャーナリストの仕事をさらに発展させ、チョコレート関連のインタビューやレシピ監修その他、チョコレートに関する様々な仕事を行っている。できることに何かをプラスできれば、それが新たな仕事になるかもしれない。
新たな価値が生まれれば、新たな収入源になる
今私たちがやっている仕事が、趣味が、続けていることが、見方を変えたり組み合わせたりすることで、新たな収入源になる可能性を秘めている。副業OKの会社もだんだんと増えてきた。不安を少しでも軽くするために、まずは自分ができることの棚卸から始めてみるのはいかがだろうか。
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この記事を書いた人
- 知りたがりのやりたがり。エンジニア→UIデザイナー→整理収納×防災備蓄とライターのダブルワーカー、ダンサー&カーラー。強み:なんでも楽しめるところ、我が道を行くところ。弱み:こう見えて人見知り、そしてちょっと理屈っぽい。座右の銘は『ひとつずつ』。