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インタビュー

「好きな事を仕事に」の落とし穴に落ちないために知っておくべき自分の本音とは?

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仕事に悩んでいます。そもそも『「好きな事を仕事」にしたいのか、「転職」をしたいのか?』からモヤモヤしてきました。そんな「働く本音」の向き合い方を日本初・唯一の「退職学®︎(resignology)」の研究家の佐野創太さんに伺いました。

佐野創太

プロフィール

退職学®︎研究家佐野創太

日本初かつ唯一の「退職学®︎(resignology)」、「リザイン・マネジメント(Resign・Manegement)」の研究家。パワーワード編集者。慶應義塾大学卒業後、大手転職支援会社に入社。転職エージェントとしてベンチャー企業から大手企業の転職支援を行うが退職。その後数社を転職し2017年、「退職学®︎(resignology)」の研究家として独立。著書に『「会社辞めたい」ループから抜け出そう!転職後も武器になる思考法』(サンマーク出版)がある。

そもそも「好きな事を仕事」にしたいのか、「転職」をしたいのか?からモヤモヤしてきました。私はどっちなんでしょう?

そんな「働く本音」の向き合い方を佐野創太さに伺いました。佐野さんは日本初・唯一の「退職学®︎(resignology)」の研究家として、1000名以上の「会社辞めようかな」のモヤモヤ段階から働き方の相談に乗っています。企業には退職者「も」ファンにしてピンチに強い組織をつくる「リザイン・マネジメント(Resign Management)」を50社以上に提供していることから、あらゆる年代、職業の悩みを一緒に考えてきた佐野さんに、このモヤモヤをぶつけてみました!

モヤモヤは「本音を見つける鍵」になる

佐野創太
イラスト/shutterstock

モヤモヤする読者が多いのですが、I am としては自立や独立の応援をするメディアですが、退職を進めていいのかどうか、微妙なラインなんです。

副業してもいいし、転職してもいい。今の会社に残ってもいいし、独立してもいい。「なんでもあなたの自由です」と言われると、どうしたいかわからなくなっちゃいますよね。どちらのノウハウも手に入れやすいですし。

会社を辞めるかどうか迷う人は、増えているのですか?

増えています。5月の連休や夏休み、冬休みといった長期休暇の前後で副業サイトや転職サイトに登録する人も増えます。

連休明けは会社に行きたくなくなりますよね(笑)。ところで「好きな事を仕事」にしたいのか、「転職」をしたいのか、どうしたらいいですか?

その悩みが発生する原因から考えると、「今の働き方に何らかのモヤモヤやイライラがあるから」ですよね。スタートは「今のネガティブな感情の原因を特定する」です。

佐野創太
イラスト/shutterstock

ほほう。ネガティブな感情の原因……

「仕事に飽きてきたな」「会社の方向性とずれてきた気がする」はネガティブな感情として、目を逸らしたくなることもあります。でも、ネガティブな感情は本音の疼きなんです。否定するものではなく、いわば「自分がどうしたいかを教えてくれるちょっと厳しめの先生」です。

ネガティブな感情は「本音の疼き」! 名言ですね。

好きなことより嫌いなことの方がはっきりしている人は多いです。「食べたいものある?」と聞かれて浮かばなくても、「食べたくないものは?」と聞かれたら「エビはアレルギーがあって」と答えやすいです。それと同じで、ネガティブな感情から本音を見つけやすいです。

恋愛も一緒ですね。好きに理由はないけど、嫌いには理由が山ほどある。「ネガティブな感情から本音を知る」にはどうすればいいのでしょうか?

「本音磨き」の2種類の方法をおすすめします。一つ目がネガティブな感情や出来事を書き出して本音を把握する「退職成仏ノート」。

退職成仏ノートですか!

佐野創太
イラスト/shutterstock

二つ目が職場の人間関係を「つながり」「しがらみ」「無関心」にわけて本音を「整理」する「人間関係の仕分けノート」です。いわば心のゴミ箱を作るイメージです。誰に見せるわけでも、評価を受けるものでもありません。

自分の中のネガティブを吐き出すんですね?

中には「会社のロゴが好きになれなくて、自分の会社なのに社名を友人に言いたくない」と書き出す人や、「朝から不機嫌に見える同僚はしがらみだ」と仕分けする人もいます。人から見たら小さな出来事でも書いてOKです。

会社のロゴが嫌だとかでもいいんですね!

「こんなことを書いている自分はダメだ」と自責しないことがポイントです。一旦ネガティブや他責に振り切ると、ポジティブや自責に無理なく戻ってこれます。そのときに「ちょうどいい本音」に気づけます。

確かに「人間関係に大きな不満はなくて、本当はもっと好きな事を仕事にしたい」ということもありますよね。

そうです。感情はグラデーションになっていますよね。イエスかノーか、白か黒かと割り切れるものではありません。その「割り切れない感情」が本音でもあります。「人間関係に大きな不満はなくて、本当はもっと好きな事を仕事にしたい」なら副業がおすすめですし、「職場環境を変えてまで人間関係をリセットしたい」のであれば転職が手段です。

副業か転職かは自分の中にしかないんですね。

もしくは「自分で環境を作りたい」と思ったら起業して組織を0から作ることになるかもしれません。それぞれのゴールにそれぞれの道のりで向かうのです。

副業サイトを見るより「社内創業」

佐野創太
イラスト/shutterstock

佐野さんの方法は「本音を考えてから、動き出したい人」に向いてそうですね。

そうですね。辞める前に自分の本音を知るのは有効だと思います。

でも「動きながら考えたい人」もいると思うんです。

なるほど。「やってみて初めてわかった」ことがあるように、仕事の中で本音に気づくこともありますから。
 
まず「好きな事を仕事にする働き方を目指したいのか?」を明らかにする方法は、「社内創業」です。自分で仕事を作って、実際に仕事をしてみることです。
 
具体的には「今の仕事のある部分だけに特化した仕事ができないか」と分解したり、「他部署のあの人の仕事をやってみることはできないか」と観察したりすることが第一歩です。

てっきり「副業サイトで仕事を探す」のかと思いました。

もちろんそれも有効です。最近は「地方複業」というキーワードも出てきて、地元企業の仕事を副業にする人もいます。一方で、副業をしようとして挫折する人もいます。時間が捻出できないからです。週5日で働いていると、平日の夜や土日を使うしかないんですよね。「平日は残業で、土日はプライベートで」と考えると、副業に使う時間はほとんど残されていないことに気がつきます。

確かに副業サイトを覗いてみると「週2日から」といった案件も多くて、面白そうだけど休みがなくなりますよね。

企業としては副業社員も正社員も、成果を求める気持ちは同じなので、それなりの時間を求めるのは自然です。今のスケジュールを崩さずに始められる「社内創業」の考え方はおすすめです。

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でも「社内創業」って、何をするんですか?

営業職の人が自社のWebメディアでコラムを書くようになったり、経理担当の人が営業同行を始めるケースがありました。前者の人は「営業で得た一次情報を発信する仕事がしたいんだ」と気づいて、月に3本程度のインタビュー記事を副業で書くようになっています。後者の人は「外の人と関わる仕事がしたくて転職を考えていたけど、実際にやってみたら社内の人に貢献する方が楽しいとわかった」ということで、転職は辞めました。

まったく別のことをするのではなく、今の仕事の延長戦に興味のある「小さな仕事を創ってみる」でいいんですね。

まさにその「仕事を創る意識」が大切なので、「社内創業」という名前をつけています。「社内創業」をすると「仕事は会社や上司からもらうもの」から、「仕事は自分が創るもの」と考えるようになります。後者の方が目的も自分でわかっているから楽しめます。仕事観の変換は大きな自信になり、「好きなことを仕事にしたいけど自信がない」「転職を考えているけど一歩踏み出せない」が解消されます。

会社員にしたら、ハードル低いですね。

ちなみに新規事業はあらゆる仕事を経験できて、得意不得意がわかるのでおすすめです。複数の仕事を同時にインターンシップするようなものです。私も経験があり、自分の適性がよくわかりました。社内でチャンスがあれば、手を挙げてみるのもありです。

一番いい時に辞める「ピークアウト退職」

佐野創太
イラスト/shutterstock

「転職したいのかどうか」を知るいい方法はありますか? 本音が転職希望だったとしても、すぐに取り組めない人もいますよね。

そうなんです。副業と同じように転職サイトや転職エージェントを使うことも一つの手ですが、時間はかかります。そんな人は「ピークアウト退職」の擬似体験がおすすめです。

「ピークアウト退職」ってなんですか?

ピークアウトは「今の会社で最も高い成績を上げられている時」ですね。「ピークアウトで転職することを目標にして、実際に退職活動をする」と「自分は本音で転職がしたいのか?」がわかります。実際に退職活動はしますが、会社を辞める必要はありません。

どんな状態がピークアウトなんでしょうか?

職種によって大きく異なりますが、3つあります。一つ目のピークは「最高の数字の獲得」です。営業や販売、Webマーケティングの仕事などの成果が数字に反映されやすい仕事をしている方には馴染みやすいでしょう。「前年比150%達成」や「6ヶ月連続達成」といったように、これまでで一番良い成績を達成した時です。

数字は明確だから、ピークかどうか周囲にも伝わりますね。

「次の仕事に挑戦したいんです」の言葉にも説得力が増しますね。二つ目のピークは、「プロジェクトの最高の終わり」です。
 
例えばエンジニアやデザイナー、編集やライターの方は、「あと3ヶ月で1年半続いたプロジェクトが終わるから、最高の作品を作り上げよう」と考えて、ピークを作る人がいます。締め切りが定まると集中力が増す「デッドライン効果」が発揮できて、仕事に身が入るようにもなります。

締め切りですね。私たちは毎日がデッドラインです! 

夏休みの宿題を夏休みの最終日にがっと終わらせてきた人ならわかりやすいです。締め切りが近づいてきて湧き出るエネルギーを体感したことがあるはずです(笑)。

わかります! テスト前はよく徹夜していました(笑)。数字で表せなくてもピークは作れるんですね。

佐野創太
イラスト/shutterstock

仕事には明確に数字で証明するのに一工夫する必要があるけれど、大切な仕事がたくさんありますからね。
 
三つ目のピークはいわゆる管理部門やバックオフィスで働いてる人のものです。人事や経理、情報システム部門や法務部の人のピークの作り方です。
 
それが「仕組み作り」です。言い換えると「自分がいなくなっても私の仕事は、私のチームは業務が滞りなく進む」状態を作ることです。自分の仕事を未経験の後輩に引き継ぐつもりで棚卸しし、指導する。ツールやシステムを導入して自分の仕事そのものをなくしたタイミングで、転職を決意した法務の人もいました。
 
会社としては「その人にしかできない仕事」は作りたくないので、仕組み化や自動化といった資産になる仕事は大歓迎します。

ピークは自分で作れちゃうんですね。会社が決めた「目標達成」がピークだと思っていました。

会社から渡された目標で頑張る気持ちが湧かない人の中には、自分で目標を作る人がいますね。営業の人で「3ヶ月で達成する目標を1ヶ月で達成する」と決めた人がいます。これまでの「量を増やす頑張り」から「やり方そのものを変える工夫」をするようになって、仕事が楽しくなったそうです。その人は「会社辞めるのを辞めました」と話していました。

別に転職するばかりが人生を変える手段ではないんですね。

そうですね。「好きな事を仕事」にしたいのか「転職」したいのか迷って動けない時は、まず気づいているモヤモヤの理由を「退職成仏ノート」と「人間関係の仕分けノート」で明らかにする。同時に「社内創業」か「ピークアウト転職」で、自分はどの道を選びたいのかを知る。「自分はどうしたいんだろう?」とループして動けなくなることを防げます。

考えているようで動けなくなって、悩んでいただけだったなんてこともありますよね。

私たちは「会社に頼るな」「市場価値を上げろ」「キャリアアップしろ」という意見に説得力を感じやすい環境にいます。「終身雇用は現実的じゃない」と言われますしね。自分に大きな変化を起こさないと「私は何もしてないんじゃないか」と焦って本音を見失う人もいます。
 
でも、表に出てこないだけで「本音磨き」、「社内創業」や「ピークアウト退職」をしながら1社に長く勤めて、好きな仕事を続けている人もいます。副業と本業のベストバランスを見つける人もいます。「私だけのベストバランス」を生きられるよう、応援しています。

取材/I am 編集部

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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