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白川密成のお悩み駆け込み寺 僕にもわかりません飲食業で働いた経験しかない…あたらしい仕事が出来るの?

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読者から寄せられた働き方や仕事のお悩みに白川先生がお答えする癒しのコーナー
【白川密成のお悩み駆け込み寺― 僕にもわかりません―】

白川密成

プロフィール

四国第57番札所栄福寺住職白川密成

住職。「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。

++ 今回のお悩み ++

飲食業の経験しかなく、未経験の仕事に踏み出すのが不安

32歳 女性 独身 飲食店勤務 接客

私は就活をせず、大学時代にアルバイトしていた居酒屋でそのまま社員として働いています。
しかしコロナ禍で経営が厳しくなり、客足は戻ってきたとはいえ、また感染爆発が起こるとも知れず非常に不安定な状態です。
この機に自分のキャリアを見直し、飲食業でなく先の見通せる安定した仕事に変えたいと思うようになりました。
しかし私はずっと飲食業で主に接客しかしておらず、今さら別の業界で働けるのか非常に不安です。スキルアップや資格取得など自分に武器をつけなければと思う一方、では私の今までは何だったのだろうか、と空しい気持ちにもなります。
つべこべ言わず動かなければと思うので、背中を押す言葉を頂ければと思います。

白川先生からあなたに贈る言葉
「心随万境転」(しんずいばんきょうでん)

就職超氷河期の私の経験

 お悩みを拝読して、私が高野山大学「密教学科」で仏教を学んだものの、一般企業を経験したいと思い、就職活動をしたことを思い出しました。時代は、いわゆる「超氷河期」で、今から考えると信じられないぐらい内定率も低い時代でした。

 不安もありました。経済学や経営などを専門的に学んだ人達と、古の仏教を学んだ私が、横一線になって採用試験や面接を受けるのですから。ずいぶん緊張したことをおぼえています。しかし企業の人事担当の方が、比較的年齢を重ねている方が多かったのもあるのか、想像以上に反応がよかったのです。「へー、高野山で修行されたんですか?」とか「仏教って、結構好きで・・」と、むしろ興味を持ってくださる方が多かったのです。

経験を「新たな業種」でどう活かすかイメージを持つ

その時、私のほうで気をつけたことは、面接等で口にする機会があるかはともかくとして、「自分の経験したことと、これから携わりたい世界との接点」について、考えを巡らせておくということです。「異業種の経験」だけに留まらず、それをもって、これから進みたい世界にどんな良き影響を与えるか、少しでもイメージをしておかれるといいと思います。

 あなたが進みたい新しい業種の人達も、欲しいのは「異業種の経験」だけでなく、「どのようにそれを活かせるのか?」ということです。そしてそのことを考えることは、どのような場所に身を置いたとしても、とても大切な事だと思います。

何度でもチャレンジするつもりで

今の時代、様々な業態が、大小の「変化」なしには続けていけない、と考える企業が多いと思います。その時、なかなか既存のメンバー、同業経験者だけでは出にくいアイデアがあるのではないでしょうか。そういう意味でも、これから異業種への転職は、どんどん増えていくように想像しています。

 しかし、すべての企業やお店がそのような問題意識を持っているわけではありません。私も就職活動でいくつかの「不採用通知」を頂きましたが、あの感覚は独特のもので、結構心にグサリときます。「あなたは必要ありません」というメッセージを今まで、あまりストレートには受けとった経験がなかったのだと思います。昨年は、ある地方で労働局主催の就業セミナーで講師を務めましたが、主に上手くいかなかった時の「心のケア」について話して欲しいというご依頼だったように思います。

 よく思い出すことは、広告の世界で、その後、スーパースターのようになった方が、採用試験に「36回落ちた」という話を雑誌のインタビューで話されていたことです。これは、いかに「人が人を見る時」に「人それぞれ」であるかを考える時に、思い浮かべることです。

もともと何度でもチャレンジするつもりでいたほうが、気が楽な部分があるでしょう。これは仕事でなくてもそう思います。

環境によって、心は変化する

あなたに贈りたい仏教語は、「心随万境転」(しんずいばんきょうでん)です。

これには、人の心が、自分という境界(きょうかい。さかいめのこと)や、取り囲まれた環境の変化によって変わる、という意味の言葉です。

 私自身を振り返っても、高校時代、運動部で活動している時に嫌々書いていた「部誌」という生活日誌を何度も「お前の文章は小学生以下だ!」と怒られました(部活が苦しかったので、字も乱雑で内容もひどかったのでしょう)。

 しかし楽しいことを自然な気持ちで、文章を読むことが好きな先生や、大人になって出版社の人にみてもらった時、ずいぶん喜んでくださることがあって、驚きました。自分が適性のある環境に身を置くことは、とても大事なことだと思います。

 同時に言えることは、もちろんですが、あなたにとって何が適職であり、飲食業を離れた方がいいか、ということは誰にもわからないことです。ご自身でも判断の難しい所ではあると思いますが、今まで書いたことも頭に入れて、じっくり考えて頂きたいと思います。「よく考えたらやっぱり飲食が好きなので、安定感のある仕事を飲食で作り出したい」ということに、あなたの適性があることだって、ありますものね。

<今日のまとめ>

・他分野の経験が、活きる時がある。
・今までの経験を、どのように新しい場所で用いるかイメージを持っておく。
・最初から「何度でもチャレンジする」つもりでいる。
・人は環境によって、驚くほど変わる。

直感・運気アップ

「今までやったことないこと」を3つぐらい考えてやってみましょう。小さなことでも大きなことでもかまいません。

この記事を書いた人

白川密成
白川密成四国第57番札所栄福寺住職
「ほぼ日刊イトイ新聞」に「坊さん。」を連載。その後、著書『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)が映画化。著書多数。他の連載に「密成和尚の読む講話」(ミシマ社「みんなのミシマガジン」)、「そして僕は四国遍路を巡る」(講談社、現代ビジネス)など。執筆や講演会などで仏教界に新風を巻き起こすべく活動中。趣味は書店で本の装幀デザイナーを当てること。1977年生。

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