人と同じことをしてたら一流にはなれない。ビジネス書を知り尽くした書評家に学ぶ良書の選び方
書評家・土井英司さんに、ビジネス書の良書を選ぶコツを教えていただきました。
プロフィール
ブックコンサルタント土井英司
日々、ビジネス書の新刊が世に出ますが、どのような基準で自分が読むべき1冊を選ぶべきでしょうか。メールマガジン『ビジネスブックマラソン』編集長の土井英司さんに、アドバイスをいただきました。3万冊のビジネス書を読み、『人生で読んでおいた方がいいビジネス書75冊』を上梓したばかりの土井氏によるビジネス書考察です。
目次
ビジネス書にも「流行りすたり」がある
一口に「ビジネス書」といっても様々で、ここ20年を切り取っただけでもトレンドの変遷があります。
例えば21世紀初頭は、「勝ち組・負け組」という言葉が流行し、「勝ち組に入れば大丈夫」「要領よくやれば稼げる」という風潮がありました。それを反映して、当時刊行された『チーズはどこへ消えた?』(スペンサー・ジョンソン/扶桑社)や『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ/筑摩書房)といった系統の本が爆発的に売れました。
ですが、2008年のリーマン・ショックなどで、「勝ち組を目指す拡大志向ってどうなの?」と反省が促され、人間としての生き方に焦点が当たります。その頃にヒットした本は、『人生がときめく片づけの魔法』(近藤麻理恵/河出書房新社)や『心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習慣』(長谷部誠/幻冬舎)。人として正しくあることを考えさせるのが、トレンドになりました。
今は、コロナ禍を経て、AIの台頭があって、気候変動や少子化の問題が浮き彫りになって……と課題が山積するなか、多くの人が基礎から学ぶ必要性を痛感するようになっていますね。『本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長/朝日新聞出版)といった、網羅的に学習できる本が売れています。
今「絶対読むべき」ビジネス書2選
ところで、最近出たビジネス書でおすすめは、『日本製鉄の転生 巨艦はいかに甦ったか』(上坂欣史/日経BP)と『「働き手不足1100万人」の衝撃』(古屋星斗&リクルートワークス研究所/プレジデント社)の2冊です。
前者は、経営の本質をきちんと押さえて参考になるだけでなく、物語としての読みごたえも十分。後者は、個人がこの後どういった働き方したらいいのか、日本経済のどこにチャンスがあってどこが問題なのかが見えてくる意味で貴重な1冊です。
この2冊のように、ビジネスパーソンとしてダイレクトに将来の役に立つものは、本当におすすめです。こうした有用な本が、2000円でお釣りがくる価格で販売されていることに感謝すべきでしょう。
ビジネス書の良書には「共通点」がある
多くのビジネス書があるなかで、私は選択の基準として「11の読書戦略」を唱えています。
その一番目は、創業者が書いた本を選ぶことです。ビジネスは、人と同じことをしていたら駄目なのです。ほかにはないすごい結果を出している創業者の本は、読んでおかなくてはいけません。
さらに、著者が「一流の変態」であれば、なおいいです。ここで言う「変態」とは、損得抜きで、自分がやりたいことを達成する人。「好き嫌い」で経営している人が一番強いのですね。
くわえて、冒頭数ページで線を引きたくなる本は、購入して間違いはありません。あなたに役に立つ本は、出だしから役に立つものです。著者が真理をつかんでいたら、冒頭から興味を引かれる話が絶対出てくるからです。
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この記事を書いた人
- 都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。