得意を仕事好きな仕事で「もっとこうすればお客様に喜んでいただける」「身近な人を笑顔にできる」と思うことを次々と実現（教育×IT×クリエイティブ起業家／畠中裕介さん）

私は、動画・Web制作会社「株式会社エアグラウンド」の社長を務めています。近年、キャリア教育とプログラミング教育を組み合わせた新たな事業を立ち上げ、産学官連携を通じてさまざまな人々をつなげています。具体的には、

IT事業として
①動画
産）企業の採用促進動画制作、SNSショート動画制作
学）高校から委託を受けて高校生と一緒に動画制作
官）尼崎市のPR動画制作、定住促進サイトAMANISM内の動画制作

②Webコンテンツ制作
産）企業の公式ホームページ、採用サイトの制作
官）尼崎市の定住促進サイトAMANISMのサイト制作、保守など

教育事業として
①インターンシップコーディネート「ワカモノート」。尼崎市から委託を受けて、インターンシップのコーディネートや企業の高校出張講座を実施
②産業用ロボットオペレーター育成「ロボメイツ」
③ロボットSTEAMスクール「ロボキャン」

一番力を入れているのは、学生とつくるSNSショート動画の提案です。園田女子大学、関西学院大学、産業技術短期大学のアルバイト学生が企画のアイデア出しをしています。

学生と一緒につくる動画・Web制作会社として、日本のトップランナーの制作会社を目指しています。

27歳で個人事業主として起業しました。大好きな動画制作を仕事にして17年目になります。

高校生の頃は、将来は絵描きになりたかったのですが、絵を描くときに物語をつくっていることに気がつきました。そこから、進路を変えて映像の専門学校に入学しました。

映像を選んだのは、映像を見て感動し、涙が流れることがあったからです。物語に引き込まれ、見終わった後の余韻が好きだと気づきました。「なぜこのようなエンディングになったのか」と自分なりに考えたり、時にはショックでトラウマになりそうなほど心を揺さぶられたりしました。そうした心の動きに強く惹かれたのです。

今は動画編集以外の事業にも取り組んでいますが、プロセスを重視するところや洞察力など動画編集で培った経験が今の仕事につながっています。たとえば、物事のつじつまが合わなくなると、プロジェクトもうまくいかなくなってしまいます。また、インタビュー動画制作の経験から、人の話し方や表情から「嘘をついているのか」「商品を売りたいのか」「焦っているのか」といった感情を読み取る力も身についていました。その能力は、たくさんの人たちが関わるプロジェクトでは欠かせません。

今の仕事はもともと「好き」でした。自宅の一室を改造して動画編集の部屋にしていました。

起業して2か月目ぐらいに、レギュラーの仕事を初めて獲得したときにやっていけると思いました。営業の方法がわからなかったので、自分で仕事をとったときは嬉しかったです。

動画を撮影・編集できる機材を購入しました。お金がなかったのでローンを組みました。なので、まずはお金を借りるという行動をしました。

強みは、やりたい事業を見つけたら継続できることと、幅広い年代とコミュニケーションをとり、プロジェクトを進める力です。弱みは、バックオフィス業務が苦手なところです。

活かせています。

①やりたい事業を見つけたら継続できる力
昔から、何かを始めたら、満足するまで続けることができました。学生時代には歴史シミュレーションゲームに夢中になり、体調を崩すほど徹夜で続けていたこともあります。この「継続できる忍耐力」のおかげで、すぐには結果が出ない教育事業を立ち上げた際も、諦めずに続けた結果、少しずつ売上が伸びていき、今では事業の柱の一つに成長しました。

②幅広い年代とコミュニケーションをとり、プロジェクトを進める力
「年齢が違うと話が合わず、コミュニケーションが難しい」と聞きますが、私は幼い子どもからご年配の方まで、幅広い年代の人と自然に話すことができます。この強みは、子どもの少ない島で育ち、自然と大人と接する機会が多かった環境によって培われました。このスキルを活かし、プロジェクトでは若手のクライアント担当者ともスムーズに進め、同時に多くの経営者の年齢層である60代の方とも決裁の場で対話を重ね、若手から経営層まで巻き込んでプロジェクトを進めることができます。

バックオフィス業務を業務代行サービスを利用して、日々の繰り返しの業務を外注しています。たとえば、会計処理業務は外部に委託しており、領収書の内容を確認し、勘定科目ごとに仕分けを行っています。また、労務についても一部外注しており、給与計算などの業務の二重チェックなどを依頼しています。

障壁は「営業」でした。動画制作に関しては自信があったのですが、だれにも「営業」のやりかたを教わったことがなかったので、どうやったらいいかがぜんぜんわかりませんでした。書籍を何百冊と購入して、自分なりにカスタムして独自の営業スタイルをつくりました。

独立する前に会社に勤めたことがあります。その期間にクレジットカードを3枚ほどつくりました。独立したら信用がないので、カードをつくることができないと聞いていたので、就職したらすぐにカードをつくりました。

初めに自宅で個人事業主として創業したのですが、プライベートと仕事モードを切り替えるのが大変でした。妻の誕生日に仕事に追われて外食できなかったことがつらかったです。自宅の近くに安い事務所を借りたことで、仕事の依頼も増えたので、せのびしてでも作業場が広い方がいいことを学びました。

今の仕事はチームで運営しています。スタッフもアルバイトを入れると10人程度います。大学生アルバイトを積極的に雇用しており、若い感性でSNS動画を制作しています。現役でSNSを活用している大学生の方が効果的なアイデアを出してくれるためです。

人とのつながりや社会への貢献を優先しています。たとえ報酬が高くても、内容に共感できない仕事は選ばないようにしています。心から楽しめる、笑顔になれる仕事を選んでいます。

法人化しました。これは、プロジェクトの規模が大きくなったためです。個人事業主の場合、ビジネスでの借金に対して個人の財産まで責任を持つ必要があります。このリスクを避けるために、法人として運営することにしました。

会社を辞めて独立しました。結婚を機に、勤めていた動画制作会社を辞めることにしました。その会社では多くの支援を受けましたが、将来に対する不安から独立を選びました。

以前勤めていた動画制作会社で知り合ったディレクターから仕事を紹介されました。そのディレクターも同じ時期に別の会社で働いていましたが、私のスキルを評価してくれて、仕事を依頼してくれました。特に、コミュニケーション能力の高さが評価されました。技術よりも、お客様と楽しく会話ができて、しっかりと成果が出せるかを見られた気がします。

毎月もらっていた給料と同じくらいの金額を受け取ることができ、感動しました。自分の技術が認められた瞬間でした。金額は35万円ほどだったと思います。

過去に勤めていた制作会社の料金基準を参考にしました。価格設定には非常に悩みました。安くしすぎて、後で後悔したこともあります。

軌道に乗るまでに6か月ほどかかったと思います。当時はやれることをすべてやっていたので、詳細な記憶はあまりありません。とにかく出費を抑え、収入が安定するまでは必要な機材を中古で購入したり、ローンを組んでそろえていきました。