Interview
インタビュー

ピラティストレーナーが考える「自分らしく働くための自分軸の作り方」

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シンガポールで感じた日本人コミュニティの違和感。お金と欲望が渦巻くシンガポールで見出した、自分らしく働く「自分軸の作り方」を伺いました。

山本ひとみ

プロフィール

ピラティストレーナー山本ひとみ

Selfeeling Pilates 創始者・インストラクター 幼少期からクラシックバレエを経てピラティスに出会い、独自のピラティスメソッドSelfeeling Pilatesを構築。2010年に東京にスタジオSoleilを開業。その後2016年より住まいを東京からシンガポールに移し指導開始、2019年にはシンガポール・オーチャードにスタジオをオープン。「楽で楽しい身体になること」を提唱している。

ピラティストレーナーだからこそ大事にしている「心と体の対話」。ブレない「自分軸」を作るうえで参考になります。いわゆるビリオネア(個人資産10億ドル(1000億円)以上の超富裕層)が集まる超富裕層国家・シンガポールでピラティス教室を運営。ミリオネアは当たり前、お金と欲望が渦巻くシンガポールで見出した自分らしく働く「自分軸の作り方」を伺いました。
全2話、前編はこちらからどうぞ。

思い込みの「自分らしさ」を手放す

シンガポールに来て感じたのは、どんな格好をしてもいいし、どんな色の服を着ても、誰も気に留めていないということ。日本にいるときより、自分らしくいられるということでした。

例えば日本にいるときは、保育園の子のママという役割を担っていました。役割という無意識の枠があって、保育園の送り迎えに行くときには目立ってはいけないというか、こういう格好をしなければ、という思い込みみたいなものがあったんですね。何か社会的に担っていると思われる役割とか、そういうものを無認識に自分に課していたところがあったと思います。

でも、シンガポールに来た当初、火傷をして病院に行ったら、女性の先生がフリフリの格好で診察してくれたんです。その姿を見たときに、「何でもいいんだな」って思ったんですよね。お医者さんって白衣を着ているのが当たり前だと思っていたし、白衣を着ることで信頼を得るものだと思っていたのに、それすらないんだって。

そのときに、私がこうでなければいけないと思っている枠は、自分の思い込みだったり、日本という社会の中だけの話で、シンガポールにはそういった枠がないというところにとても感動したんです。

馴れ合いや安心感より「自分軸」

こちらのコミュニティでも、日本人学校は日本人が多くて安全だと考えて選んでいる方もいれば、日本語ができるからという方もいるし、インターには憧れるけれども不安だからということで選んでいる方もいます。それがベストな選択というよりは、それが無難であるとか、何となく安心というところで選んでいる場合も。

山本ひとみ

結局、日本にいようがシンガポールにいようが、“飛び出さない”ということをとても大事にしているような気がします。新しい刺激に対しても、興味はあるけれど、それを自分で獲得したり、体験するということに対して、自分はどのようなモチベーションであるかということが大きく関わっている気がします。

近所のスーパーは高くて、しかも新鮮なものがなかったので、私はウェットマーケットという生鮮市場のようなところで買い物をしていました。同じマンションの日本人女性にしたら「私は絶対に行かない」と言って、とても驚かれたんです。

「他人の正解」と「自分の正解」は違う

私にしてみたら、安くて新鮮なものが手に入るから、なぜそんな拒否反応をされるのか分からなくて理由を聞いたら、「スーパーなら黙って買えるから」と言われたんです。たしかに市場で買うためには、値段を聞いたり、どれくらいほしいかということを伝えるために、何かしらアクションを起こさなければいけません。コミュニケーションをとって欲しいものを得るか、新鮮ではないけれど無言で買えるものを得るのか。私の概念にはなかったけれど、そういう人もいるんだと分かったことは、目からウロコでした。

その方は、自分がしていることが合ってるか、外れてないかということをとても気にされていました。自分の行動や判断に自信がないんですね。目に見えない社会の常識みたいなものにとらわれていると、自分の感じる力、考える力みたいなものが低下してしまって、誰かに頼ったり、自分は間違っていないかということを、常に人に聞いていないと安心できなくなってしまうのかもしれないと感じました。

間違わない感覚① 「体の反応」に従う

山本ひとみ

ピラティスを通して体を向き合うのですが、私たちの体は、実は頭よりとてもよくできているのです。自分にとって隣にいて心地いい人かどうかというのは、感覚的な問題ですよね。同じように何かを決断するときも、ワクワクしたり、やりたいと思っていることは率先して体が動くし、気持ちが乗らないときは、なかなか体は動きません。きっと、本当は自分がどうしたいのかというのは、体のサインや反応で分かると思うんです。感覚的な喜びとか、細胞が喜んでいるような感覚があるから。でも、頭が優位になって、思考や思惑で決断してしまうと、判断基準が損得や強弱に引っ張られて、心と体が置いていかれてしまいます。
自分の核、コアがしっかりしてないと、誤った方向に行きかけるときがありますよね。損得勘定でこれをすれば社会的な成功が手にできるとか、これをやっておくとこの後仕事が来るかもしれないとか。
でも、気持ちが乗らないものはやらない方がいいと思うんです。素の自分が欲する本当の望みや楽しみ、幸せを無視すると、表面的には成功するようなことをしていても、軌道修正するのが難しくなる気がするから。

間違わない感覚② 「素の自分」を認める

私の教室ではセルフとフィーリングをくっつけて、“セルフィーリングピラティス”、「自分自身の内側が外側に表れる」というメソッドを取り入れています。外側の見栄えではなく、自分の内面が溢れ出るからこそ、自分の内面を掘り下げるしかないという考え方。

インストラクター養成コースで感じるのは、自分の中で“いいインストラクター像”ができあがっている人がいるんです。でも、理想像と素の姿がかけ離れている場合、その人らしさが発揮されないので生徒さんに違和感として映り気を使わせてしまうことになります。せっかく培ってきた技術がムダになってしまう。逆効果なんですね。

理想を追わなくても、本来の姿をさらけ出して、ありのままの気持ちでレッスンをすることが、生徒さんにとって最大のギフトになる。インストラクターが素を出すことによって生徒さんの気持ちがほぐれて、安心してレッスンに集中できるようになって、よりいい雰囲気になると思うんです。

だから、自分の素の部分を出しても大丈夫だと自分自身で思えたとき、いろんなことが成功に向かっていくんじゃないかと思います。飾ることなく、内面の自分がそのまま外側に出ても、自信をもっていられるということが、ものごとを好転させるきっかけになるのではないかと。

間違わない感覚③ 頑張るより「リラックス」

山本ひとみ

今までピラティスを通じていろんな方の体を見てきましたが、自分らしく生きている人は、緊張しすぎていない、張り詰めていないように感じます。外側の見栄えを気にして、自分の体の感覚をごまかしている人は、常に張り詰めているから、すごく緊張状態にあるんだと思います。テンションがありすぎると、感じることがすごく難しくなるんですね。余計なことで気を使いすぎて感覚機能がおろそかになるから、感じられる部分がすごく小さくなってしまうんだと思います。

緊張は体だけでなく、表情にも出ます。緊張していない人は、顔の表情も柔らかいから、自然な笑顔が出て、幸せそうに見えます。張り詰めて、いつも作り笑いをしている人は、表情もこわばるし、常に頭を使っているからおでこの緊張も見て取れるので、一見して「無理しているんだな」と分かります。

自分でも「緊張してるな」と思うときってありますよね。そういうときは、脱力より緩む感覚を取り入れてみてください。温泉に入ったときにホッとする感覚。そんな感じでホッとする感覚を、生活に取り入れてほしいと思います。

本当にありのままが一番です。取り繕ったところで、大して幸せにはならないから。その人となりって、けっこう外見にもれ出てしまうから、そうであればもう最初からありのままの自分(そのままでいた)でいた方が、自分だけでなく相手のため、周囲の人のためにもなると思います。相手もありのままでいていいのだと感じて本当のコミュニケーションがスタートできると思います。

全2話、前編はこちらからどうぞ。

取材/I am 編集部
写真/本人提供
文/岡田マキ

この記事を書いた人

岡田 マキ
岡田 マキライティング
ノリで音大を受験、進学して以来、「迷ったら面白い方へ」をモットーに、専門性を持たない行き当たりばったりのライターとして活動。強み:人の行動や言動の分析と対応。とくに世間から奇人と呼ばれる人が好物。弱み:気が乗らないと動けない、動かない。

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